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はじまりはじまり。小さな冒険?
158、部屋。
しおりを挟む「ともかくだ……ユージアは……帰ってくるまでに部屋を準備する事になったよ……状況が状況だから、本当ならエルネスト達と近い部屋を、と思ったのだけど……登録と立場上、使用人棟の1人部屋となる予定だ」
「ユージアだけどうして?」
父様の説明が続いていく。
カイルザークが首を傾げて、父様を見上げるように聞いてるのに気づいたのか、カイルザークの視線に合わせる様にしゃがみ込むと、話を続けた。
「差別とかでは無いんだよ。ユージア本人とハンス……ユージアの父親からの希望なんだ。事情も知ってる。その上で、とにかく社会勉強をさせろって。ね。なので立場はともかく扱いとしては君たちと一緒だから、心配しなくていい」
「……そうなの?」
「うん……あと…クロウディア様、そろそろ降ろしてください…」
「もうちょっとだけ!ふふふっ」
肯定の返事が頭上から…というか母様に抱かれたままのユージアから聞こえたわけなのだけど……。
その返事に反応するかのように周囲の視線が自分に集中していることに気づいたのか、顔を恥ずかしさで朱に染めながら、なんとか降ろしてもらおうと、もがきはじめる。
父様はそんな様子を見て、眉間を抑えながら立ち上がる。
深いため息をつきながら。
「ひとまずだ……食事の準備が整ったのと、ハンスが待ちかねている。正餐室へ移動しよう」
正餐室……やっぱり聞き慣れないな、食堂のことだね。ご飯食べるとこ!
父様が『ハンスが待ちかねてる』って言ってたし、今日は一緒にご飯かな?
昼ご飯に相当するものって、森の移動の時ので激しく酔ってたからってのもあるけど、お茶とクッキーくらいしか口にしてなかったから、ものすごくお腹が空いてる。
******
「待たせてしまって申し訳ない」
「いや……ふっ。ユージア……着替えてきたらどうだ?」
「……っ!!だからイヤだったのに」
父様とルーク、そして悲鳴に近い声のユージア。
あぁ、その状態を見られるのは嫌だよね。
ていうか、服装もまたもやサイズの大きすぎるドレスシャツ一枚という、何ともいえない状況になってしまっていたし。
「あら……ハンスに見られたくなかったのね?ふふふ。ごめんなさいね?」
「着替えてきますっ!」
「……セシリア嬢の荷物は小サロンに運び込んである…ふふっ」
ルークの声を背に受けながら、正餐室を飛び出してくるユージア。
入れ替わるように入室していくエルネストとカイルザーク。
さりげなくエルネストがカイルザークの手を引いているあたりが、やっぱり優しいお兄ちゃんなんだろうなと思う。
カイルザークのような押しの強い弟は苦手みたいだけど。
「凄いね……精霊使いなのかな?4人も連れてる」
「本当だ、精霊がいっぱいいるけど……」
呆然とするように呟くエルネストと思いの外、冷静なカイルザーク。
二人の会話の内容が気になって覗き込むようにしながら正餐室へ入室すると、そこにはルークがすでに着席し、その後ろに付き従うように、4人の精霊の姿があった。
白いレースのワンピースを着た可愛らしい少女姿の風の乙女。
彼女はルークのお手伝いをしていたから、見覚えがある。
その隣には青いドレスの大人しそうな少女がいた。
パールを雫のようにあしらった髪飾りとお揃いのドレスの装飾が、ふわふわと揺れてとても目を引く。
カイルザークは水の乙女って言ってたけど、もしかしてユージアを助けようとしていた子かな?
見目麗しいエルフが、背後に同じく優美な顔立ちの精霊を従えている様は、絵になる……というよりは一種の威圧感すら感じる。
「ねぇ、ルーク、水の乙女も契約できるようになったの?」
そんな外見の威圧感すら気にもせず発せられた、カイルザークの質問に、ルークはふわりと笑みを浮かべている。
(なかなかの眼福……なんだけど、イヤな予感しかしないのは何故だろう)
周囲の接客のプロであるはずの、公爵家のメイドや料理を運んでくれている給仕たちですら、ちらりどころか思わずガン見しかけてしまう美貌の集まりである。
「残念ながら水の乙女は預かってるだけだ……もちろん後ろの2人もね」
後ろの2人……彼女達のさらに背後に控えている、同じ背格好で少年の姿をした残り2人の精霊にはバッチリ見覚えがあって……。
漆黒の艶髪に、黄金の瞳のルナと、金のふんわりと広がる長髪で紫がかった黒の瞳のフレア。
うん、今回はちゃんと自分の姿だった!と思ったのと同時に、反射的に声が出てしまう。
「ルナフレア!……また、何かした?」
『『してませんっ!』……まだ』
『…あぁ?』
まだ。と一言多かったのはルナ……その後に、やたら低音のどすの効いた威圧感ばっちりの声は……女の子のものだ。
多分、とか考えなくとも風の乙女の声。
ルナの声を聞いた途端に、眉がすごい角度につり上がったのが見えた……と共に、びくり、と双子の精霊がすごいシンクロで飛び上がる。
『…っと、セシリア、ごめんなさいねぇ?ちょっとこの子、もう少し借りるわぁ』
風の乙女は振り返って、にこりと笑いながら、ルナの腕を力一杯掴むと、引きずるようにして姿を消してしまった。
残されたフレアは、安堵の深い深いため息を吐いている。
いや、連れて行かれたの、キミの半身だからね?!ほっとしてちゃダメだからねっ!
どれだけ怖いの……と思ったら、エルネストまで一緒に怯えていた。
「僕、あの白い子、怖い……」
「そう?すごく良い子じゃん」
何で怖いのかわからないんだけど?とカイルザークが首を傾げる。
私から見ても、昔からしっかりとルークのサポートをしてたし、とても優秀で良い子に見えるんだけど。
今回、魔導学院からここに帰るまでも、かなり頑張ってくれてたみたいだし。
「風の乙女は……怖いよ?」
「あ、ユージアおかえり」
小首を傾げかけたところで、背後からユージアの呟きのような声が聞こえた。
……そういえばユージアも、風の乙女に妙に怯えてるんだよなぁ。
って、声が可愛らしいまんまだった。
振り向くと、3歳児の姿のままのユージアがいた。
魔導学院初等科の制服を着ていて…まぁ今の時代ではわからないか。
一見すると子供用のフロックコートを着用しているように見えて可愛らしい。
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