200 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
200、訓練。
しおりを挟むルークの後を追いつつ、中庭へと面した廊下へ出ると、一気に周囲の景色が視界へ飛び込んでくる。
ここの庭園は今まで王城で見ていた形式の庭園とは少し雰囲気が違っていた。
低木の庭木ではなくて、果樹や、葉色の綺麗な背の高い樹々がアクセントに使われていた。
今はその背の高い樹々たちが満開の時期を迎えていて、迫力もさる事ながら、風に遊ばれながら優しく散る花吹雪がとても見事だった。
梅の花……この時期だと違うかな。
横に強く張ったしなやかな枝一面に、真っ白よりは気持ちだけ桃の色が混じった花を咲かせた樹が、ほのかに甘い香りを漂わせている。
林檎、かな?
前世の自宅の庭に林檎、植えてたなぁ。
「きれい……」
「セシリア、ほら、行くよ!」
思わず見惚れて止まりかけた私の手をカイルザークに引かれる。
それに釣られるように、反対側の手で繋がっていたシュトレイユ王子も一緒に引っ張られていく。
「ねぇ、セシリア。カイはエルの弟だよね?」
「うん、おとうとだね」
「じゃあ、カイはセシリアの弟?兄?」
「う……「弟だよ」」
「カイのほうがお兄ちゃんっぽいのにね」
私の返答より先に、すかさず答えるカイルザークにシュトレイユ王子がにっこりと笑う。
そうだよね、やっぱりそう見えちゃうよねぇ。
ちなみにこっちの暦は、前世のと一緒で、12カ月ある。
歳の数え方もほとんど一緒。
1~3月が早生まれって呼ばれるのも一緒。
獣人は早生まれが多い。
人族と違って恋の季節というのが大体決まっている種族がほとんどで、出産の時期も春と秋が多い。
春一番に生まれてくる子が賢くて優秀に育つという話も聞いたことが……でもこれ、前世でも犬と猫の生まれる時期の話で聞いたことがあるんだよなぁ…。
ペットと一緒に考えてしまうのは獣人に失礼なんだろうけど『春一番の犬や猫は賢い』って。
(もっとも、最近のペットたちであれば、毛柄や体型にバリエーションが豊富だし、どんな仔でも可愛いんだけどね)
私の世代でのペット……猫でも犬でも、ペットという役割の他に、家の番をしてもらうという目的も強かったから、賢い仔が好まれたんだ。
特に私の祖父は猟銃を使っての狩りなんかもしていた人だから、番犬の役割の他にも猟犬としても動ける仔が好まれていた。
(だから、近所で室内飼いされていた小さくて真っ白なマルチーズという犬を初めて見たときは、犬と思えなかったんだよね)
あんなに小さくてふわふわさらさらで……しかも室内で、あの仔は何のお仕事をしている犬なのだろうか?と思わず考えてしまった記憶がある。
あ、そうそう、番犬っていうのもね、泥棒よけが目的じゃないんだよ。
まぁ泥棒よけもあるとは思うけど。
害獣除けっていうのかな?
地域にもよるけど、蛇とか狸や猪とか鹿とか……猿とかが来ないようにするためなんだ。
うちは主に、猪とかイタチとかだったのかな?
(ぶっちゃけ、爺ちゃん自慢の賢い犬がいてくれたおかげで被害がかなったから、話で聞くだけで詳しくは知らないんだけどね)
でも、その仔が亡くなってしまった翌年の春、玄関ドアを開けたら目の前にスズメの巣を狙った蛇の長い胴体がぶら~んと、ぶら下がっていた事があった。
つっかけを履いて、納屋へ道具を取りに玄関から飛び出そうとしていた母は、顔面すれすれでぶらぶらしている蛇の胴に気づき、絶叫していた……。
(……その母の絶叫で昼寝から驚かされて起こされた挙句に『早く処理しといて!!!』とパニック+キレ気味の母に、蛇を裏山へ捨てに行かされる羽目になった私は悪くないと思う。飛んだとばっちりだった酷い思い出だわ……まぁ、後で我に返った母からは謝られたけど。母さん、蛇苦手だったもんね)
今まではそんな事は全くなかったから、蛇除けも頑張ってくれてたんだと思う。
ちなみにその年は、畑のとうもろこしも全滅した。
綺麗に並んで穂のような花をつけていたトウモロコシが、ひと区画全て切り倒されて実が無くなっていた。
一見して人の嫌がらせかと思うくらいに綺麗に切り倒されていたのだけど。
「根元と実がついてたところを見てみろ。これは人の切り方じゃねえ」
(実まで背が届かないから)同じ高さのあたりで綺麗に切り倒して……しっかり倒してから実を美味しく頂いた跡だと説明された。つまり、これは猪の食害だった。
……高齢になり、足腰が弱ってきていた猟犬を労わりながら
「こいつが動けなくなったら俺も一緒に引退だ!」
と、寂しそうに笑っていた祖父は、食害の被害の酷さに唖然として、あっさりと猟師として復帰した。
次の仔も春一番の生まれで、とても賢く育ったが……祖父との狩りに同行することは無かった。
……今度は祖父が身体を悪くしてしまったからだった。
(懐かしいな。この仔も狩りこそ爺ちゃんとは行けなかったけど、しっかり寄り添ってくれた。盲導犬か介助犬ですか?と思うくらいに、爺ちゃんが亡くなるまで甲斐甲斐しく傍に居てくれた。私はそういう姿を見て育ってしまっているから、爺ちゃんたちが言ってた通りに『春一番の仔は賢い』これは験担ぎの一つだとは聞いているけど、案外本当なんじゃないかな?と思ってる)
っと、一気に思い出された記憶に思わず浸りそうになったけど、考えを戻す!
カイルザークは確かギリギリ早生まれで3月だったはずなんだ。
ちなみにセシリアは……私も春生まれなんだけどさ……4月です。
つまりほとんど1年の月齢差があるんだよね……私がお姉さん!って言う意味でね。
年齢の数え方って1月から始まらない。
年の初めは1月からなのに、紛らわしいよね!
(まぁ、生活の基本が暦ではなく季節と気候だからってのもあるんだけどね)
それでも前世での常識と妙な合致があると、なかなかどうして興味深いものがある。
ちなみにこっちの世界での4月開始な理由は、春だから。
(春までは雪に閉ざされて、行き来すらできない街もあるから、4月開始じゃないとそういう地域の暮らしが遅滞してしまうからなんだ)
春になればそんな地方でも、雪解けで行商やら人の往来も活発になる。
都会から派遣される学校の先生なんかも赴任できる。
そうやって人々の生活の活動開始になるのが、春だから4月開始なんだよ。
まぁそんな事、学校を卒業してしまえば……年齢はともかく学年的な事は書類等に申告することもないし、あまり気にすることでもないんだけどね。
(そもそもシシリーみたいな孤児が多いこの世界、誕生日自体を知らない子供たちも多いから、気にしようがない)
そういう子たちは、孤児院に保護された日を誕生日にしてたりもするから、正確性という意味ですら、当てにならないからね。
0
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる