私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

163、巻藁。

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……あ、おかわりしてるから、私だけ食事が遅いのか!そんな事実に気づき愕然としていると、背後からフレアの独り言が聞こえた。


『……あの風の乙女シルヴェストル主人ますたーだもんなぁ。そうなるよね』

『フレア……その風の乙女シルヴェストルが、早く来いと呼んでるようですけど?』


ルークの背後に控えてたはずの水の乙女オンディーヌの声まで背後から?と思って振り向くと、その手にコームなどの髪を整える道具一式が用意されている。


『セシリア様、お食事中ですが少々失礼致します』

『まだ、僕の仕事は終わってないから……まだ、大丈夫』


あ、うん、フレア達も大丈夫そうじゃ無い感じだね。
フレアの震える声を聞きつつ、現在進行形で風の乙女シルヴェストルのそばにいるはずのルナは大丈夫かなぁなんて心配してみる。

明日から、彼らも…どうなるんだろうね?
講師は違えど同じように、猛特訓のような授業が開始される…というかすでに開始してるのかな?

いろいろ考えなきゃいけないことが出てきてるんだけど、結局整理は手付かずだし、思わず唸りそうにしながらデザートを食べている私の髪を水の乙女オンディーヌは丁寧に整えていく。


(あー、そういえば!髪を全く気にしていなかったわ)


気づくの今更すぎたけど。
それこそ、魔導学園へ飛ばされたあと、風呂を堪能した後からずっと髪を下ろしっぱなしだった……のはともかく、そもそも梳かしてすらいない。
ぼさぼさだったかな?ぼさぼさだよね。
……猛スピードで森の中を走ったりしてたし。


『大丈夫ですよ。身体をお戻しする前にピンなどの飾りの残留物がないかの確認だけです』

「ありがとう」


私の困惑に気づいたのか、さりげなくフォローをしてくれた。
水の乙女オンディーヌは、しっかりしたお姉さんって感じだなぁ。素敵。

周囲の雑談は続いていき、私もなんとかデザートを終えて、紅茶が運ばれてきた。
……うん、お腹いっぱいすぎてお茶の入る隙間があるかどうか怪しいんだけどね!
満足感からか、はーっと満足のため息がでる。


(久しぶりに満足するまで食べ切った気がする……幸せ~)


改めて周囲を見渡すと、ルークは書類を片手に父様と母様の弾丸トークに適当に相槌を打つような形での会話に参加?あれって会話に参加してるのかな?……まあいいか。

セグシュ兄様はカイルザークに色々と説明している。
家族構成に始まって、父様と母様の爵位、職位、国の最近の情勢等…カイルザークは聞き上手だから。情報収集中っぽいなぁ。
そんな会話を聞きつつ、ユージアとエルネストがわからなかったところを質問していくような感じになっていた。
社会科の勉強っぽくて面白かったので耳を傾けていたのだけど……。

そんな歓談中にふと、1枚の書類の内容にルークの動きが止まる。
すぐに何事もなかったかのように、眉間のシワも消えたが……その書類がすっと向かいに座る父様の前へとスライドしていくと、今度は父様の眉間が今世紀最大の溝を作った。

その手紙はそのままルークの元へ戻ると、隣に座る母様にも渡された。
……どうもあまり良い内容の報告ではなかったらしい。

どうにも気になって、じーっと見ている私の視線に気づいたのか、話を変えるかのように父様がすっと立ち上がる。


「あー、そうだった、話が弾んでるところで悪いんだが、ひとまず明日の流れだけ説明させてくれ」


ぱんぱん!と父様の手を鳴らす音が響き、一瞬にして会話が止み、静まる……普段はしないんだけどねぇ。
やっぱり人数が増えると、学校みたいにみんなを一斉に注目させるには手を叩いたり、何かベルを鳴らしたりが必要になるのかしらね?


「まず、今回の件で入所予定がずれ込んでしまったが、ユージアは養成所へ明日出発して、明後日から授業開始となる。いいね?」

「はいっ!」


ユージアが張り切って返事をする。
頑張ってきてね。そして早く戻ってきてね。
そんな様子に父様は満足げに笑みを浮かべ軽く頷くと、今度は私やカイルザーク、エルネストに視線を向ける。


「明日の朝は、ユージアを見送ってから……先日の続きをする事になる。セシリアとカイルザークも一緒に属性の測定、その後、エルネストとカイルザークは王子達と勉強会だな……」

「セシリアは?」

「セシリアは、龍の巫女というお仕事があるから、龍の離宮へ行った後に、勉強会に合流するよ」

「龍……ね」


カイルザークの声がなんだか嫌そうな感じに聞こえた。苦手なのかな?
でも、守護龍って魔導学園では憧れの存在だったはずなんだけどな。
何かあったのかな?

父様は念のため。と、この国は龍の守護があるということを簡単に説明し始める。
守護を受けている国の守護龍と王族との関係。
国、国民たちの関係。


(龍が守護してくれてるだけでもすごいことなんだけどね)


たったそれだけで、その国は龍の持つ属性に関しての恵みを強く受けれる。
魔法が使える者であれば、その属性に関しては、使いやすくなる。
つまり相性の向上がある。本当にありがたい。


「そう……龍だ。セシリアは龍の離宮へ行ってから王宮の東にある小サロンに移動。まぁ、慣れればわかるようになるが、少し距離があるからね。案内はつくが迷子にならないようにね?そこが勉強会の会場となる。全員が集まっての開始になる、セシリアは焦らなくても大丈夫だよ」

「はい」

「龍の巫女としてのお仕事は、離宮に行った際に守護龍より説明されると思う。頑張って」

「はい……」

(当面はお茶会でもする?とか言ってたくらいだもんなぁ。何するんだろう?)


そういえばすっかり忘れてた(!)けど、私のつがいの赤ちゃん龍ってどんな子なんだろうね?
顔合わせできるのかな?
お父さんである守護龍のアナステシアスも凄い美人さんだったから、絶対きれいなはずなんだよなぁ。

思わずにやにやしそうになると、ふっと息を吐く声が聞こえた。


「セシリア、後日、正式な招待状を送る。カイとユージアの予定を合わせておいてもらえると助かる」


ルークだった。
シシリーわたしの部屋を漁ったお詫びの件ですよね……。
反射的に頷くと、父様が訝しげにルークを見て……というか母様までびっくりした顔をして見つめていた。


「ハンス……?何の招待状だい?」

「あぁ、ユージアの件もあるが…お詫び、だろうか?あと…これのお礼だな」


これ。と手を掲げると、ふっと音もなく現れる杖、そして剣。
そのどちらにも、私が父様にあげたものと同じ鈴が揺れているのを確認したのか、一瞬、眉間にしわが浮かび……同じく頷く。
私には父様のその表情が「あちゃー」って読めたのだけど、気のせいだよね?


「……なるほど」

「それと……こちらが本題になるのだが、どうやら守護龍から、セシリア嬢の契約精霊への指導を……私の精霊、風の乙女シルヴェストルが仰せつかったようで、そちらの調整の予定だ」


守護龍の話が出てきて、完全に納得したのか母様もほっとした顔で頷いている。

……風の乙女シルヴェストルがルナとフレアを震え上がらせてるのって、守護龍のアナステシアス様からの依頼だったのね…お手数おかけしてます…。
そうそう、精霊ってさ、龍とか完全に格上の属性を持つ生き物には無条件で従ったりするんだよね。
むしろその龍自体を住処にしてる感じらしいんだけどね。
つまり共生のようなもの?


(契約しても、まともに動いてもらえない私から見れば、羨ましい限りなんだけどね)


メアリローサ国ここの守護龍は風龍だから、風の乙女シルヴェストルにしたら、すごく嬉しい環境なんじゃないかな?
水の乙女オンディーヌは、何か考えがあって独自で動いてるっぽいから、ついでに協力してるような感じに見える。

どの属性の精霊にしても、膨大な魔力の塊である龍は魅力的な存在なんだけどね。


「カイとユージアは、ついでに精霊魔法の稽古だ……」

「げっ……稽古じゃなくてそれって…被験者って言ったりしないよね?」


何故だか先ほどからユージアの顔色があまりよろしくない色へと変わっていっている。
流石に実験台として幼児2人を使うことはないと思うんだけど?

あ、でも、自分の部下すら実験に使ったとかいう噂を、聞いたような……。
父様からだっけ?朝の食事中の弾丸トークの中だったかなぁ?


「……そんなに受けてみたいなら、巻藁代わりにしてもいいんだが?」

「それ、本当にやめて」


カイルザークからも非難の声が上がり、その様子にルークがくく…と喉で笑う。
巻藁って……カイルザークとユージアに何をするつもりなんだろうか。
ついで、とか言ってるし、巻藁って…試し斬りとか試し打ちに使うやつでしょう?

まぁ、軽い冗談だよね?と思って父様へと視線を向けると、思いっきり頭を抱えてるし。
え…まさか本気じゃ無いよね?!
ていうか、あの反応からするに、以前本当にやらかした前科があるってこと?

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