私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
177 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

177、書けない。

しおりを挟む



応接のソファーに移動して、宿題の続きを始める私と、ソファーに座ったまま顔をしかめて一点を睨みつけるようにしたまま微動だにしないカイルザーク。


「あ、面白いね。僕のと練習する文字が逆なんだね」

「うん、こだいごはよめるけど……こっちがよめない……」

「……」


ユージアは不思議そうな顔で、ノートを覗き込んでいる。
普通に読める文字が読めなくて、読めないはずの文字を元に言葉を解読しながら書き入れて練習する私の姿が、本当に不思議でしょうがないらしい。


「ねぇ…セシリア?カイが怖いんだけど」

「ねおき、すごいわるいから、ていうか、たぶんまだねてる」

「……」

「あっ……本当だ……えー、座ったまま寝ちゃうの……」


ユージアは睨み付けるように渋い顔のまま、微動だにしないカイルザークの鼻先に手をひらひらとかざすも全く反応しないことに、びっくり、というか呆れてるよね?
ジト目のようになりつつ、なるほどな~と頷いた。


「変態仲間は寝起きが悪い。うん共通点もう1つ、みーつけたっ!」

「わたしはわるくないよ?」

「……」

「……寝たら起きないじゃん。誘拐されて運ばれてても熟睡だったじゃないか」

「それ、ふつう、おきるよ?」

「……」


え!なにそれ?と顔を上げると、座ったまま寝ているカイルザークを面白そうに、ユージアが『これこれ!こんな感じだった!』と頰をぷにぷにとつついて遊んでいた。

出しっぱなしのケモ耳とふわふわの尻尾すら、微動だにしていないあたり、完全な熟睡だと思う。
耳は特に意識しなくても音に反応して動いてしまうって、以前聞いたことがあるし。

私も一緒に触りたい衝動に駆られつつも、まずは宿題だ!と必死にペンを動かす。


「いや……実際寝てたし」

「おかしいな……って、カイ!わたしをまくらがわりにしないでっ!おきて!」

「やー……」


ユージアの執拗なほっぺぷにぷに攻撃は、さすがに鬱陶しかったのか、目は閉じたまま顔をしかめると、隣に座っていた私の膝の上を狙うように倒れ込んできた。
膝枕の状態にして、両手を腰に回してしがみついて、お腹に顔をすりすりしてくる。

ふわふわだし可愛いし、モフりたい衝動があるのだけど、今はそんな余裕ある状況じゃ無い!
何とか起こすために、膝から下ろそうとすると逆に全力でしがみつかれてしまった。


「カイは眠り深いなぁ……確実に眠りの深さはセシリアと同じだと思うよ?」

「ここまでひどくないとおもう……」

「いやぁ…同じくらいだって。あははっ」

「エルは……ここにくる前に声をかけたんだけど、もう起きて、着替えも全部終えてたよ?」


え!と、思わず作業の手が止まって顔を上げる。
エルネストってば、めちゃくちゃ寝起きのいい子じゃない!感心しちゃう!

寝起きの良い子供って、必ず決まった時間にぱちりと目を覚ますんだよね。
時計も目覚まし時計も、こちらの世界にはあるけど…あの程度の音じゃ、私は起きられない……。
現状では、セリカに起こしてもらって、着替えをしてもらってるあたりくらいからようやく、意識が戻ってくるような状態だったんだ。


(まぁこれは……昔からだから、これは私の性質ってことで諦めてる)


前世にほんにはびっくりして飛び上がるくらいに、けたたましく鳴る目覚まし時計や、軽くびりっとくる刺激をくれる目覚ましなんかがあったけど、前世の私も……それでも起きれなかった。

あ、旦那や息子が『その目覚まし、本当に効かないの?』と、ふざけて使って、飛び上がって起きたり、強い刺激に目が覚めるどころか痛みに悶えてる姿は見た……。


『どっちも刺激が強すぎて、起きる前に永遠の眠りに落とされるところだった!』


ものすごく不評でした……全く効かないと思ってた目覚ましなのに。


ちなみに、前世にほんでの私は、冬からまさに今の時期……そう、春先は目覚めたとしても、寒さから本当に布団から出れなくて、あっさり2度目して寝坊してた。


(今考えると結構な冷え性でもあったから、それも原因だったんだろうなぁ)


……寝る時に「体調悪い」とか家族にぼやいていた時は、夜中にすごく心配な顔をした旦那に、起こされたことがある。
真夜中なのに、すぐにでも出勤できるように着替えも何も済んで、私の布団の足元には、出勤用の鞄が転がっていて。


(私はむしろ旦那のその姿にびっくりして目が覚めちゃったのだけどね。だって真夜中なのにそんな格好してるから)


目が覚めてみて……状況にびっくり。という事があった。

朝、なかなか起きてこない私を見て、寝る前に体調が悪いと言っていたのを思い出して、ぐっすり眠っているしと、そのまま寝かせておいてくれた旦那。
仕事が終わって帰宅したら、子供達は帰宅してそれぞれ居間で遊んでいたらしいのだけど、私の姿が見えない。


『母さんは?』

『ねてるよー。にいちゃがごはんつくってるから、おてつだいしてゆ!』


で、心配して起こしにきてくれたという。

そう、夜中だと思っていたのは、日没ギリギリの夕方で、寝たばかりどころか丸一日寝過ごしてました。
……実際病気でも何でもなくて、笑われて済んじゃったけど、家事もその日の予定をも、まるっとすっぽかしてしまったので、後からが大惨事でした。

ぶわーっと前世での生活風景が頭に浮かんできて、思わずふふっと笑ってしまう。
懐かしいなぁ。

……いろいろと大惨事だったけど、私が動けなくても甘えん坊の長男がしっかりと下の子達の面倒を見つつ、ご飯を準備してくれていたことにびっくりしたという、誤算的な大発見もあったし、下のちびっ子2人組も、夕方から寝るまでは体力の限界を超えてハイテンションな感じになっているので、なかなか言う事を聞いてくれないところが、その日はしっかり長男に協力して良い子にしていた。

微妙に反抗期中の長男、家で料理なんかした事なかったのにね。
危なっかしい手つきで頑張ってつくってくれたご飯は、とても美味しかった。

親が心配している以上に、子供って案外しっかりしてるんだなって、変な感心もしたりした。

まぁ、子供達がしっかりせざるを得ない、そんな環境にならないようには、頑張ったつもりだったんだけどね。
しっかりするのは独り立ちしてからで良いんだもの。

そう思いつつ、ノートへの書き込みを続けていく。
視界の端でユージアがカイルザークの頬をぷにぷにとつついたり、ケモ耳を不思議そうにさわさわしつつも、話を続ける。


「起きたらカイがいないって心配してたくらいだし?」

「エルいいこ……」

「いいこ……?ん…いいこ…」


私の声に続いて、木霊のようにむにゃむにゃとカイルザークがいいこ、と呟く。
呟いた後、夢の中で何か食べていたのか、口がもちゅもちゅと動き、顔を突いて遊んでいたユージアがふるふると震えだす。


「カイは……どんなゆめ、みてるんだろうね?なんかおいしそう」

「ぶっ…!カイ、寝ぼけすぎっ!そろそろ起きようよ~」

「や……」

「じが…かけない……ゆらさないでぇぇ」


私の膝で膝枕状態のカイルザークを、ユージアが揺すって起こそうとすると、私も揺れるので、正直作業ができない。
しかも、ユージアの手を払いたいみたいで、カイルザークの手が鼻先を何度もかすめていく。


「おっと…ごめん」

「…ん~…」

「カイもはなれて…!」


これじゃあ勉強できないでしょっ!と流石に怒りかけたところで、部屋のドアをノックする音が耳に入り、ドアが開くと、カートを押したセリカが入室してくるのが見えた。


「おはようございます。セシリア様。そろそろお時間ですよ」

「セリカおはよう」


ユージアはソファーから立ち上がると、セリカにペコリと礼をして、カイを私の膝から引き剥がして小脇に抱え上げようと声をかける。


「さて、カイ行くよ。着替えてご飯だよ」

「やぁー……」


流石に寝ぼけている状況では抵抗も難しかったのか、あっさりとユージアの小脇に抱えられて、カイルザークが運び出されていく。
ユージアの遠ざかっていく背中と、傍に見える、ゆらゆらと完全に脱力して揺れているカイルザークの足。

あれはまた寝直したな……がんばれ、ユージア!
徹夜明けのカイルザークは手強いよ?

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...