私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

157、解毒。

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にやにやしてる場合じゃなかった。
早めに治してもらわないとダメだもんね。


「それは……教会の毒かしら?」

「はい…」

「そう……ユージアの身体は毒に負けないように頑張ってたのね……」


そう言うと、母様の手に淡くて優しい光が集まりだす。
光が集まった手で、抱いていたユージアの背を撫ではじめる。


「温かい……です」

「そうね、身体中の血を温めてあげるイメージかしらね?強い毒だと、何度も使わないと抜けてくれないのだけど。セシリアも覚えておいてね」


にこりと母様から笑みを向けられた。
まさに大聖女とも言える神々しさを纏う母様に、うっかり見惚れてたなんて言えない。
蛋白石オパールの色の髪が、ゆらゆらと揺れる魔石ランプの明かりと、手から発せられる解毒の魔法の光を受けて、綺麗に遊色している。

光の魔法が使える人が『神の御使い』なんて呼ばれて……人なのにね、神様のように恭しく扱われる理由がわかったような気がした。

解毒、私でも一応使えるんだけどね。というか使えてたんだけどね。
セシリアとしてでは、使ったことがないから、母様にお願いした。
できるつもりで、たしかに効き目があったとしてもまた激痛とか、可哀想だもんね。


「ユージアは明日から使用人養成所の寄宿舎に入る事になってるから、解毒は治療院か公爵家うちに通ってもらう事になるな」

「使用人養成の寄宿舎からだと治療院より公爵家うちの方が近いから…そうね、朝の鐘が鳴るくらいに帰ってこれる?1週間通う事になっちゃうけど……」

「それくらいなら大丈夫です!よろしくお願いします」


あぁそうか、本当なら今日が使用人養成学校への出発の日だったんだ。
明日になったんだね。


そうこうしているうちに、護衛たっぷりでゆっくりのろのろ進行の馬車が、やっとガレット公爵邸へと到着した。

自宅とはいえ、公爵邸の夜の風景は初めてだったりする。

まぁ、前世にほんと違って、小さな子供を連れてファミレスで晩ご飯~なんてことが気軽にできるような、治安でもないし、そもそも日没以降にやっているようなファミレスなんてないからね。
食堂はあるけど……この時間帯になると基本的には居酒屋的な雰囲気になるから、子供は連れて行きたくないよね。

まぁそもそも、3歳児を連れての、日没以降の外出自体が基本的には無いからね。

エルネストもカイルザークも、馬車の揺れの変化で目が覚めたのか、いつのまにかにしっかりと座席に座り直して外の景色をじっと見入っている。
見えるのは公爵邸の大きめの庭と、奥に広がる建物くらいなんだけど……と思ったけど、大きなお屋敷を囲むようにぼんやりと魔石の照明で庭と建物がライトアップされているその景色は、さながら前世にほんにあったミュージアムとかテーマパークのお城のよう。

趣があって素敵だった。
夜景、凄いねぇ。


(しかもそれが自宅とか、贅沢すぎるよね)


ちなみにユージアは結局、母様にずっと抱っこされたままだった。
……脱出しようとはしてたけど、解放はしてもらえなかったようだ。

玄関前にはすでに馬車が2台止められていて、その馬車についた家紋を見た父様とユージアが「仕事が早いな……」と、それぞれの理由から顔をしかめていた。
どうやらルークの馬車っぽい。

2台……?なんで2台なんだろうと、首を傾げ……はっと思い出す。
ルーク邸に、物凄い量の衣類を送ったのだった。
1台では乗せきれなかったんだね、ごめん。


「セシー、着いたよ……みんなも、足下気をつけて降りて」


馬車のドアが開かれると、玄関前の方が車内よりも明るかったのか、強めの光が差し込んでくる。
それを確認すると父様に続き、ユージアを抱いた母様が降りていく。
後部座席かからエルネスト、カイルザークと続いて降りて行き、最後に私。

車内から、乗り降りのためについているステップに足をおろそうとしたところで、手を差し出される。
ドレスじゃないから、足元はしっかり見えてて大丈夫なんだけどね。
先に降りた人や使用人達へのマナー的なものもあるらしいから、素直にその差し出された手に、手を添えて支えてもらうようにして降車すると、そのまま手をぐいっと引っ張られ、抱きしめられる。


「ようこそ公爵家わがやへ。セシー、やっと帰ってこれたね。おかえり」

「「「おかえりなさいませ」」」


ふわりと鼻腔をくすぐる花の香りと優しげな声に顔を上げると、目の前には長い赤髪。
……手の主は父様ではなく、セグシュ兄様だった。
ぎゅっと抱きしめられて、背をぽんぽんと叩かれると解放された。

兄様の声に続き、玄関ルーム……えっと、玄関だよね、ここ?
玄関のドアを開けてすぐに、フロアのようになっている広い空間の左右に使用人たちが並んで、礼をしていた。

その使用人たちの列の中にセリカを見つけ、ほっとする。
セリカも私に気づいたようで、小さく手を振ってくれていた。


「うわー…本当に御屋敷だ……」

「とりあえず、歩け。後ろがつかえてるからっ!」


少し進んだ先でエルネストが、玄関前で周囲を見上げたまま固まってしまっているカイルザークを誘導するように引っ張っている。
初対面ではカイルザークを警戒してたけど、しっかりお兄ちゃんだなぁ。

奥の方では、父様と母様、そして家令……えっと、ここのおうちで一番偉い執事長さんね。
その3人で何やら話をしていた。


「カイルザーク、キミのお部屋は、エルネストと一緒で良いかな?……場所としてはセシリアの隣の部屋だよ」


私たちが近づいてくるのに気づくと、父様からカイルザークの部屋について説明をされた。
そうか、カイルザークの部屋が決まってなかったね。


「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」

「あらあら、礼儀正しいのね。こちらこそよろしくね」


カイルザークはぺこりとお辞儀をすると、嬉しそうに笑う。
それを見た母様が……って、まだユージア抱いてたんだね。
なんか、ユージアが遠い目をしてるわけだけど。

母様はとろけそうなくらいに優しく微笑みかけると、カイルザークの頭をぽんぽんと撫でた。
カイルザークは頭を手で押さえて目を丸くして、母様を見上げてる。
……何か言われたのかな?


「あらためてカイルザークだよ。エルネスト、よろしくね」

「く・る・なぁぁぁぁ!」


きゃー!と両手を万歳したような格好でエルネストに抱きつこうとして、思いっきり避けられ…るのをうまく躱してしっかり抱きついてた。
エルネストが鈍いわけじゃ無いんだけど……やっぱり身のこなしが見事。

全力で嫌がるエルネストとそれを面白がって追いかけまわすカイルザークとで、さながら子犬のじゃれあいにしか見えなかったわけなんだけど、最終的にはエルネストにカイルザークは首根っこを掴まれて捕獲されてしまった。


「エルがダメならセシリアと一緒でもいいよっ!」

「だめっ」

「じゃあエル!よろしくねっ!」

「……よろしく」


……エルネストは少し遠い目をしていたわけだけど、うーん。
そういえばエルネストはゼンと仲が良かったってだけで、何かこう積極的にぐいぐいくるような人は苦手なのかな?
ゼンは、エルネストに対して、しつこくすると言うよりは、会話を聞くことに徹していた気がするし。


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