私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

137、魔石便。

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あまりのショックに片腕を目の上に置き、くったりしている私の隣で、あわあわとしながらカイルザークが励まそうとしているのが、腕の隙間から見えた。
無駄に仕草が可愛い。


「……も、もう1人、獣人の子がいるんでしょう?その子にやってあげればいいんじゃないの…かな?」

「そうかっ!そうだねっ」


エルネストに希望を託して復活!

でも、触られるの嫌がってたもんなぁ……梳かせてくれるかな?
……次の季節からは、二人分だし、いいか!
にこにこしながらお着替えセットの袋へと、スリッカーをしまい直して、ソファーに戻ると、サンドイッチに手を伸ばしつつ、テーブルの隙間から、魔石便の手続きを始める。


「うわぁ…エル……がんばれ」


ルークの呆れ果てた、それはそれは深いためと、息ユージアの哀れみと同情の混在するような声が聞こえたけど気にしない。
本当に幸せな感触なんだからねっ!


「うん、片道だけだけど、魔石便使えそう。あとは……受取人と場所の指定なんだけど……」

「それなら、私の屋敷で。受け取りは風の乙女シルヴェストルに指定できるか?」


屋敷……そういえば、魔術師団所属で王都にいるんだから、自宅があるよね。
所在地も座標も知らないけど。
そもそも、自分の自宅すら知らないしね!

って…そういえば私ってば、王都の自宅から拐われた後、帰ってないんだよね。
ルークの屋敷も気になったけど、そもそも私の自宅はどこなんだ?


「えっと…他の人に受け取られてしまうと困るから……そうね。ルークの屋敷の正確な座標が欲しいね」


荷物がいきなり、ぽーんと飛んでくるわけだから、未確認飛行物体どころの話ではないんだよね。
この魔石便自体がすでに廃れてしまった技術っぽいし。


(便利なのにもったいないよねぇ。発送の本体を持ち出せたら…と思ったけど無理だよなぁ。装置って、ほぼ小屋サイズだし)


まぁ技術の提供自体…というか発送するための機械が魔導学園ここにしか置けなかったんだからしょうがないんだけどさ。
もっと小型化、そして簡素化できたなら、絶対にはやると思うんだけどねぇ。


「……辺境伯邸は…セシリアのタウンハウスと近いんだよ。多分、ここら辺」


うーん、とテーブルに浮かび上がった地図をメアリローサ国部分の拡大版へと移動して、と睨めっこしていると、ユージアが指を指して教えてくれたので、その部分を、つつつ。と叩くように触るとさらに拡大される。


「これっていつも思うんだけど、どういう技術なんだろうね?今の景色だもんね。これ」

「まぁな、確かにこの学園があった時代のその場所には、屋敷はなかったな」


スマホとかパッドでマップを見てる感じなんだよねぇ。
使用感なんてまさに……というかほとんどかわらないし。


(あぁ、本当にこの応接のテーブルをお持ち帰りしたいっ!)


そう思いつつ、拡大した先には明るめのレンガに紺の屋根の、ザ、お屋敷!といった感じの素敵な建物が見えた。
使用人がいるにしても一人暮らしだと思われる、ルークのお屋敷は……汚部屋の拡大版かと思ってたけど、意外に可愛らしい外構を備えた素敵な建物だった。

その景色を確認すると、ルークは肯定するように軽く頷くと、ユージアを見つつ話を続ける。


「お前の自宅だろう、なんだその呼び方は……そこは屋敷の真上だな。裏にある敷地内の森に指定を頼む」

「僕の自宅はセシリアと一緒だもんっ!」

「はいはい~、そこ、親子喧嘩はいいから。裏の森だね…これで設定完了したからいつでも送れるよ。食べ終わったら荷物を小分けにまとめちゃってね」

「ありがとう」


ふう。と一息ついて、サンドイッチと、少し冷め始めたコーンポタージュに手を出す。
肉類のサンドイッチに、甘いコーンポタージュが美味しいのですよ!
……やたらとお腹に溜まって、というか軽食のはずが無駄に重くなる。

ちなみにユージアのすごい勢いでサンドイッチを頬張っているので、私とサンドイッチの取り合い状態になっているわけなのだけど……ルークはすでに食事終了したようで、紅茶が準備されていた。
カイルザークはポトフをメインに大盛りのサラダとさらだとサラダと……ひたすら野菜メインの食事だった。


(菜食主義ってほどでもないんだけど、肉よりは野菜を好むんだよね、相変わらずだなぁ)


甘いのも好きだけど、酸味が強いのも好きで、ケーキはホールをぺろりと食べたりするくせに、ステーキだと200グラム超えると残す。
めちゃくちゃ食が細く見えるほどに、肉と脂っこいものが苦手な子だったのよね。

そう思いつつ、カイルザークの食事を眺めていると、ふと、目があう。
すると少し寂しそうな顔になって、ぽつりと呟いた。


「ルークもセシリアも貴族なんだね」

「そうだねぇ、セシリアは公爵令嬢って事になるね……しかも、実は今、向こうではセシリアがいなくなって大騒ぎになってたりする」

「えぇ……何やってるの…?」


あはは…と笑いつつユージアがカイルザークに教えるように話すと、驚くを通り越して、呆れ顔になってしまった。
まぁ、ユージアなんて私を拐った張本人だし?って、そんなこと話したら、ややこしくなるか。
無事に帰ってから、ゆっくりお話できるといいなぁ。


「そっか……僕はどうしようかな……」


ぽつりと聞こえた寂しそうなカイルザークの声に『もちろん一緒に帰るんだよ?』と言おうとしたところで、ルークがソファーから立ち上がるのが見えたので、急いでスープを飲み干す。
案の定だけど、出発の時間が迫ってるようだった。


「そろそろ出発するが……カイ、武器になるものは?」

「僕は杖とレイピアなんだけど……この身体だと、どっちも重いんだよね…っと」


ソファーから立ち上がり、手を差し出すとレイピアが姿を現す……が、大きさがやばい。

カイルザークの今の身長が90センチくらいなんだけど、レイピアって男の人が持つとかなり華奢に見えるのに、っていうかカイルザークが使ってた時もそうやって見えてたのに、今は刀身が既にカイルザークより、頭ひとつ分くらい余裕で大きい。

もちろんだけど支えきれずに、床に刺さる…と思った瞬間に姿を消す。
次の瞬間には杖が、同じように手に姿を現したのだけど、またもや同じような結果になりカイルザークはたたらを踏みつつ杖も消す。


「厳しそうだな」

「あとは隠しで使ってる短剣だけど……ほとんど戦力にはならないと思う。って、そんなにやばい所に行くの?」


困った、という顔をしながら、反対の手に短剣が姿を現す。
それもずっしりと重いようで、片手では支えられずに、ふらつきながら持ち上げている状態。
短剣、なのに今のカイルザークが持つと、長剣に見えるもんね。


「あ、ダメだ。振り回すのも出来なさそう」


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