私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

156、大切なもの。

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たくさんの被害が出てしまった場合、遺体が回収不能な場合……それぞれ理由はあるだろうけど、それでも遺されて待つ者がいるから、その者のためにも大切な物だ。


「そうですか……」

「どうかしたの?」


そう思うとちょっと怖くなる……大切な人との別れが怖い。
行ってらっしゃいと見送ったまま、二度と会えなくなる、ここはそんなことが当たり前にある世界だけど、イヤだ。
そんな事になるくらいなら同行する。
それがかえって足手纏いになるのなら、失わないために、失わせないために打てるだけの手を打ちたい。

……でも次の瞬間、魔導学園で笑いながら説明してくれたユージアのセリフがぱっと脳裏に浮かび上がる。


[わかりやすく言えば『私だけの騎士になって♡』とか?]

[まぁ、そういう意味?幼児ちびっこのくせに…積極的…?]

(何が積極的だ?おい……いや、まぁ知らなかった私も悪いんだけどさ)


なんだか微妙な気分になってしまい、ため息まじりに返事を返すと、父様が怪訝な顔になる。


「いえ、知らなかったので……」

「知らなくて当たり前だろう?」


そりゃそうなんだけどね……。
騎士の心得的なものなんて、食事の席で話すものでもないし。
それ以外で父様と会話なんて、まぁ、日々のちょっとした発見という、普通の会話しかしないからね。
仕事の会話とか、魔物討伐なんかの話になっちゃったら殺伐しすぎて、そもそも3歳児がいる席で話す内容では無いから。

心配そうにしている両親には、一応話しておいたほうがいいかなと思い、話す事にした。
よくよく考えたら、こうやってしっかりと両親と話せるタイミングも、そうそう無い気がする……噛んじゃうし。

話すと決めたけど、なんか照れくさいね。


「知らずにルーク…様にも同じ物を……便利そうなので、良かれと思って……」

「あ……やってしまったのか」


あちゃー。と言った感じで父様の眉間へと手が添えられる……申し訳ない。


「やって…しまいました」

「よりにもよってハンスか……見た目いまはともかく、中身が3歳児じゃ知らなくてもしょうがないんだが」


深いため息をつきつつの父様に、しょうがないよ。と慰められるのだけど、隣の母様は急に目がきらきらと輝き始めると身を乗り出す様にして口を開き出した。


「……ねぇ?ハンスはどんな反応をしたのかしら?セシリアに婚約の申し込みをしてくるくらいですもの!そっちの方が気になるわ…ふふふ」

「こらこら……」

「んん……う…っ?


あぁ、そういえばそんな話も…あったわ。確かにあった!
本当に、魔導学園にいた時もだけど、何考えてたんだろう?ルークは!と思いつつ、母様を見る。

母様は一番前の座席から、後部座席の中央に座る私に向かって、身を乗り出す様な姿勢。
胸にはぎゅーっと抱かれたユージアがいるんだけどね
今回ばかりは流石に苦しかったのか、可愛らしい呻き声と共に、もぞもぞともがき始めている。


「えっと……」


これは状況を説明すべきか、ユージアを助けるべきかと思って私もうなっちゃったんだけど。


「……っ?!うわあっ!」


抱き『締め』られつつ、潰されかけては流石に寝てられなかったみたいね。
自分の置かれている状況に気づいたのか、見る見るうちに顔を赤くし、涙目になったユージアから悲鳴が上がる。


「あ、うん、こんな感じですかね?」

「あら……見てみたかったわ」


ユージアのこの反応に似てたよと、言っておく……微妙に違う様な気はしたけど、まぁ良いか。

母様は、おはよう。とユージアに微笑みかけると、頭や頬に頬擦りを始める。
……やっぱりしちゃうよねぇ。可愛すぎるもん。


「……すみません。元の姿に戻りたいので…離してください」

「もう、家に着くから、それまではこのままで良いわよ。あぁ~柔らかいわぁ」


なんとか抜け出そうと、じたばたと小さくてぷにぷにの手足を必死に動かしてるのが見えるけど、しっかり抱え込まれているので抜け出せず、母様に堪能されるがままになっている。

まぁ、無理に抜け出せても、シャツしかまともに着れてない状態だから、色々見えちゃうからね?


「良くないです。戻りますっ!うぐぐ……」

「そうよね、ユージアはハンスの息子なのよね。あらやだ!可愛すぎるわね」


そう思いつつも、母様の頬擦り攻撃は続き、それをなんとか阻止しようと出された手も、握り返されて「小さくてふわふわだわぁ」と頬擦りされていた。
うん、常日頃、セシリアわたしにしていた事をそのまんま、ユージアにしてるね!
頑張れ、それはまだまだ続くぞ……?


「やめてください……」


ちなみに父様はにこにことその様子を見つめている。
ルークは私がユージアを可愛がると不機嫌になったり、嫌な顔をしてたんだけどなぁ。

やっぱり、ユージアの実年齢の判断基準をどこに置いているかで変わるのかと思うんだけど、確実に父様は幼児として見てる。
ルークは……成人として見てるっぽかったんだよなぁ。


「セシリア、たすけて」

「あらあら、私よりセシリアの方が好きなのかしら?」


まぁ微笑ましい光景だなぁなんて、ぽやーっと見つめていると、色々な意味で母様の母性に襲われてるユージアから救援要請が来た。
必死に私に向かって手を伸ばしているので、私も伸ばし返す。


「私が、抱っこする?」

「そうじゃない……」


……私に抱っこして欲しかったわけじゃなかったらしい。
ちょっとがっかり。

精神年齢的な意味でも本当の姿、って言われてるユージアのこの幼児状態、ものすごく可愛いんだよ。
エルフだからってのもあるんだろうね?
幼児特有のぷっくりまん丸の顔に、宝石の様に綺麗な大きめの金の瞳、一目で将来有望!とわかるような幼いながらも綺麗な顔立ちをしている。

だから、私が抱っこして良いなら、私もユージアに頬擦りしたい!
髪もサラサラのふわふわなんだよ。


「そうだった!母様っ!ユージアに解毒を、お願いします……長患いというか、毒に馴染んでしまっている状態らしいので……毒が抜けきるまで、1週間ほどは毎日解毒をお願いしたいのです」


思わず、母様に全力で可愛がられているユージアに見惚れていたわけだけれど、大事なことを思い出す。


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