私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
190 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

190、side エルネスト。立場。

しおりを挟む



「……平民であれば、それが子の成長の証ともなりますが。貴族の場合は、身嗜みを重視致しますので、粗相の無いように大人であってもお手伝いが入るのが基本となりますね」


首から肩まわりを強めに掴まれると、力が抜ける……。
猫系の獣人の子供も同じなんだろうか?メイドは手慣れた動作で、ボクを抱え込むように身体を洗い始める。


(手伝いにしてもこれは完全に、赤ん坊の洗い方だろう!)


やめて欲しくて抵抗しようにも風の乙女シルヴェストルによって四肢の力が疲れ切った状態のように力を抜かれていて、かろうじて首が動かせる程度だった。
そんな様子をにこにこしながら眺めてる風の乙女シルヴェストル


『ほら、これからは・・・・・当たり前らしいわよ?』

「でもっ…!この洗い方はっ…」

『……そんなに恥ずかしいなら、恥ずかしく思えなければいいのよね?……ちょっと意識も奪ねむっとく?』

「それはやめてっ!」


いたずらっぽく笑う風の乙女シルヴェストルが指をまたくるくると回し始めたのを見て、に思わず悲鳴のような声が出る。
妖精や精霊は、時に相手にとって残酷な手段ですら、親切なつもりで行動してしまう。よく聞くけど……本当らしい。


『それにしても、綺麗ねぇ…ね、しっかり磨き上げてね!その毛並み、とても珍しいのよ?』

「かしこまりました」


風の乙女シルヴェストルは空中に見えない椅子があるかのように、ふわりと座っている体勢になると、両足をぱたぱたと揺らしながらこちらを見ていた。


「えっと……」

『なぁに?』

「珍しいって?」

『あなたの種族のその色は、とても珍しいわよ?……そうねぇ、見るのは1000年ぶりかしら』

「1000年って…」


そりゃ『忌み子』だからな。
そんなぽんぽん生まれてたら、困る。
困るけど…1000年ってすらっと言えるこの精霊の寿命の長さにも、唖然とした。
長命な精霊ほど、魔力も強く、格が高い。
……怒らせたら、怖い。

ぞわりと寒気を感じた所で、風の乙女シルヴェストルがうっとりとした口調で呟いた。


『……成長が楽しみだわ…ふふふっ』

「どこ見て言ってるんだよっ!?」


……この後、のぼせてぐったりとするまで、違うな…メイド達が満足するまで、身体を洗って、湯船に入って…を繰り返した。

抵抗する気力だけはあったのだけど、身体の脱力はなかなか治らなくて、ほぼされるがままに汚れどころか体力までそのまま洗い流されたようだった。
ふらふらと湯船から出ると、流れ作業のように着替えまでさせられてしまった。
その着替えもかなり上等なものを着せられて、堅苦しい。

そういえば、いつの間にかに風の乙女シルヴェストルの姿が消えてたんだよな……。

着替えが終わるとすぐ、部屋に案内された。
のぼせていて暑かったので、すぐに脱ごうとしたら「これから来客があるのでそのままで!」と怒られてしまった。
その来客の後には、王家との晩餐の予定だと言われて、そのためのスーツまで用意されていた。


(何度着替えるんだよ……)


晩餐までお使いください。と、案内された部屋…部屋だよな?里のどの家よりも広い部屋で、布張りの高そうな椅子とテーブルのセットには、焼き菓子が置かれていて、部屋の奥の方にはとても立派なベッドが見えた。


(あのベッドの広さだけで、里にあった養母の自宅くらいの広さはあるよな…誰が寝るんだよ…)


贅沢ができることは幸せなことだと知っているが、贅沢すぎるのは……無理だな。
あのベッドで寝れる気がしない。

部屋の出入り口に近いところにさっきのメイド2人が待機していて……何をしているのかと聞くと『この部屋付きのメイド』なので、ここにいるのが仕事なのだと説明された。
何かあれば声をかけてくれと言われたので……1人になりたいと言ったら笑顔で却下された。

来客を待つ以外、やる事もなさそうだし、とりあえず椅子に座るとお願いするまでもなくお茶が出された。
高そうなティーカップに良い香りの紅茶。
本当に自分ですることが何もなくて、目の前にある焼き菓子を食べ始める。
美味しいんだけど……居づらい。

メイドも仕事としてここにいるだけなのだけど、監視されているようでイヤだ。

里を出てから、世界が目まぐるしく変わりすぎて、理解できない。
今も命があるだけマシなのだと言い聞かせるにしても、どうしても理解できない。

のぼせ気味の頭でぼーっと考えても、全く何も案が浮かんでこないばかりか、お菓子の甘さがトドメとなってどんどん眠気が強くなってくる。

こくりと、頭が船を漕いだ感覚があった直後に、ドアをノックする音が聞こえて、メイドに起こされた


「……予定の客が来たから。終わったら寝れるよ」


獣人のメイドの小声が……人には聞き取れない小さな声だったのだけど、耳が拾った。
ドアへと振り向くと、年配のメイドが応対中で、獣人のメイドはテーブルの上の菓子やお茶を引き揚げている所だった。


(……まだ食べてるんだけどなぁ。捨てられてしまうんだろうか?)

「後でこれ包んであげる。今は下げるだけだから、そんな顔しないで?」


くすりと笑う声と、やはり人族には聞こえないほどの獣人メイドの囁きが耳に入ってきた。
少しほっとしていると、年配のメイドとの話が済んだのか、近づいてくる人の姿があった。


「……待たせた、だろうか?」

「いえ…」


振り向くと、魔術師団のローブを纏った黒髪のエルフがいた。
うん、エルフだ……初めて見た。


(本当に耳が……人族と違って尖ってるんだな。色は一緒なのに)


教会から助けてくれた人たちと同じデザインのローブだった。
……目は合っているのに合っていないような、薄い表情でぼそぼそと一方的に喋る感じだった。

この人に魔力測定会の日からの事を細やかに聞かれた。
里の位置や規模、測定会が開催された街の名等々……孤児院ではどんな食べ物が出されたかとか、そういうことまで聞かれた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...