164 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
164、またいつか…。
しおりを挟む「……今回エルネスト君を誘わないのは、レオン王子と同等の勉強が溜まっているからな、同室の騒がしいのがいないうちに、しっかりと励んでおくことをお勧めする」
「僕、騒がしくないよ?」
「十分騒がしい……エルネスト君…この雑音に困ったら、ライブラリでの勉強をお勧めする。ここのライブラリは王家に次ぐ情報量の多さを誇っているからな」
カイルザークを見た後にふう。と深いため息を吐くと、エルネストに笑いかける。
うーん、父様や母様のルークの挙動に対する反応が過剰に見えるくらいに、和かなんだけどな。
普段のルークってどんななんだろう?
「ライブラリ!あるのっ!?」
そんな考えすら吹き飛ばす勢いで、目をきらっきらに輝かせたカイルザークが、父様に飛びつくかの勢いで話しかけてくる。
「あぁ…あるが、子供が読んで聞かせるようなものは少ないよ」
「見たい!……歴史書!ありますか?」
「ある…って、待ちなさい…ご飯の時間だよ、今は」
あまりの勢いに父様、声が上擦ってました。
カイルザークのこの反応は予想外だったようで、母様も一瞬目を見開き、父様に視線を送り笑い出す。
颯爽と席を立ち、ライブラリへ行きたいのか、ドアへ向かって走り出したところで、びっくりした顔の父様に捕獲されていた。
小脇に抱えられて、席に座らせられる憮然とした顔のカイルザーク。
目が合うと思わず笑ってしまった。
……ルークほどでは無いけれど冷静沈着で、マナーとかもすごいきっちりできる子だったのに、我を忘れる勢いでライブラリ目指そうとしたことに、どうにも笑いが止まらない。
「出たよ……さすが変態仲間…。あ、やっぱセシリアも行きたそうなのね~」
「うん……でも、私は魔法の本がいいな」
(主に魔道具のね!)
呆れた顔のユージア。本は楽しいのですよ?
難しい書き方だったり、内容が固すぎてもっと簡単に書いたら良いのに。と、思うようなものもあるけど『この著者はそう感じた、そう考えた』そう思いながら読むと、本当に楽しい。
参考書や学術書ですら、ミステリー小説のようにすらすらと謎を解き明かしながら楽しんで読んでいける。
その著者には当たり前の行動や考えすら、読者には新発見だったりする事も多々ある。
それは本当に重要な事実というよりは雑学だったり、どうでも良いような小技的なものがほとんどだったりもするわけだけれど、そうやって楽しんで頭に入れたものは、いつか必要になったときに、ヒントのようにすんなりと頭の引き出しから出てきてくれる。
「ふふっ……盛り上がってるところで申し訳ないが、そろそろお暇させてもらうよ」
公爵家のライブラリにはどんな本が詰まっているのだろうかと、思いを馳せ、にやにやしそうになった所で、ルークの声で現実へと引き戻された。
お礼!ちゃんとお礼しなきゃ!
魔導学園に飛ばされたのは、どう見ても私のトラブルに巻き込まれた状態なのだから!
……まぁルークがそこの卒業生だったとか、シシリーの同級生だったとかそういう関係があったにせよ、周囲から見れば突然のトラブル、しかも私が起こした、事になるのかっ!?……巻き込まれたに過ぎない。
「ルーク、様……脱出まで、ありがとうございました」
お礼だもの、ちゃんと言わなきゃねって…でも言葉が詰まってしまった。
今は噛んだりしないはずなのになぁ……。
「何を今更……よほど公式な…そうだな、式典等以外では、キミたちも呼び方は今まで通り、ルークでいい」
「ありがとう」
良いって言われても、それでもしょんぼりの方向へと傾いていく私の表情は止められなくて。
これは、悲しいっていう感情なのかな?それとも寂しい?自分でもよく分からずに、でも制御もできなくて俯いてしまう。
「セシリア?」
「ホッとしたら、なんか寂しいなって…」
お見送りをしようとついて行った先、メイドからローブを受け取り袖を通すルークの背を見ていると、さらに寂しくなる。
どうしたの?とユージアが覗き込んでくる。
俯いてもユージアには誤魔化しようがないね。
その身長差だと見上げたら、私の表情丸見えだもんね。
なんか悔しくなって、ユージアを問答無用で抱き上げる。これなら見えまい!
そんな動作の間にも視界が歪み始める。
「……セシリア、敬語とか苦手だもんね。普通にお話ができなくちゃったのが悲しかったんでしょ?」
カイルザークの声にこくりと頷く。
うん。多分そう。そう思う。そう思うことにするっ!
カイルザークも同じように感じたのかな?……そう思ったら余計に涙が決壊しそうになってしまった。
必死に泣くの堪えてるから、聞き返す事ができません!
きっと今、凄い変顔してると思うけど、号泣になるよりマシだと思うことにした。
父様とルークが馬車の入り口で、見送りの言葉ついでに何か内緒話をしているように見えるのを、涙を堪えるための変顔(!)のまま眺めていると、馬車のドアが閉められ、出発して行く。
「なるほどね……別に良いんじゃないかしら?まだ子供なんだから、そんなこと気にしなくても。本人も良いって言ってるみたいだし」
「はい……」
ロータリーのようになっている前庭を抜けて、真っ直ぐ正門へと抜けて行く馬車が、どんどん小さく、遠ざかっていくのを見送りつつ、母様が優しく背をぽんぽんとさすってくれた。
我慢していた涙が、こぼれてしまった。
「セシーがそう思えるほどに、怖い思いをせずに過ごせていたなら、良かったよ」
「……楽しかった、です」
「あらあら……」
馬車のそばから見送っていた父様までもが、私の頭を優しく撫でるから、完全に涙が止まらなくなってしまった。
降ろしてほしくてもがくユージアをがっしりと抱き締めたまま、号泣してしまった。
ユージア、ごめん。
泣いてるのに気づいたのか、その後からは静かに抱かれていてくれたけど。
でも、泣いて気付いたよ。
寂しかったんだ。
思いっきり置いていかれてしまったことに気付いてしまったから。
(私は、ルークの隣に居たかったんだ。ずっと……対等でいたかった)
シシリーの恋愛感情は、すごく鈍かったから、ルークの事を実際どう思っていたのかなんて、その時にしっかり考えて悩まなくちゃわからない事だったのだろうけど、それ以外の気持ちでは『──ただ、隣に居たかった』
先に置いて逝ってしまったのは私だけれど、またいつか──隣に並んで歩ける日が来ますように。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる