私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

199、目覚める。

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……はっと、急激に頭の中がクリアになった。
ぼんやりどころか、完全に寝ぼけてたっぽいのだけど、何故か周囲は笑い崩れている者とそれを介抱する者、呆れ顔の者とそれに怒りまじりの者と……何やらやばい雰囲気になっていた。

勉強会のはずなのに、父様と守護龍までいるし。
うん、とりあえずスルーだ。全力スルーの方向で。

まずは蹲ったまま変な唸り声をあげるレオンハルト王子の前にちょこんとしゃがみ込むと、様子を伺ってみる。
どうやら笑いの発作が酷くて身動き取れないらしい。

隣にはエルネストがいて、レオンハルト王子の背をさすっていた。


「……おなかしゅいた。レオンおうじ、なにしてるの?」

「笑いすぎて酸欠かな。セシリアがやったんだからね?」


ふん、と息を吐く音と、少し怒ってる感じのカイルザークの声が後ろから聞こえた。
怒ってる感じ…というか怒ってるよね?


「えっと…レオンおうじ、ごめんね?」

「い…いや、いい。あと……呼ぶときはレオンで、いい…くっ…」


くっ…の後に「ぐふっ」とか聞こえてるわけですが、本当に大丈夫なのかしら?
たかが笑いなのだけれど、だんだん心配になってくる。


「ほんとうに、だいじょうぶ?」

「大丈夫…だ」


ちらりと見えたレオンハルト王子の顔……涙目どころか泣いてました。
なんだかもう居た堪れなくたって、本当にごめんねと、背をさすろうとしたところで、エルネストに『しっし!』と手を払うように『あっち行け』のジェスチャーをされてしまった。悲しい。


「セシリア、少し離れてろ。笑わせたやつがそばにいたら、余計酷くなるだろ」

「あ……そういうこと…ごめんね」

「レオン兄さまは、ああなっちゃうと少し時間がかかるんだ。放っておいてあげた方が落ち着けるから、あっち行こう?」


しょんぼりしかけたところでシュトレイユ王子に手を引かれて、少し離れた位置にあるソファーに座っている父様と守護龍のいる所へと向かっていく。


「セシリアって面白いね。レオン兄さまにあんな事をする令嬢を初めて見たよ!

「はじめて……」

「うん、初めて!兄さまの周囲に集まる令嬢っていうのはいっぱいいるんだけどね、みんな目を合わせると逃げちゃんだよ!なんか傷つくよね!」


レオンハルト王子って人気あるんだなぁ……って王子様だもんね。人気あるか。
見初められたら素敵だものね。
お妃さま候補にでもなれたら、家の格だって上がるし、令嬢もその親もなんとかしてお近づきになりたいところなんだろうなぁ。


「レイは、レオンおうじのこと、すき?」

「うん、大好き!」


ぱっとその場で大輪の花が咲いたように、きらきらの笑顔で返事をしてくれたレイ。
お兄ちゃん大好きなんだね。
思わず和んでしまう。


「その、れいじょうも、レオンおうじのことが、きっとすきなのよ。だから…はずかしくてにげちゃうんじゃないかな?」

「そうなのかなぁ……でも、いきなり逃げられちゃうのはイヤな気分だよ」

「そうねぇ。れおんおうじ、かっこいいよね」

「うん!格好良い!」

「しょんな、かっこいいひとにみられたら、はずかしくてにげたくなっちゃったんじゃないかな?」


あぁ、噛んだ。
ていうかレイはずいぶんクリアに喋れてるなと思う。
同じ歳っていう意味ではカイルザークも幼い見た目だけれど、彼は大人から子供に戻った?という感じらしいから、喋りははっきりしていた。

私だけ、どうしてこんなに舌ったらずなんだろう。
頑張ってもっともっと、クリアな喋りができるようにしていかないと!


「じゃあ、恥ずかしいって事にしとくよ……で、セシリアは恥ずかしくないの?」

「はずかしくはならないかな?……とうさまはてれてらっしゃる?」

「照れてません!セシー……寝ぼけていたとはいえ、王子の頬を引っ張っちゃダメだからね?!」


頭を抱えるようにしてうずくまっていた父様が、がばりと顔をあげて私を非難してきた。
その隣では透明感のある青い髪の美少年…女の子と言ってもバレないよなぁ。
そんな男の子……守護龍が、何故か父様を慰めるように肩をぽんぽんと叩いていた。


「お勉強会初日の、セシリア嬢の勇姿を一目見ようと、覗きにきただけなのに。それなのに……セシーだけ寝てるなんて!頑張りどころか…寝顔しか…!」


しょんぼりとした父様の呟きが聞こえてしまった。
父様ごめんなさい……。
頑張って寝てしまいました。
ゼンナーシュタットの背中は天国だったんですよ。

でもまさか、気付いたら昼ごはんの時間だなんて、初日の勉強の記憶が全くないなんて!不覚すぎですよ。
あ、でもね、気づいた?『おとしゃま』じゃなくて『とうさま』ってちゃんと言えたんですよ!えらいでしょ?
……指摘されてないから、気づいてないだろうけどね。


「ご飯何だろうね?……あははっ」

「………」


シュトレイユ王子の渇いた笑いと……カイルザークの呆れ果てた顔。
……この二人の他にユージアが加わったのが3歳児クラスの面々とか、勉強始める前から登校拒否になりそうです…。
しかもなんかカイが厳しいよ……どうしちゃったんだろう?





******





「おや、セシリア、おはよう。午前の講義内容はカイルザークに聞いておくように」


食事を終えて、外へ…まぁ中庭なんだけど、移動中にルークと会った。
ルークもこれから向かう所だったのかな?


「はい…ごめんなしゃい」

「寝ながら登場だもんなぁ……父様が不安がるはずだよね。僕も一緒に行けばよかった」

「……ふっ!」

「あっ!レオン!落ち着いて…!」


べんきょうをおしえてくれる、ルークにも本当に申し訳ない気持ちになってしょんぼりしている私の後ろで、4歳児メンバーは、また笑いの病気に悩まされているようだった……。
こっちもごめんなさい。
でも、レオンハルト王子……素直に笑って欲しいんだけど!
ぐふ…とか、げふっ…とか、怪しすぎるからね?


「……昼からは、王宮内の中庭にある闘技場に集合だ」

「せんとうくんれん?」

「……魔法かな?」

「楽しみだねぇ」


ルークの説明に、俄然やる気を出し始めるカイルザーク。


「そこの|3歳児達は、いきなり物騒だな……」

「……どっちも、お前ら基礎知らないだろ」


レオンハルト王子とエルネストが少し遠い目をしていた。
……レオンハルト王子は笑いすぎからだよね?きっと!エルネストは、気苦労からかな?

そうこう言いつつもみんな、わくわくしながらルークの後をついていく。

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