189 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
189、side エルネスト。珍しい。
しおりを挟む荷馬車は王都へ到着すると、小さな子供たちを商館のようなところでおろして行った。
残ったのはボクとレイとセシリア。
ただこの3人も、次に停車した場所で降ろされた。
そういえば、王都へと到着して荷馬車から降ろされる直前に、レイに強く頬を叩かれたんだった。
何事かと思ったら、髪と瞳の色を変えられていた。
『うん、エルも僕も王都では珍しい髪色だからね。少し地味な方がいいと思ったんだ。セシリアも念のため、ね?』
自分の髪をつんつんと引っ張りながら、楽しげに笑って説明してくれた、あの魔法はいつの間にかに消えていたけれど。
どうやら大人達は『忌み子』では無く『獣人という種族』でも無くて、『珍しい頭髪』に目を引かれていたのだという事に気づいた。
耳やしっぽは隠せても、頭髪は変えようがない。
(人族はカラフルな頭髪だったから、珍しい色があるなんて知らなかったよ)
ちなみにボクたちが降ろされたのは教会で、そこで一悶着あって……気付けばボクは公爵家へと引き取られる事になっていた。
(里の皆を見返したい。そんなつもりは無い、無かったけど……養母、今の状況なら少しは安心できますか?)
……その公爵家は改装中だそうで、王宮に間借りをしているとかで、王宮へと移動する間に、聞こえてきた情報からわかったのは、セシリアは公爵家の末娘……公爵令嬢と呼ばれる身分の子だった。
レイはと言えば……王子の姿と名を無断使用していた大きな猫の姿をした、ゼンという名の霊獣?のようだった。
彼は濃い魔力を纏った…怒りのオーラもたっぷり纏った、青い髪の魔術師に引きずられるようにして、帰っていった。
(あの魔術師……騎士団の魔術師のローブを着けていたけど、人間じゃ無い…絶対に人間じゃ無い。そう思って警戒と共に、濃すぎる魔力に怯えていたのだけれど……)
ちなみにレイのような金髪はメアリローサの人族では王家以外にはあまりいない髪色なのだそうだ。
それもあってレイ…の姿を無断使用していたゼンにあの魔術師は激怒していたようだった。
そして、ボクの髪色もそれと同じくらいに珍しい髪色なのだと言われた。
満面の笑みを浮かべた風の乙女に。
しかも、風呂場で。
……思い出すだけでもゾッとする。
******
教会からそれぞれ保護されていったあと、ボクはなぜか王宮の一室へと案内された。
そしてそのまま湯気が広がる石造りの部屋に案内されると、あっという間に服を脱がされてしまった。
「だっ…大丈夫…ですっ!」
「はい、では、お手伝いいたしますね」
二人の年配の女性……メイドが笑顔でじりじりと近づいてくる。
「一人で…でき、ますっ!」
「はい、では、こちらへどうぞ」
(……話を、聞けっ!)
手にはタオルにブラシにハサミに…石鹸、石鹸、石鹸……。
石鹸だけで何種類あるんだろう?
楽しげに笑顔でじりじりと…距離を詰められる。
「御髪も整えてさせて戴きますね」
「…あっ!…」
触れられそうになった所で、身を低くして躱して逃げようとすると、不意に首を後ろから大きく掴まれて……力が抜けて動けなくなる。
掴んだ腕の主を見上げると、2人のメイドのうちの比較的若い方がにこりと微笑うと、そのまま抱え上げられてしまった。
「ダメですよ?……それと。獣人がご自分だけだとは、思わないでくださいませね」
予想外に強い力で掴まれて、必死の抵抗すら叶わず……メイドの言葉に驚き顔を見上げると、瞳の色がくるりと反転するかのように黒い瞳孔が大きく開き、緑色に光った。
……あの目は猫系の獣人の特徴だ。
「……一人で、できるので……一人に」
『あらあら…久しぶりに見たわね。なんて可愛らしいのかしら!』
水浴びなら一人でできる。身体だって一人で綺麗にできるよ!そう必死に説得しようと思った所で、今度は鈴の音のような女の子の声が浴場内に響いた。
「だ、だれっ?!」
『初めまして!風の乙女と呼ばれているわ』
ふわりと笑みとともにスカートを広げるように優雅な礼をすると、人差し指をくるくると回す。
その指を見てしまった直後、全身が脱力した。
力が入らなくなって、指を動かす事すらだるい、そんな感じになった。
「えっ…?ちょ…と……動けないんだけどっ!」
「ありがとうございます」
猫系の獣人のメイドはボクを抱えたまま、風の乙女に礼をすると、いつの間に準備したのか、湯が張られた浅めの湯船に入れられてしまった。
……里で養母が赤ん坊の身体を洗う時にやっていたのと同じに、首を支えられて身体を洗われていく。
ボクは赤ん坊じゃ無いのに……。
『うん、しっかり洗ってあげてね……宰相の末娘は本当に珍しいものばかり集めてきたのね』
宰相の末娘……セシリアのことだ。
集めてたのはあのシスターだろう…そう思ったが、そんなことより何より……。
この状況は、何なんだ?!
「ちょっ…えぇぇ……動けない…」
「すぐ終わりますからね」
いろいろな意味で、終わった気がした。
メイド達は仕事だからしょうがないと思えば……ここは王宮だし、何とか我慢する。
しかし、後から乱入してきてボクの身体の自由を奪い、なおかつそのまま風呂を堂々と覗いてるあの女の子は何者なのかと泣きそうになっていると、耳のそばで小さく「あれは精霊ですよ」とメイドがささやいた。
『そんなに恥ずかしがることでも無いんじゃないの?幼生は大人に洗ってもらうものなのでしょう?』
「ひ…一人で出来るようになれば、一人だよっ!」
『そうなの?』
精霊……風の乙女は不思議そうな顔で小首を傾げながら、メイドに声をかけると、ボクを洗いながらメイドは軽く首を横に振った。
その動作だけで、ボクは軽く絶望をしたわけだけど。
0
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる