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はじまりはじまり。小さな冒険?
168、side カイルザーク。その3
しおりを挟む「母様…は光か、風……風は契約とは違うけど、ルークの風の乙女の手が空いていれば、呼べば手伝ってくれるきがします。光は契約次第かも」
「あらあらあら……風の乙女ね。あの子可愛いのよね~嬉しいわ!」
大きく目を見開くと、とても嬉しそうに笑顔がこぼれ始める母様。
まるでおもちゃをプレゼントされた時の、子供のような無邪気な笑みだった。
うん、母様の場合……きっとルークの風の乙女が手伝いに行く気がするから……性格も趣味もバッチリ合いそうだよ。
何か似たような雰囲気してるし。
公爵というのは、その夫婦のどちらかが、元王族だ。
ガレット公爵家ではどうやら、母親が元王族なのだろう。
……この国の守護龍である、風の龍の強い加護が見えた。
龍の加護を持つ相手に対して、特に同じ属性を持つ精霊はとても好意的だ。
契約までできるかは、相性次第としか言いようがないが、お手伝いをお願いする程度であれば、好意を持って受けてくれる。
「ちなみにエルも出来るからねっ!」
私を見て、きょとんとしているエルネスト。
その瞳がみるみるうちに見開かれ、嬉しそうに目が輝きだす。
……獣人だって、精霊と契約できるんだからね?
そうそう、玄関でセシリアが自室へ戻るために先に別れた後、雑談をしつつ各々の部屋へ向かい始めるも、話に夢中になりすぎて、実はまだ玄関フロア内にいた。
このお屋敷の構造としては、1階部分がサロンや正餐室、ギャラリー等、来客が出入りする可能性のある施設や部屋が集められていて、2階部分にプライベートな部屋が集められている。
その一つ一つの部屋が想像以上に広く、玄関フロアや廊下といっても、そこかしこに本や美術品を飾る棚やスペースがあったり、布張りのおしゃれなテーブルセットが置かれていたりする。
ちょっとした美術館のようだけど、廊下は廊下、との事だった。
「僕は、水……かな?」
やっと、玄関フロアから階段のある部屋へ入りかけたところで、控え目に、しかし思いっきり期待のこもった声でエルネストが聞いてきた。
たしか、エルネストは水が高相性だったと聞いている。
でも、性格なのか性質なのか……風も同じくらいに相性が良く見えた。
「水だね、ユージアにくっついてる水の乙女程じゃないけど、そこそこ格の高い子が来てくれると思うよ?……あと、風も…」
「いいっ!風は要らないっ!!」
話を遮る勢いで、風は拒否された。
いや……うん、やたらと怖がってるけど、エルネストは風と相性すごく良いんだよなぁ。
エルネスト本人が望んでいる水と同じくらい、相性が良く見える。
魔法の相性としては水のみが高レベルで相性が測定されたようだけど、潜在的に風も…確実に持っている。
『要らないなんて言わないでほしいわ……精霊って案外、地獄耳なのよ?うふふふっ』
「…っ?!……でたっ!」
鈴の転がる様な可愛らしい少女の声が響く。
気がつけば目の前にふわりと浮かび上がるようにして白いレースのワンピースを身につけた、風の乙女がカーテシーをしていた。
私の隣に来ていたはずのエルネストは、瞬で少し前方にいた父様と母様の影へと逃げ込んでいた。
「エルって…どうしてそんなに風の乙女を怖がるの?」
「怖いんだよっ!」
『こんなに好いてますのに。わたくしの片想いですわ…悲しい』
風の乙女はエルネストを見つめると、大仰な仕草で、悲しそうにしている。
ちなみに、ユージアも風の乙女の声が聞こえた瞬間に、エルネストと同じく、父様と母様の背後に逃げ込んでいた。
良い反応すぎてじわじわと笑いがこみ上げる。
「僕は……風の乙女よりその飼い主の方が怖いけどね」
「それは同感するよ……」
あまりの2人の反応の速さに一瞬びっくりしていたセグシュ兄様、思わず本音が出たのか私の意見に同意した。
……今の言葉、風の乙女の前で言うって事は、確実にルークに伝わると思うけど…いいのかな?
知らない方が幸せそうなので、あえて言わないでおこうと思いつつも、必死に押さえ込んでいるにもかかわらず、じわじわと笑いがこみ上げてきてしまう。
『宰相、団らん中失礼しますわ。あまりよろしくないお知らせですの』
「あ、あぁ、ありがとう」
ふわりと、風に乗るようにして幾つかの封書が、風の乙女より手渡される。
父様が内容を確認し始めると、途端に表情が暗いものへと変わる。
……眉間にしわ、どころのレベルの話では無いらしい。
『その件につきまして、公爵邸の警備レベルを上げるために水の乙女とわたくし、風の乙女そしてセシリア嬢のルナフレアが邸内に潜む事をお許しくださいませ』
「あぁ……こちらからも頼む」
封書の内容を知りたいが……父様は公爵、そして国の宰相、国の騎士団……魔術師団の団長とそれぞれの役職からの守秘義務がある。
公爵家への内容であれば聞きたいところだが……。
じーっと見つめていると、子供たちを見渡すようにした後、軽く首を横に振った。
……宰相、もしくは騎士団としての内容だったようだ。
流石に聞けないね。
ただ、屋敷の警護という意味であれば、セシリアやエルネスト、ユージアが関係する事なのだろうから、微力だけど警戒くらいはさせてもらおう。
今度こそ、守ると決めた。
風の乙女は父様からの返答を確認し、サインをしてもらった手紙を受け取ると、軽く礼をする。
ふわりと霧散するかのように彼女の存在が薄くなりかけて…そのまま消えるのかと思いきや、何か用事を思い出したかのように、ぱっと姿を戻す。
『あ、そうだ!精霊を探してるのなら、王城の空中庭園にある聖霊樹がオススメよ!魅力的な良い子が揃ってるわ!』
父様とセグシュ兄様、最後にエルネストをじっくりと見渡すと、にこーっと楽しげに満面の笑みを浮かべ、姿を消した。
風の乙女も1000年の間に格が上がったようだ。
元々の彼女はここまで社交的な対応ができる精霊ではなかった。
……そう、精霊が契約を交わすのには、精霊自身にもメリットがある。
自身で魔力を集めていく他に、契約主からも魔力を分けてもらえるから、成長が早い。
契約主についてまわるので社会経験も出来ることから、自身が消滅してしまうような危険な場所へと知らずに近づいてしまうというリスクも避けることが出来る。
『契約』や『使役』という表現こそ使うけれど、実際はお互いを高めあえる良きパートナーとなってくれる。だから、相性がとても重要なのだ。
……にしても今の言い方は。
「なにその、華街の客引きみたいな言い方……」
あまりにも俗っぽい言い方に呆れて、思わず考えが言葉として出てしまった。
おっと、失言…と思った時には、時すでに遅く、父様と母様そしてセグシュ兄様までもが、びっくりした顔で私を見ていた。
……華街なんて幼児が知っている言葉ではないし、知っていて良い言葉でもない。
「華街って……」
「そもそも客引きって…」
現に、セグシュ兄様は恥ずかしそうに視線を逸らされてしまったし。
ユージアまで父様と母様に隠れつつ、呆れた顔をしている。
身体だけ退行した私と違って、ユージアは中身が3歳児のくせに……あの表情からするに華街を知っているようだ。
話に巻き込もうと次の言葉を発しようとしたところで、母様に頭を撫でられた。
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小説家になろう様でも連載中です。
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よろしくお願い致します( . .)"
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