私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

155、形見。

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「杖に、この鈴をつけても良いですか?音は鳴らなくなりますから、戦闘の邪魔にはならないと思うのですが」

「なにかのお守りなのかい?」

「はい!大切な御守りです。父様の助けとなると思います」


……今回はちゃんとお許しをもらってから、鈴をつけるからね!きっと、変な誤解とか、怒られる事はないよね?
ていうか、OKもらえなかったらどうしよう。
そう思っていると、父様はふっと口元を緩め、安心した様に笑いながら杖の先、ちょうど核石がある部分を指差す。


「そうか…じゃあ、杖の上の方にチェーンが通してある所にお願いしようかな?」

「ありがとうございます」


「こっちだよ」と後部座席の中央へと向かって、杖の先が延ばされると核石が埋め込まれている部分に、銀のチェーンが見えた。
チェーンの先にしずくの様な形の小さな魔石がついていて、その根元を見ると、銀の鈴の根付も取り付けられそうな隙間があった。

……杖は父様が持ったまま、その差し出された杖の先に銀の鈴の根付を取り付ける。
銀の鈴の根付は、取り付けた途端に、りん。と鳴ると青いリボンが真っ赤な色に変わった。
父様は赤なんだね……髪の色とお揃いで格好良いかも。

よほど使い込まれた杖なんだろうね、魔力を通す作業をお願いしなくても、リボンにまで自然と父様の魔力が行き渡ってしまった。

魔力効率の良い、相性も良さそうな……良い杖だ。


「父様、この鈴の音を覚えてくださいね」


根付を結き終わって、声をかけるために顔をあげると、母様まで身を乗り出す様にして、私と杖とを見つめていた。
りん。と鈴をつついて鳴らすと、父様は緊張気味にゆっくりと頷いた。


「では、杖を一度置いてください」


本当は私が置けば良いんだけどね、さすがに重すぎて後部の座席に座ったままでは厳しい。
それに、杖を持ってたのは父様だしね。
父様は杖を真ん中の通路の様になっている部分に置く……寝てる子もいるし、長いから他に置ける様なスペースも無いってのもあるんだけど。


「手を開いて……そう、そんな感じで……手にこの杖があるようにイメージをして『来い』と」

「あぁ、わかった……っ!?」


言ってる側から、父様の手に杖が現れる。
杖を置いて、そこから真上に移動した父様の間髪置かずに手に吸い付く様にいきなり現れた杖に、バランスを崩すかなと思いきや、杖を握り締めたまま呆然と固まってしまった。
そして、自分の手の中にある杖と、杖を置いたはずの床とを交互に見つめている。


「よく出来ました!」


反応が面白くて、思わず誉めつつも笑みがこぼれてしまう。
ちゃんと父様にも使えた!
というか思ってるより鈴の反応が早い。
父様のイメージが優秀なのか、杖との相性が良いからなのかはわからないけれど、これなら実践や、いざという時でもしっかり使いこなせそうだなと、嬉しくなってくる。


「次は『消えろ』と、姿を消すような…小さくしてしまうイメージで」

「消え……た?どこへっ?」


……説明している最中に、スッと姿を消す杖に、びっくりを通り越してショックだったのか、周囲をきょろきょろとしながら、悲鳴じみた声があがった。

ちゃんと説明させてください、父様。
母様は、マジックショーを見ている子供の様に目をキラキラとさせながら、父様の手に視線を送っている。


「父様、落ち着いて……小さくなって側に、あります。もう一度『来い』と命じてください」

「あぁ……あった。これは面白いな」


やっぱりすごい勢いで姿を現す杖。
これは相性かなぁ?ちゃんと、杖に好かれてるんですね、父様。
自分の手に戻ってきた相棒をしみじみと見つめながら、消したり出したりとを何度か繰り返している。
……が、だんだん慣れてきたのか緊張した硬い表情から口角が上がり、なんとも言えないにやにや笑いになってきている。

感心、じゃなくてそれ、子供が新しいおもちゃをもらって、思いっきり遊び出した時みたいな顔ですよ!?
面白いのはわかるから、わかったから!とりあえず最後まで説明を聞いてあげてくださいっ!

母様に至っては、完全に目をまん丸にして興奮のあまりユージアをギュッと胸に抱きしめて……というか抱き『締めて』ますね、母様。きゅっと締まってますよ……。

ちょっと苦しそうに顔をしかめつつも、寝続けるユージア。
図太いのか消耗が激しすぎたのか……意外に大物かもしれない。


「とりあえず……収納していれば常に側にはありますから、ただ何処かに起きっぱなしにしての呼び出しは、難しいようですので、気をつけてください」

「わかった『置き忘れるな』って事だね。大事な杖だからね、絶対にしないよ……セシーも、ありがとう」


そう言いながらも、視線は自分の相棒、杖の先に付けられた鈴を見ている。
私はどちらかといえば、その鈴と並んで揺れている、銀のチェーンについた魔石が気になってしまってたのだけど。


「……そのチェーンはね、母様からのプレゼントなんだ。この魔石に母様の祝福の加護を込めてある。綺麗だろう?」

「とても……綺麗です」


私の視線に気づいたのか、チェーンについて教えてくれた。

うん、出所は予想がついてたんだけどね……ほら、魔導学園ルークでの失態で学習したからね!

気になっていたのは、技術的な興味ってところかな?
魔石に『魔法効果の付与』をするということが、今世いまではどれくらいの難易度の技術なのかを知りたかったのだけれど……母様ができるって事は、そんなに高等技術ってわけではなさそうで少し安心する。

ちなみに。母様のかけた『祝福の加護』とは、杖自体に少しだけ、聖属性の付与がされるというものらしかった。

杖で殴った時に、ダメージに属性効果が乗るので、無属性よりはちょこっと痛くなるらしい。


(まぁ、軽い属性付与だから、目を見張るほどのダメージの違いが出るってことではないんだけどね)


一応今の時代は、他国の侵略なんて事もないらしくてね、騎士団が戦闘する様な場面って、基本的には魔物討伐になるんだ。

魔物討伐の場合、瘴気の濃い場所というのがよくある。
瘴気が濃いからこそ、魔物が好んで溜まっちゃう、溜まっちゃうからそこに瘴気が集まる……という悪循環からの結果なんだけどね。

そういう場所では、属性効果……特に聖属性の付与がある武器で戦うことによって、その瘴気自体を払うこともできるらしいんだ。
むしろそっちの効果を狙ってるのかな?と思った。


「武器には家族や恋人から贈られたものをつける、というのは本当なんですね」

「そうだなぁ。魔術師団という名ではあるが、階級でいえば騎士だからね……あってはならない事だが、緊急時の身分証明にも使われる、自分の分身とも、相棒ともなるものだからね」


……つまり、墓標になる。
もしくは形見として、家族へ返還される。
どちらもあってはならない事だけど、緊急時にはそうせざるを得ない場合もあるって事だ。

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