私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

212、おしおき。

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「皆も、属性検査の立ち合いご苦労だった。時間が押してしまったが、それぞれの持ち場へ戻るように」


ルークと父様の号令により、魔術師団はいくつかのグループに分かれ始める。
打ち合わせしてから、各自解散なのかなとぼんやりと眺める。

……怖い事は起こらなかった。

その安心感からか、足元がぐらついた。
魔力切れの強烈な眠気と怠さもあって、正直なところで言えば立っているのも辛いし、眼を開けているだけで精一杯だった。

あまりの眠さに瞬きをするだけで、意識が飛びそうになる。
立ったまま寝れるわ、これ。

完全に限界だ。
会場の片付けをしている魔術師団員たちを遠目に見つめながら、狙いを定める。
……すぐ近くの林檎の木陰で、純白の毛並みに花びらを積もらせながら眠る、巨大猫。

休憩するなら、ゼンナーシュタットそこが1番心地いいはず!
朦朧とし始めている意識をなんとか誤魔化して、ゼンナーシュタットの所へ歩き始めようとしたところで、レオンハルト王子とカイルザークの会話が耳に入ってきた。


「カイは凄いな!光持ちの上に他にも属性があるなんて!」

「ありがとう!魔法の授業が楽しみだね」

「ああ、頑張ろうな!」

(あぁ……私も頑張りたいな。会話にも…まざりたいな)

「それと、セシリアのあの精霊は闇の精霊だったんだな!」

『……僕は、闇じゃないけどね♡』

「うわっ……!?」


レオンハルト王子とカイルザークの組み合わせが珍しいな……とか思いつつ、ひとまずはゼンナーシュタットのところまで移動しよう!と思うのだけど……眠さですでに足すら動かせなくなっていることに気がついて、呆然と立ち竦んでいるとレオンハルト王子の背後から、ひょっこりとフレアが姿を現した。


「あ…フレア?何してるのさ……キミのご主人様マスターはあっちでしょ」

『あぁ、カイ、お話中にごめんね?王子様だよねっ?よろしくね!』


フレアはにこにことレオンハルト王子の前で視線を合わせるためにひざまずく。


「えっと……セシリアの精霊?」

『うん!闇じゃない方の精霊だよ~!あっ!お近づきのしるしに。これあげるね』


フレアは一方的に話し出すと、レオンハルト王子の目の前に手を差し伸ばした。
眼前で開かれた掌には、キラキラと光るものが置かれていて、レオン王子が見つめたのを確認すると、さっと立ち上がる。


『僕の手作りヘアピン☆……ちょっと可愛すぎるかな?……まぁ子供だし、良いよね?』


「可愛い」と言われるのがイヤなのか、フレアがレオン王子の髪に触れ始めると、少しだけ抵抗するように、後退っていた。
けれど「護身用だから」と王子の耳元で小さく囁くと、抵抗の甲斐もなく、問答無用で髪につけてしまっていた。


『弟くんにもあげるね!……寝てるけど。よろしくね』


フレアは笑いながら父様へと近づくと、その肩口でぐっすりと熟睡をしている、シュトレイユ王子のふわふわの頭を撫でて、ヘアピンをつけてしまった。
少し大きめの飾りがついているタイプのピンで、ヘアピンていうのかな?これ。
白い飾りがキラキラと輝いていた。


『エルにも!』

「え、えんりょ…」


フレアがエルネストに触れようとすると、凄い勢いで後方へ飛び退る。
精霊に怯えてるのは何なんだろうね?
近づくと逃げられるを数度繰り返すと……フレアは、エルネストに向かって意地の悪い笑みを浮かべる。


『……僕に着けられるのと、風の乙女シルヴェストルにつけてもらうのと、どっちが良い?』

「いただき、ます…」


風の乙女シルヴェストルの名が出ただけで、びくりと小さく飛び跳ねて……ため息を吐くと、諦めたようにフレアに髪飾りをつけてもらっていた。

風の乙女シルヴェストル、可愛いのになぁ。
エルネストは苦手なのかな……。


『ついでにカイもいる?』

「え……僕はついでなの?!』

『だって、使わなそうだもん!ちゃんと使ってくれないと、作り甲斐がないっ』


それは同感です。
今のカイルザークの胸で揺れている、リボンタイのアクセサリー……護身用なのに起動状態になってないよね?


「僕、もしかして嫌われてる?」

『ん?好きだよ?可愛いし?』

「なんか含みがあるよね?」

『ないない!多分、ないよ~?……よし、ついた!耳の出し入れで吹っ飛ばさないように気をつけてね?』

「……気をつけるよ。ありがとう」


耳……そういえば今も、カイルザークは耳としっぽが出しっぱなしである。
髪飾りは、耳を避けて……頭のてっぺんにつけられていた。
なんか、寝てる猫の額におもちゃをこっそり乗せる遊びの後みたいで可愛い。


『えっと、セシリア…まだ怒ってる?』

「おこってないよ」

『じゃあ、セシリアにも。綺麗でしょ?水の乙女オンディーヌに教えてもらったんだ!』

「フレア、ありがとう」


遠目できらきらと見えていた髪飾りは、小さな薔薇の花を模した…えっとこれ、真っ白な鱗で作られていた。
うん、確かに護身用だなぁとか、ぼんやり考える。


『ねぇ、ルナ、もう戻ってもいいかな?あと「おしおき」終わったらしいから…』

「フレア、その『おしおき』の終わった人間はどこにいる?」


良いよ。帰っておいで!と伝える前に、ルークから声がかかる。
『おしおき』終わったら返すっぽかったもんね。
捜索隊を出すようなことも言ってたし、これから出発するのかな?と、二人の会話の成り行きをぼーっと見つめることにした。


『ルーク様、彼は共同墓地にいますが……妖精達が怒り狂っていますので「人」が近づくのはお勧めできません』

「妖精『達』なのか?」

『複数です。かなり恨まれてますよアレ。ルナがいじけて使い物にならないんではっきり聞き取れなかったんですけど、騎士団の名を使って広範囲での墓荒らしをですね……』


えっと…『アレ』と呼ばれてしまった人、たしかカイルザークを墓荒らしのように言ってたんじゃなかったっけ?
自分でやっちゃってたのね……。


「……そんなに金回りのいい奴には見えなかったが」

『墓から盗めるのは、金目の物だけじゃないですよ』

「まさか……」


墓荒らしって…今世ここでは完全なる土葬ってわけでもないんだけど、まぁ土葬に近い感じで埋葬される。
前世にほんのように火葬したあと、骨壺に入れてお墓に納めるといった流れではないのと、生前、故人が大切にしていたものも一緒にお墓に納めるので、そんな故人のお宝狙いの墓荒らしが悲しいことに結構いたりする。


『騎士団の名を使っている以上、騎士団として墓を暴いてるんですよ……だから、ここの人は近づかない方がいい。そういう意味で、お勧めしません』

「では…もう一つ。その人間は生きているのか?」


騎士団の名を使って墓を暴いたって何ですか?
捜査のためとか適当なこと言って、堂々と墓を荒らしてたんですかね?
……祟られるわよ?と思ったわけだけど、こっちの世界ではどうってことなかったりするのかな?
それはそれでイヤだなぁ。

うわぁ…と思いながら、見上げたフレアは、先ほどまでの笑顔は何だったのか?
珍しくも、かなり険しい顔をして怒っている。


『その前に、私もあなたの部下に「おしおき」をしなくてはならないのですが、良いですか?』

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