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はじまりはじまり。小さな冒険?
138、暴露。
しおりを挟むそうそう、レイピア使う人ってさ、実戦では二刀流のように戦う人が多いんだよね。
マン・ゴーシュっていうのらしいんだけど。
レイピアで剣を絡めとったり折り取ったり、器用な動きが多い分、受け流すにはとても細くて華奢な刃では、耐えられないからね。
(片方の手を添えて支えようにも、細い上に両刃だから、自分の手の方が危険になると思わない?)
そこで、もう片方の手で短剣を使って受け流すんだよ。
そもそもレイピアって、『切る』んじゃなくて『刺す』のが得意な武器だしね。
そうだなぁ、戦い方としては前世で見たフェンシングに似てると思う。
あれって片手は使わないようにして戦ってるでしょう?
あの空いた片手に、実戦では短剣を持つんだって。
(まぁ魔物とかを相手にして、命がかかってる状況で、片手のみでの攻撃にこだわる必要はないもんね)
しかし、カイルザークがレイピアを使えないのは残念だな。
普通の長剣より装飾が多くて、見栄えもするから、戦闘スタイルも格好良いんだよね。
学生時代に同じくレイピアを使っていたルークの戦闘スタイルに少し似ているんだけど、カイルザークの場合は大きな跳躍やステップ少なめの、王道というかなんだろう、相手の行動パターンを完全に読み切ったように、全てを避けずに往なして迷いなく突き進む感じ?
ルークはむしろ相手の大きな動きの隙をつくような、そう動くように誘導していく戦闘スタイルだった。
どっちも格好良かったけどね。
(まぁ……自分の身長より大きな武器じゃどうしようもないよなぁ)
当時の光景を想い出して、思わずにやにやしながらルークの荷物の発送作業を進める。
……ついでだし、一緒に私の持ってきた衣類も送ってもらうことにした。
もちろん、ここに来たときに速攻着替えてしまった、ドロッセル姉様からのドレスも入れたからね?
いやぁ、それにしても魔導学園時代のルークもだけどカイルザークも格好良かったんだよね。
相手を往なすたびに起きる風圧で、ふわりふわりと舞う銀髪がキラキラと光を孕んで。
それを褒めるとカイルザークはすごくいやがってたけど。
でも、大体……そういう時には、しまい忘れたしっぽが喜び表現をしてたわけだけど。
……これはコンプレックスから来るものなのかもしれないけどね。
当時から獣人に至っては、魔力持ち自体が珍しかったんだけど、その学生たちの誰よりも華奢な体格で、獣人が基本的に使う力任せの戦闘スタイルは難しかった。
だからこそのレイピアなんだけどね。
「カイの荷物も、魔石便で送れそうなものがあれば、こっちにちょうだい」
「ん~ちょっと詰め直してくる……自分で持てそうなくらいに減らすから、良いよ」
「寮まで遠いし、ゲストルームに置いちゃって良いよ?……ちゃんと箱に名前書いておいくれたら勝手に開封しないはず!」
「……セシリアがしなくても、その時の同行者が開封しちゃうだろうから、遠慮しとくよ」
そう言われて思わず、ルークに視線をやってしまった私は悪くないと思う。
当のルークは目が合ったことに気づくと、にやりと意地の悪い笑みを浮かべ…堪えきれなかったのか、ふっと鼻で笑うような…鼻で……。
勝手に覗いておいて酷くない?!
しかも私が寝てる間に!
「……って見られちゃったのね?」
「むしろ家探しされたような」
私の返事に、袋の中の荷物を入れ替えていた手すら止めて、ぎょっとした顔のカイルザーク。
あ、急いでるとこごめんね……。
「家探しって……女性の部屋…だよ?」
「一応、な……」
……カイルザークが良識のある子でよかった。
そうだよね、普通は咎められるよね。
ていうか、私も咎めてよかったんだよね!?
と、思ったけどルークはさらに酷かった。
「ルーク…一応って酷くない?!」
「命知らずだよね……この変態親父」
「ユージアもっ!それ、フォローになってないからね?!」
そういえば!と、はっと思い出して、ダッシュで私室に飛び込むとクローゼットを開ける。
荷物(主に衣類)が雪崩れてくるかと思いきや、私のクローゼットではあり得ないほどに隙間なく綺麗に、ぴしっと、とにかく綺麗に畳まれて収納されている。
き…綺麗すぎ……。
ぎゃああああああああっ!
これは……ちょっと見られたとかいうレベルじゃ無いじゃないか……。
文字通り、隅から隅まで見られてる。
「セシリア?……あ、なんか凄い手遅れ感?」
「ルークぅぅっ!!!」
クローゼットの前にへたり込んでいる私を心配して、私室の入り口からそーっと顔を出して声をかけてきたユージアが、私の声にびくりと飛び上がった。
執務室へ戻ると、すでにカイルザークの姿はなく、必死に笑いを堪えようとはしているが口角がすでに上がりかけているルークがふるふると肩を震わせながら、すまん。と謝るように片手をあげていた。
……許さないよ?
「……サイドチェアの衣類をクローゼットにしまおうとしたら……難儀して、ああなった。すまん」
「難儀って……」
「あ~クローゼットの中身、全部崩れてきたもんね。ははっ……」
「ユージアまで……」
あれか、私が昼寝に入って、ユージアがお風呂行く直前くらいに私室に来て、サイドチェアに座ろうと、上に置いてあった衣類をクローゼットにしまっておこうとして、扉を開けたら雪崩を起こしたと。
(それってさ、1番上というか、めっちゃ目の前に雪崩れたのって、その前に私がクローゼットに放り込んだ下着(!)だよね……)
うわぁぁぁぁ。
たたまずにずっとクローゼットに詰め込んでたのは私なんだけどさ…それを目撃というか雪崩れるのを2人に目撃された上に、綺麗に収納され直されたとか。
終わった。いろいろ終わった。
打ちひしがれてソファーにすとんと座ると、そのまま膝を抱えて腕の中に顔を埋める。
「セシリア、ごめんね。でもあれは……」
「……るさない。絶対に、許さない…」
がばっと顔をあげると、すぐそばで私の背を軽くをさすりながら、心配そうな顔をするユージアとは対称的に、声こそ出していなかったけど爆笑状態で思いっきり笑っているルークが正面に見えた。
「えっ……」
「2人とも……拒否権なしで、ひとつだけあとで…いうこと聞いてもらうからねっ!」
「えっと……僕、もともと拒否権、無い気がする…契約あるし」
「あ……そうか、忘れてたわ」
あぁ、ユージアってば私の奴隷……これ早く消したいな。
なんで消すの嫌がるんだろう?
辺境伯子息って奴隷よりもしっかりとした身分証明ができるはずなのに、それでも公爵家に来るには、何か条件が足りないんだろうか?
貴族って面倒くさいね。
ルークは、私とユージアのやりとりを見てさらに笑ってる。
人目を気にせず本当に楽しそうに笑う様は毎度のことながら、見惚れてしまうほどに、綺麗で。
あまりに笑いすぎて少し俯いてしまうと、途端に長い艶髪がさらさらとこぼれ出して、優美な顔に浮かぶその表情を隠してしまうのだけどね。
全身から楽しい!っていう笑い。好きだなぁ。
(でもね、ルーク、君が諸悪の根源だからね?)
サイドチェアを使おうとしなければ……あ、いや、寝てる人の付き添いのために使うとか……それが本来の使い方なのはわかってるけど!
衣類という先客がすでに陣取ってたのだから、遠慮しようよ?
むしろ、してください……。
「では、私は?ふふふっ」
「そうね……ユージア、今度一緒に、ルークの辺境伯邸の探検に行こうね。いろいろ面白そうだし」
「身の危険しか感じないんだけど……」
「では、お菓子をたくさん準備して待ってるよ」
にこりと嬉しそうに楽しげに笑う。
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