207 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
207、褒めて。
しおりを挟むカートの側にはいつの間に移動したのかレオンハルト王子とエルネスト。
そうそう、シュトレイユ王子は……父様に抱っこされていた。
父様が動くたびに、足が力無くふらりと揺れている。
……泣いちゃってたし、疲れて寝ちゃったのかな?
カイルザークはぺこりとお辞儀をすると、カートの上の石板へと手を伸ばす。
すると少ししてから、ぼそぼそとルークの声が聞こえ始め、言葉までははっきりと聞き取れなかったのだけど、その声に呼応するかのように魔術師団の団員達がざわめき出す。
(カイは魔力値が高かったはずなんだ。『獣人の中では高い』のではなくて、人族の中でも高い。相性の良かった属性は確か土だったはず……なので、最初に団員の動きを止めたのは、土の魔法は、カイだったのだと思う)
でもね、私が知ってるのは研究室に来た時の測定値だから、今がどうなってるのかは正直わからない。
だって身体が縮んでるんだよ?
状況的には若返ったみたいだけど、それって、今まで培ってきたスキルはどうなったのか?
巻き戻されちゃったのなら、知識として知っていても今は使えない。
逆に大人の時の能力のままに身体が若返ったのなら、ただただ身体が小さいだけで、昔のままに使えるって事になる。
(ま、筋力に関しては…体力もだろうけど、ある程度は巻き戻されてると思うんだよなぁ。腕とか幼児特有のぷにぷにだもんね。自分の愛用だった武器も支えきれずにふらついていたし?)
まぁそれは私にも言える事なんだけどさ。
私の場合なんて、若返ったとかじゃなくてそもそも身体が違うわけだし。
測定が完了したのか、カイルザークはぺこりとお辞儀をすると、一目散に私の元へと戻ってきた。
良い結果だったのだろうか?しっぽが嬉しそうに大きく緩やかに揺れている。
「ん~……相性変わってた、と思う。寝てた影響かなぁ?」
寝てるだけで属性が変わるとか……って『寝てた』のは魔道学園の卵の中でってことかな?
でも、ルークが覚醒してたって言ってたしなぁ。
もしかしたら覚醒の影響かもしれないよね?
「おめでとう?」
「うん、ありがとう!」
嬉しそうにふわりと笑いながら、カイルザークは手を差し伸べる。
手を添えて恭しく優雅に立ち上がり……ではなくて、なんとか引っ張り上げてもらって立ち上がる。
うん、腰が抜けたみたいになってたの忘れてたわ……。
「ありがと!……っと、いってくる!」
「セシリアも頑張って?あははっ」
少し休んだからか、足がぷるぷるしつつも、なんとか歩けるようにはなっていた。
父様が、なにやらはらはらした様子で私を見ていたけど、大丈夫、頑張りますよ?
俄然やる気が出てきたよ!
「またとばされないように、がんばるっ!」
「そっちなの……」
いや、今、こんなふらふらの状態で魔道学園に飛ばされたら、施設内がいくら安全だと言ったって致命的だからね?
しかも一人でとかだったら……帰還方法がわかっていたとしても、ゾッとする。
絶対に発動しませんように……!と、どきどきしながらカートへと近づいていく。
ま、なるようにしかならないもんね、と開き直って顔を上げると、魔術師団員達の会話が耳に入った。
「光持ちの獣人とか……どんだけ珍しいんだよ」
「いや、属性もだが魔力量も……」
「3種持ちはエルフと王族以外では初めてじゃないか?……」
光持ち……?
カイルザークは持ってなかったと思うんだけど。
まぁ持ってなくても、研究室では使ってたといえば使ってたから、あんまり違和感なさそうだけど。
やっぱり卵になって寝てた時に……何かあったのかしら?
まさか、本当に人体実験!?
まさかね?と思いつつ、カートの前になんとか到着して、カーテシーをしようとして膝から崩れ落ちかける。
傍で、ぶふぉ!とか……どう聞いても、レオンハルト王子が激しく吹き出した音が聞こえたけど、完全スルーすることにした。
とりあえず挨拶は声だけで!
「おねがいしましゅ!」
あぁぁ…。
また噛んだ。
どうしてこう肝心な時に!?
ぐふっ!とか、がはっ!とか変な声が継続的に聞こえてくるんだけど、超絶スルーで!
ていうか、レオンハルト王子!なぜ私ばっかり笑うのよ!?
……後で覚えてなさいよ?と思うのも、いい加減疲れてきたので次回の勉強会の時に仕返しをしようと心に誓う。
「セシー、触るだけだぞ?そーっと触るだけ、な?」
「はい」
石板に手を伸ばしたところで、父様が祈るような声で話しかけてきた。
あれだね、小さな子供がガラス製品や瀬戸物売り場なんかに迷い込んじゃった時の、あの親の表情ですよ。
……大丈夫ですってば!
セシリアは頑張ればできる子なんですよ!……頑張れば、ね。
任せてくださいよ!と、小さくゆっくり頷くと、ものすごく不安な顔をされた。
どういう事っ?!
ほぼ無表情のルークの隣で、信号機のように赤青黄色と顔色や表情がころころと変わる父様。
今度こそちゃんとできますよっ!
(娘が心配なのはわかるけどさ、その反応はどうかと思うよ?)
とりあえず、また魔導学園へと飛ばされない限りは特に大きな問題は起きないと思う。
そう思いつつ、そっと石板へと触れる。
石板は私の手が触れているあたりから、ぶわりと紫の光を広げていき、四方までその光が行き渡ると、文字が浮かび上がり始める。
うん、見慣れた文字列だった。
……シシリーより火と光と風の適性が上がってる気はしたけど、まぁ、前前世と特に大きくは変わってなかった。
火と光と風については、きっと父様と母様から遺伝として受け継いだものだと思うし……という考えに至ると、嬉しくなって思わずにんまりとしてしまう。
そんな文字列を凝視するようにしていた父様が、んんっ?と、唸り声を上げた。
「……あー。ハンス?。この石板は以前のと同じ作りのものだよな?」
「そうだが?……何か?」
ハンスは石板に浮かび上がる私の属性をメモしていた手を止めると、怪訝そうに顔を上げる。
何か変なものでもあったかな?と、再度覗き込むが、特に何もない。
魔力値と、各属性値、あとは……下の方に契約精霊の属性が出てるくらいだけど、それだって特に変なことは書かれていない。
「……見たことのない文字列があって…読み取れん」
「ふふっ。それは…セシリアが優秀な証拠だよ」
「優秀…うん、優秀だな。優秀…なのか?」
「とても、優秀だ」
父様が褒めてくれた…のかな?何かぶつぶつと言ってるけけど、褒めてもらえたことにしとく。
ルークも褒めてくれた!これから頑張って伸ばすぞー!!!
そんな父様とのやり取りの中、今まで無表情だったルークが、まるで自分が褒められたかのように嬉しそうにくすくすと笑いだす。
端正な顔に突如として広がっていく優しげな笑みに、私は毎度の事ながら思わず見惚れてしまうのだけど……気づいたのですよ。
父様も魔術師団の団員さんたちも、ルークのその様子を目にした途端、何か見てはいけないものを見てしまったかのように、はっと目を逸らしたり赤面したり……。
同性でも、見惚れちゃうんだ?
綺麗だもんね……本当、ルークの美貌が羨ましい。
そんなルークは「メモが終わるまで待ってくれ」とでも言うように、片手を小さく上げると一気にメモを書き上げていく。
「優秀……まぁ多芸なことは分かったが……」
多芸、ですと?!
父様、言い方!!!
それは褒め言葉じゃないと思うんですよっ!!!
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる