167 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
167、side カイルザーク。その2
しおりを挟むそんなこんなで、なんだかんだ言いつつも、シシリーはあの暴走精霊達にフォローをしてもらっていたはずだ。懐かしい。
なにせ、そこまで繊細な魔力操作の必要の無いはずの初級魔道具作成の回路生成ですら、魔力操作のフォローをしてくれる杖や、精霊のフォローなしで行うと、失敗を連発どころか、アイテム自体を爆散させるという大惨事を繰り返していたから。
(セシリアは、コントロールがちゃんと出来るようになると良いね)
そう思うと同時に、シシリーの大失敗…魔道具の爆散の風景が次々と浮かび上がり、自然と笑みがこみ上げてくる。
この子息であれば、威力の増加も魔力操作のフォローも……魔術師団に所属することが決まっていると聞いたので、きっと役に立てるだろう。
「応じてくれる精霊との相性にもよりますが……セグシュ…兄さまは魔法を使うお仕事みたいだから……精霊がいた方が良いと思います」
「それでも凄いや!どんな精霊でも大歓迎だよ!」
い、いや、相性が悪いと、掌サイズの精霊すら使役できないからね?
相性は本当に大事だから、何度も精霊の現れやすい場へ通って、本当に仲良くなれたと思える精霊とのみ、契約を結ばなければならない。
逆に言えば、精霊の格・本人の魔力レベルはとても低くても、精霊との関係が良好であれば、それだけで優秀な相棒となる。
……実際、お世話になっていた鍛冶屋の主人が、掌サイズの火蜥蜴と良好な関係を築いていた。
当初、精霊へお願いしていたフォローは、武器の加工時の魔力補助だけだったはずが、気づけば炉の火加減、温度調整に始まり、買い入れる鉱石の善し悪しや、冒険者へ武器のメンテナンス時期のアドバイスまでするようになったと、嬉しそうに話していた。
とても小さな火蜥蜴で、本来、その格であれば主人以外との意思の疎通は、知能が低くて人語が使えない場合が多く、困難なはずなのに。
「私は……?私もできるのだろうか?」
不意に頭上からかかった声に、びくりと振り返ると、公爵までもが目を輝かせて期待の眼差しをこちらへ向けていた。
公爵はとても優秀な魔術師だと方々からの噂から拾うことができていたのだけど……まさか精霊のフォロー無しだったとは。
(まぁ…それでも魔術師なら……と、普段なら思う。実力があるのなら法師や導師は目指さないのか?と聞いてしまうところなのだけど。ただ、そもそもこの国の騎士団内の魔力を司る部門の名称が『魔術師団』らしいから。私の魔術師という名称への認識の違いがあるのかもしれない)
「セシリアの父様は…」
「……カイ…『父様』で良いよ。君たちはもう、『うちの子』だといっただろう?もちろんエルも、ユージアもだ」
『父様』という言葉に思わずびくりとしてしまった。
背後にいたエルネストとユージアは嬉しそうに「はい」と返事を返していたが……。
父様……か。
父親像というのが、いまいち私には理解できない。
本当の父様は、見たこともなかったから。
『存在』としては、いたけどね。
生まれたばかりの私の容姿に酷く落胆して、その日のうちに出産直後の身動きすらまともに出来ない母様ごと屋敷を追い出した人だ。
シシリーは物心ついた頃には孤児だったと言っていたから、今度の父様がセシリアにとって良い父親であればいいと思う。
「まぁ…ユージアにはハンスがいるからな、好きに呼ぶと良いよ」
「あれは……親父で良いんですよ……あ、その前に変態ってつけるかも」
「変態オヤジ……ひどい」
エルネストは顔を顰めて、しかし少し俯き加減にふるふると肩が震えだす。
……これは笑いを堪えてるね!うん。
ふん。と鼻を鳴らすようにしているユージアを、公爵…もとい、父様は呆れたように見ている。
「これでも精一杯、譲歩してるからね?」
「オヤジって……あんなに若く見える人に、オヤジ…ぶっ…」
「あの、もうちょっとまともな呼び方を……」
兄様は……あぁ、兄妹多いんだっけ…呼び間違えないように『セグシュ兄様』って呼ぶことにしよう…。
セグシュ兄様は、ルークの呼び方を訂正をさせようとして、途中で吹き出してしまっていた。
一緒に、必死に笑いを堪えながらエルネストも同じくフォローしようとしつつ、セグシュ兄様の笑いに、言葉が詰まってしまっていた。
喋ったら、きっと笑いの我慢が崩壊してしまいそうな雰囲気だ。
ま、エルフは長命だからね。
実年齢を知れば、実際オヤジ呼びでも良いのかも知れないけど、外見だけで言うのならセグシュ兄様より少し上くらいに見えてしまう。
それでオヤジ呼びというのは微妙なんだと思う……。
個人的には…ずっとシシリー一筋だったルークに実子がいること自体が驚きなのだけど。
番でも見つけたのかな?
息子本人には嫌われてるけど、その息子を守るためにかなり暗躍しているようだし、ルークなりにはユージアを大切にはしていると思うんだけどね。
「ユージア、譲歩するなら方向を間違えてるよ。そういう時は大きな声で『パパ!』って呼んであげたら、きっと全力で喜ぶよ!」
「「パ……」」
「それ、全力で命の危険を感じるよ……?」
「本当の姿で」と言いかけてやめた。
流石にそれは私の命も危険な気がした。
ユージアは幼少期に遭った行方不明のトラブルが原因で心の成長が止まってるとはいえ、実際の年齢は50歳を超えていると聞いた。
エルフで50歳といえば、もう、立派に独り立ちしている年齢だ。
周囲からの扱いも、まだまだ若輩ではあるけど成人だし、何か有事があれば戦力にもなるのだ。
……ユージアのどこか怯える声と、我慢の限界を超えたのか、爆笑中のエルネストとセグシュ兄様。
そして、遠い目になりかけている父様が軽く息を吐く……ため息だよね、それ。
「……ま、まぁ…クロウディアの事も『母様』と呼んでやると、喜ぶよ」
「「「はい!」」」
これは異議無し。
私たちの返事に、嬉しそうににっこりと微笑むセシリアとよく似た大聖女……私の、新しい母様。
大聖女と呼ばれるくらいだし、現状のこの私やエルネストへの待遇を考えても、慈悲深いのであろう。
……少なくとも私の本当の母様よりは、よく笑う人のようだし。
「では、父様!父様も火と風の精霊と契約できると思います。機会があったら、交渉してみてください」
「機会か……そうだな、ハンスにでも聞いてみるかな」
「やっぱり、精霊だとハンス先生か……うはぁ…」
明日が楽しみだ。と自分の同僚であるルークに、登城早々に精霊について聞きに行きそうな父様とは対照的に、ハンスと聞くとあからさまにイヤな顔をするセグシュ兄様。
先生と呼ぶくらいだから師事していた、もしくは現在も師事しているのだろうが……どんな指導を?
これからルークの指導を受ける身としては、不安材料山盛りでしかないのだが。
「ねぇねぇ、私は?私もできるのかしら?」
今のルークはどんな人物像なのかと聞こうとしたところで、今までニコニコと優しげに微笑んでいた母様が、父様の後ろから身を乗り出すようにして聞いてきた。
今までの会話や行動から、おっとりとした雰囲気に見えていたのだけど、今の母様は先ほどのセグシュ兄様そっくりの表情で、目をキラキラと輝かせて期待の眼差しで私を見つめている。
流石に親子なんだなと…そういえば『冒険者になる!』とか『お姫様っぽいでしょ?!』と、はしゃいでいたセシリアとも面影が重なって、思わず笑ってしまう。
0
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる