私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

178、セリカ。

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ユージアとカイルザークの退室を確認してから、衝立を広げ、着替えをする準備を始めてくれるセリカ。

ここのところ、誘拐事件やら何やらバタバタしていて、全く周囲を気にする余裕がなかったのだけど……いや、そうじゃないな。

転生していたということに気づいてから、気にかける情報の種類が変わったんだ。
それまで、毎日、着替え中にセリカが話しかけてくれている話も、全くどうでもいい内容だと思っていて…聞いていても右から左に流れていた。
ところが、ここ最近、その内容がとても興味深いものだということに気づいた、ってだけだ。

毎日、そういう内容を考えて話しかけてくれていたセリカに感謝なんだけど、こういう小さな配慮って、意外に気づかないところにたくさんあった事に、最近気づきまくって愕然としている。

今日は、植物のお話だった。

一気に春めいてきて、王都周辺の果樹園の果樹の花が一斉に開花を始めたそうだ。
花が咲くような時期になると小春日和といった感じで、1週間から2週間ほどは雨も少なくて暖かくて過ごしやすい日々が続いた後に、1日おきで雨が降る時期になる。
それも2週間ほどで終わると、気づけば周囲は花と緑でいっぱいになっている。


前世にほんだと桜が終わりかけの時期だなぁ……)


そろそろ筍が恋しい。
……桜が散り始める辺りから、ちょうど筍がにょっきり生えてくるんですよ!

メアリローサは前世にほんの気候に当てはめると、関東よりは少し東北よりの気候をしていて、冬はしっかりと降雪がある。
たしか、降雪のある地域は竹林が無かったような……。


(あ、でも、メアリローサの南の方は、雪が降らないらしいから、もしかしたら筍、あるかもしれない!)


筍が終わったら、ブルーベリーとさくらんぼの木に、小鳥除けの網をかけて……次は梅の実の収穫でしょう?
それが終わったらさくらんぼの収穫。
次はブルーベリーの収穫。

春になると花も綺麗だけど、気候的にも美味しい果物が盛り沢山なんだよね!
思わずにやにやしてしまう。

……にやにやしているうちに、着替えは終わっていて、髪もハーフアップのようにピンは使わずにゴムとリボンだけでまとめられていた。
セリカの手際、凄いわ。


「さぁ、出来上がりましたよ!」と、笑顔で私の座る鏡台の背後に立ち、大きめの鏡を持って、私にも自分の髪型が見えるようにしてくれている。
バッチリです!

今まではこういうことはしてくれて無かったのだけど、どうやら私がルナに魔法で大きく成長させられてしまった日から、母様の専属メイドさんについて、お姉さん用のお世話の仕方を教わってきたらしい。
その練習も兼ねてるみたいなんだけど、すでに完璧だと思います!

ぎこちなさも違和感も感じることなく、当たり前のように流れる所作でこなされていく準備……うん、なんか美容室にいるような気分って感じかな?

そんな完璧な動作でも『練習ですから』と、にこりと言われてしまうと、無意識に作業に目がいってしまうのだけど、本当に気になるような点も全くなくて、あっという間に終了してしまった。


「……それにしても、あのカイルザークという子、寝てる時は可愛いのに。起きてる時の言動は…かなり大人びてますね」


作業完了してからのセリカの一言に、思わず笑ってしまった。
前世にほんより子供達の精神的な自立が早いなと思っていたけど、それでもやっぱりカイルザークの言動や考えは大人びて見えるレベルなんだなと。

私も「変わってる」って言われないように気をつけないとね!


さて、身支度のお手伝い、ありがとう!と礼を言いつつ、その視界の先ではすでにセリカは次の作業へと移っていた。

応接机に広げられた私たちの宿題をきれいに片付けてくれている。
片付けている、つまり、食事後はそのまま登城してしまうので、この部屋に戻ってきて宿題の続きをすることができないのだ。


「しゅくだい、おわらなかった……」

「初めてで、ここまでできれば上出来ですよ!」


しょんぼりと思わず呟いてしまった声に、セリカはにこりと笑顔で褒めてくれた。
上出来…上出来だと良いんだけどなぁ。
確かに頭ではわかってるはずのペンの持ち方ですら、難しい状況ではあったけど……通に使えるはずのペンが使えないことにショックを受けた。

どう使えないって、まず、ペンを今まで使っていたように握れない。
なんとか握っても、思うように腕も手も手首も動かなくて、しかも力も思うように入れられず、ノートには思いっきり不本意な……ミミズののたくった文字が大量発生していた。

そんなノートを片付けつつ、文字を見ては自分の事のように、嬉しそうに褒めてくれるセリカ。


「ペン、上手に使えてますね。これが読めるようになれば、絵本もご自分で読めるようになっちゃいますからね!楽しみですね」

「……えほんだけ?」

「そうですねぇ……大人向けのご本は、まだ難しいかと。あとでお部屋に簡単な絵本をお持ちしておきましょうか?」


あれ?あれあれ?
そうか、ある程度の本なら、セリカに頼めば持ってきてもらえるじゃん!ってことに今更ながら気付く。


(……これって最初から、夜中にこっそりライブラリに突撃する必要なかったんじゃ…)


なんとも簡単なことに気づいてしまって、まさらながら脱力してしまった。
でも、これで、ライブラリに行けなくても、本の入手方法が見つかったのでひとまずはよしとしよう!


「おとなのまほうのごほんも、みてみたいの」

「かしこまりました。まずは初級編……探してみますね」


……初級編って大人用なのか?!というツッコミはしないでおく。
メアリローサここの魔法学園の初等科あたりの教本が来そうで、それはそれで楽しみだ。


「さぁ、お食事に遅れてしまいますから…移動しましょうね」

「はぁい!」


そうそう、今日のドレスは白い薄手のワンピースの上に、水色のアンダードレスを着て、更に飾りの可愛らしい白いエプロンをつける…なんかアリスのような感じだった。
後ろでエプロンのリボンが大きく結わかれている。

登城なのにフォーマルっぽく凄いひらひら!という感じではなくても良いのかな?と思ったのだけど、今日からはこういう、アリスというか小さなメイドさんのような、装飾少なめのドレスというよりはワンピース寄りの服になるそうだ。

お城での勉強会で、魔法や実技訓練の時に、動けなくては可哀想だから、という配慮かららしい。
激しい動き……出来るかな?

あ、まぁ、おばあちゃん的な身のこなし(!)が染みついちゃってるから……動く前から、無理!って頭で思っちゃうことが多いんだ。
頑張って勘を取り戻していかないとダメかも。

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