私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
208 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

208、祝福。

しおりを挟む



「読めないのはここだろう?」


メモは終わったのか、ルークは顔を上げると石版の一番上の文字列を指差した。
ていうか父様、古代語読めるんですね?!
そこだけわからないって事は、片言程度は理解できちゃうんですね?

それとも我が子たちの属性検査を自前で読むために、勉強してくれてたのかな?
そう思うと、ちょっと嬉しくなる。


「あぁ、そこだ。何かが9あるというのは分かるんだが……あとここも、同じ文字だと思うんだが…読めない」

「これは『闇』だ……見るのは、初めてか?…闇持ちは光持ち以上に、稀有だからな…」

「あぁ……初めてだ。なるほど、これが『闇』か……」


無意識にだけど、少し緊張して父様を見つめてしまう。
ルークは『稀有』と表現したけど……父様はどう感じるのか、どう思ったんだろう?
魔導学園シシリーの時も、属性が周囲に知られた途端に、誰からも話しかけられなくなった。

どう反応されるのか不安になって見つめていたけど……父様はこちらへ顔を上げる事なく…石板に貼り付かんばかりに文字の解読に勤しんでいた。
……まぁいいか。


「ではこっちの…ここも『闇』でいいのか?」

「そうだ。セシリアの場合の、その欄は…契約している精霊の属性だ。」

「あの精霊は闇の精霊なのか……ん?『場合』って事は、ここは精霊の表記だけではないのか?」

「そこは…備考、のようなものだ。身体本来が持つ特性以外の、状態異常等も…表記される……例えばだが…ユージアの時は『猛毒』と『擬態』と出ていた」


えーっと……ちょっと待って?
ルークはあの時の時点で……魔導学園へ飛ばされる直前だけど、ユージアの体調が万全でない事を知ってたって事ですよね!?
その割にはフォローも治療のそぶりも、全く無かった…あぁ、あったのかも?
あえて魔力切れにさせて、休ませようとしてた?ってわけでも……無いな。無い無い。

それなら直接ユージアに襲い掛かればいいんだもの。
私にもついでに襲いかかったとかだったら、とんだとばっちりだわ。

『猛毒』に関して父様も同じような考えに至ったのか、ルークに向かって眼を見開いた。
なぜ測定時に指摘しなかったのか?治療する気はあったのか?


「自分の異常に気づかないでどうする」

「……相変わらずのスパルタで」


ルークはふん。と、鼻で笑うように息を吐くと、顔を上げる。
父様も少し遠い目をしながら、石板には満足したのか、顔を上げて魔術師団員たちが集まっている辺りに視線をやる。


「闇持ち……」

「不吉なのでは…」

「聖女の名を騙った忌み子……」


まぁ、ほぼ予想通りかな……。
大聖女の娘だもんね。魔術師団の団長の娘だもんね。
さぞ優秀な属性をお持ちなのだろう。と期待や羨望の眼差しであったものが、『闇』と聞こえただけで一瞬で掻き消えた。

分別のある大人たちであるはずの魔術師団員さえ、先ほどまでのフレンドリーな表情はどこへいってしまったのか、といった具合で……中には敵意を剥き出しに睨んでいる団員まで見えた。
やっぱり手のひら返し…あるよね。


「なにを誤解している?セシリア嬢は、この検査結果により聖女だと確定した。これは『祝福の聖女』だ。……光属性信仰である教会からみれば、悪女かも知れんが、な」


ルークは皮肉げに、にやりと口角を上げ『忌み子』や『不吉だ』と口にしていた団員を真っ直ぐ見据える。
見つめられた団員は、一瞬にして黙ってしまった。

私はといえば……ルークの言葉に心底ほっとしていた。
また・・、それこそ、この場で殺されるかと思った。

闇属性ってイメージよくないもんねぇ。


前世にほんに転生した時は、こんな事はなかったけど、それ以外のほとんどの死亡原因がこれだ。闇属性って分かっただけで殺されてきたんだよね)


……殺される前に逃げればいいじゃん!って思うでしょ?
私もそうしたかったのは山々なんだけど『あ、転生してた』って気付いた時には、死の直前の痛みや苦しみの刺激で『思い出した!』……ってことがほとんどだったから、どうしようもない。


「祝福の聖女……。闇、闇か。だが、光も持っているな?火もあるし。いやまて、これは……」

「おとしゃま?」


父様に拒絶されるのは嫌だな……そう思い様子を窺うと…絶賛混乱中のようだった。
顎に手を当てて、なにかぶつぶつと呟いている。

……父様に拒絶されたら…哀しいな。
今までいっぱい大切にしてくれてたのだから、嫌われてしまってお別れになるとしても、お礼くらいする時間はもらえるといいな…。

考えが顔に出てしまったのか、父様は呟きながらも、私が泣いてしまった時にいつもしてくれてたように、頭をぽんぽんと撫でてくれた。
……離れたくない。まだ、娘として傍にいたいです。


「あぁ、大丈夫…じゃない。大丈夫だ。大丈夫……か?」

「どっち?!」


本当に、どっち…?!
声こそは優しかったけど、何であんなに動揺しているんだろう?
やっぱり『闇持ち』は受け入れ難いのかな?

でも、ここさえなんとか乗り切れてしまえば、きっと今まで繰り返してきた『幼少での死』は免れると思うから……父様、受け入れてくれると嬉しい……。
もはや祈るような気持ちになって、父様を見上げる。


「ねぇ、セシリア……?」


いつの間に傍まできたのか、カイルザークが気遣わしげに私を覗き込んでいた。
父様を見上げてたつもりなのに、いつの間にやら俯いてたっぽい。


「父様、ついに禿げてしまいそうな感じだね…頭わしわししてる」

「あ……おくしゅり…あるから」

「……まだ、禿げませんっ!」


まだ、禿げないらしい。というか、混乱してる割には子供の会話はしっかり聞いてるのね。
否定するだけして、またもや父様は、ぶつぶつと独り言の世界へと旅立ってしまったのだけど。

そういえば、まだ魔導学園へ飛ばされた時のお土産を渡していない人がたくさんいたんだった。
王子達にも用意したんだよなぁ。
渡せるタイミング、作れるだろうか?
……これからもっと、毎日が楽しくなりそうだったのに、ここで拒絶…されたら哀しいな。


「宰相、ひとまず落ち着け。祝福の聖女は…過去にもこの王家の血筋に数人存在した。まさにその名に恥じぬ、国にとって祝福といえる存在だった」


祝福、ね。
昔もそう呼ばれたことがあったけど、むしろ自分が祝福をされたかったと思う境遇ばかりで……嫌味な名前にしか聞こえなかった。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...