私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

154、相棒。

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ユージアは母様に抱きかかえられたまま、口を半開きにして熟睡中……というかよほど眠りが深いのか、ぽよぽよの頬によだれがたらりと輝いていた。
森での疾走、頑張ってたもんなぁ……。


「ハンスは、先に帰ったよ。この後、公爵家に来るが、な」


お礼も、挨拶もしていなかったことに気づいて、少ししょんぼりしてしまった。
でも、そうだった。
お土産を先に、ルークの敷地内へ魔石便で飛ばしてあったから、それをこの後届けてくれるらしい。
……その時にちゃんと、お礼を言わないとだ。


「……お土産を、届けるとの事だったが?」

「あ、はい。お土産を、との事でしたので、いくつか準備をしました」


父様からの問いかけに喜んでくれるかな?との期待から、思わず声のトーンが上がる。
あがる、が、なんとなく父様が挙動不審に見えた。なんか逃げ腰みたいな?

まぁ、相変わらず母様に抱かれているユージアは幸せそうに寝ているんだけど。


「それは…どんな……あ、いや、いい。楽しみにしてるから、ちゃんと教えてくれ」


戦々恐々としている様な、なんともいえない父様の反応に少し不安を覚える。
もしかして私が寝ている間に、ルークからお土産の概要を聞き、期待していたものではなかった……という事だろうか?とか思いつつ……。
そういえば、父様に渡すつもりだった『鈴』はポケットに入れてあったんだよなぁ。と、ぽっけをごそごそし始める。


「もちろん、セシリアが選んでくれたのよね?」

「はい!」


にこにこと嬉しそうな笑み、というよりは笑みを浮かべつつ確認をするかの様な母様。
うーん、やっぱルークが何か話したのかな?
まぁいいや、たくさんあるポケットを一通り漁って、鈴っぽい感触にたどり着けたので、取り出しつつ……はたと、思い至る。


「あ……自分達の分も用意してしまったので、結構な量になっているのですが……私の部屋へ運び込んでも良いでしょうか?」

「大きな…物なのか?」


えっと、思いっきり警戒してませんか?父様。
大きな物で、父様に有用そうな物は思いつかなかったのよね。
父様の普段のお仕事をはっきりと理解していたのなら、きっと……何か浮かび上がりそうな気がするけどね。


「いえ、それぞれです。父様のは……これです」


眉間をしわしわにしながら私を見つめている父様に向けて、握り拳を差し出す。
父様と母様の視線が私の拳に集まったのを確認してから、握りしめていた手を緩める。


「鈴か?……これだけ?」

「はい」


りん。と広げた手の上で、小さな鈴が鳴った。
小さな銀の鈴に根付の様にしてある青いリボンが付いている。


「なんだ…鈴か……」


大きなため息とともに、あからさまに安堵の表情を浮かべる父様。
何を期待されてたんだろう?


「はい!鈴です……父様が普段使われている武器は、どれですか?」

「杖……かな?稀に剣も使うが……基本的には後方支援となるから」


杖。そうですよね、魔術師団の団長さんですもの!
ていうか、父様の杖って見たことが無かった。
魔法って基本的には、杖なんてなくても使える物だから。

じゃあなんで必要なのか?となると、主に高難易度の大きな魔法を使う時だね。
杖の機能や使う人の目的にもよるんだけど、威力を増幅させたり、魔力の調節をしてくれたりね、魔法を使うための補助的なサポートをしてくれる物なんだ。

父様達、魔術師団の魔法での後方支援って事は、騎士達の後ろから、もしくは初撃に大きな遠距離や広範囲の魔法を放って蹴散らした後に、騎士達が残った魔物にとどめをさすような感じになるんだろうか?

それと勿論だけど、杖で殴ったりするためにも、ね。


「その杖を今もお持ちですか?」

「これだが……?」


杖のありかをきょろきょろと探していたのだけど、見当たらず……って、思ってたらあっさりと父様の影から肩口くらいの高さのゴツい杖が姿を現した。
どこに置いてたのかと思ったら、単純に窓際に立てかけてただけだったみたい。気づかなかったわ。
……というか予想外に大きくて、杖だと思ってなかったよ、それ。

「見せた事なかったな」という言葉とともに父様から杖を差し出されたので、受け取る。


「重っ!?」

「……あぁ、接近戦になると、棒術とか杖術という戦い方をするからな、大きくて頑丈な杖になる」


一見して木でできた杖に見えてたんだけど、予想外の重量で、受け取った途端にそのまま落としそうになる。
それに気づいた父様がさっと杖を持ち直してくれた。
危ない、うっかり杖と一緒に前に転がるとこだった。

頑丈……って、これ芯に金属入れてるよね?!


「ルーク…様は剣を使っていたようなので…」

「あぁ……剣は騎士の専門だからな、専門家がいるのに、真似事のような動きをしていても、しょうがないだろう?どう頑張っても専門家の方が強いんだから、その傍で魔術師が慣れない剣を持ってフラフラしてたって、邪魔にしかならないからなぁ……まぁ、昔は魔術師としての入団でも、剣が使えるという事が条件だったらしいから、ハンスのそれはその名残じゃないかな?」

「ふふふっ……ハンスは騎士団から勧誘されるほどに剣の腕も確かだから、使っていても誰も文句は言わないけどね」

「言わせない、の間違いだろう……勧誘に来た師団一つ、剣だけでしたって聞いたぞ…」


なるほど納得……って思ったけど、えっと、父様?今のルークの不穏な噂をさらっと披露しましたよね?
でもまぁ、魔術師団所属になるのなら基本は杖が武器になるのね。
だとしたら、セグシュ兄様も杖がメインになるのかしら?


「では、武器は杖だけですか?」

「そうだ」


父様の杖、そういえば初めて見る。
多分金属を軸にして、木で包んであって……核石は紅い魔石。
正確には魔石って言わないんだけどね、大きめの宝石に見える石は、その杖の核となる重要な物。

もし杖が折れてしまっても、この核さえ無事なら、核を新しい杖に移し替えれば、大体似た様な能力のものへと再生できる。
応急処置っぽいけどね。

以前と全く同じ杖、とまでいかないのは、杖と核との馴染み具合、それとその持ち主との馴染み具合も重要な要素になる。
しっかりと使い込んであげないと、使い勝手や相性はどうしようもないよねって考えたら間違いはないかもしれない。

魔法を使う者にとっての最高の相棒だからね。


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