212 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
212、おしおき。
しおりを挟む「皆も、属性検査の立ち合いご苦労だった。時間が押してしまったが、それぞれの持ち場へ戻るように」
ルークと父様の号令により、魔術師団はいくつかのグループに分かれ始める。
打ち合わせしてから、各自解散なのかなとぼんやりと眺める。
……怖い事は起こらなかった。
その安心感からか、足元がぐらついた。
魔力切れの強烈な眠気と怠さもあって、正直なところで言えば立っているのも辛いし、眼を開けているだけで精一杯だった。
あまりの眠さに瞬きをするだけで、意識が飛びそうになる。
立ったまま寝れるわ、これ。
完全に限界だ。
会場の片付けをしている魔術師団員たちを遠目に見つめながら、狙いを定める。
……すぐ近くの林檎の木陰で、純白の毛並みに花びらを積もらせながら眠る、巨大猫。
休憩するなら、ゼンナーシュタットが1番心地いいはず!
朦朧とし始めている意識をなんとか誤魔化して、ゼンナーシュタットの所へ歩き始めようとしたところで、レオンハルト王子とカイルザークの会話が耳に入ってきた。
「カイは凄いな!光持ちの上に他にも属性があるなんて!」
「ありがとう!魔法の授業が楽しみだね」
「ああ、頑張ろうな!」
(あぁ……私も頑張りたいな。会話にも…まざりたいな)
「それと、セシリアのあの精霊は闇の精霊だったんだな!」
『……僕は、闇じゃないけどね♡』
「うわっ……!?」
レオンハルト王子とカイルザークの組み合わせが珍しいな……とか思いつつ、ひとまずはゼンナーシュタットのところまで移動しよう!と思うのだけど……眠さですでに足すら動かせなくなっていることに気がついて、呆然と立ち竦んでいるとレオンハルト王子の背後から、ひょっこりとフレアが姿を現した。
「あ…フレア?何してるのさ……キミのご主人様はあっちでしょ」
『あぁ、カイ、お話中にごめんね?王子様だよねっ?よろしくね!』
フレアはにこにことレオンハルト王子の前で視線を合わせるためにひざまずく。
「えっと……セシリアの精霊?」
『うん!闇じゃない方の精霊だよ~!あっ!お近づきのしるしに。これあげるね』
フレアは一方的に話し出すと、レオンハルト王子の目の前に手を差し伸ばした。
眼前で開かれた掌には、キラキラと光るものが置かれていて、レオン王子が見つめたのを確認すると、さっと立ち上がる。
『僕の手作りヘアピン☆……ちょっと可愛すぎるかな?……まぁ子供だし、良いよね?』
「可愛い」と言われるのがイヤなのか、フレアがレオン王子の髪に触れ始めると、少しだけ抵抗するように、後退っていた。
けれど「護身用だから」と王子の耳元で小さく囁くと、抵抗の甲斐もなく、問答無用で髪につけてしまっていた。
『弟くんにもあげるね!……寝てるけど。よろしくね』
フレアは笑いながら父様へと近づくと、その肩口でぐっすりと熟睡をしている、シュトレイユ王子のふわふわの頭を撫でて、ヘアピンをつけてしまった。
少し大きめの飾りがついているタイプのピンで、ヘアピンていうのかな?これ。
白い飾りがキラキラと輝いていた。
『エルにも!』
「え、えんりょ…」
フレアがエルネストに触れようとすると、凄い勢いで後方へ飛び退る。
精霊に怯えてるのは何なんだろうね?
近づくと逃げられるを数度繰り返すと……フレアは、エルネストに向かって意地の悪い笑みを浮かべる。
『……僕に着けられるのと、風の乙女につけてもらうのと、どっちが良い?』
「いただき、ます…」
風の乙女の名が出ただけで、びくりと小さく飛び跳ねて……ため息を吐くと、諦めたようにフレアに髪飾りをつけてもらっていた。
風の乙女、可愛いのになぁ。
エルネストは苦手なのかな……。
『ついでにカイもいる?』
「え……僕はついでなの?!』
『だって、使わなそうだもん!ちゃんと使ってくれないと、作り甲斐がないっ』
それは同感です。
今のカイルザークの胸で揺れている、リボンタイのアクセサリー……護身用なのに起動状態になってないよね?
「僕、もしかして嫌われてる?」
『ん?好きだよ?可愛いし?』
「なんか含みがあるよね?」
『ないない!多分、ないよ~?……よし、ついた!耳の出し入れで吹っ飛ばさないように気をつけてね?』
「……気をつけるよ。ありがとう」
耳……そういえば今も、カイルザークは耳としっぽが出しっぱなしである。
髪飾りは、耳を避けて……頭のてっぺんにつけられていた。
なんか、寝てる猫の額におもちゃをこっそり乗せる遊びの後みたいで可愛い。
『えっと、セシリア…まだ怒ってる?』
「おこってないよ」
『じゃあ、セシリアにも。綺麗でしょ?水の乙女に教えてもらったんだ!』
「フレア、ありがとう」
遠目できらきらと見えていた髪飾りは、小さな薔薇の花を模した…えっとこれ、真っ白な鱗で作られていた。
うん、確かに護身用だなぁとか、ぼんやり考える。
『ねぇ、ルナ、もう戻ってもいいかな?あと「おしおき」終わったらしいから…』
「フレア、その『おしおき』の終わった人間はどこにいる?」
良いよ。帰っておいで!と伝える前に、ルークから声がかかる。
『おしおき』終わったら返すっぽかったもんね。
捜索隊を出すようなことも言ってたし、これから出発するのかな?と、二人の会話の成り行きをぼーっと見つめることにした。
『ルーク様、彼は共同墓地にいますが……妖精達が怒り狂っていますので「人」が近づくのはお勧めできません』
「妖精『達』なのか?」
『複数です。かなり恨まれてますよアレ。ルナがいじけて使い物にならないんではっきり聞き取れなかったんですけど、騎士団の名を使って広範囲での墓荒らしをですね……』
えっと…『アレ』と呼ばれてしまった人、たしかカイルザークを墓荒らしのように言ってたんじゃなかったっけ?
自分でやっちゃってたのね……。
「……そんなに金回りのいい奴には見えなかったが」
『墓から盗めるのは、金目の物だけじゃないですよ』
「まさか……」
墓荒らしって…今世では完全なる土葬ってわけでもないんだけど、まぁ土葬に近い感じで埋葬される。
前世のように火葬したあと、骨壺に入れてお墓に納めるといった流れではないのと、生前、故人が大切にしていたものも一緒にお墓に納めるので、そんな故人のお宝狙いの墓荒らしが悲しいことに結構いたりする。
『騎士団の名を使っている以上、騎士団として墓を暴いてるんですよ……だから、ここの人は近づかない方がいい。そういう意味で、お勧めしません』
「では…もう一つ。その人間は生きているのか?」
騎士団の名を使って墓を暴いたって何ですか?
捜査のためとか適当なこと言って、堂々と墓を荒らしてたんですかね?
……祟られるわよ?と思ったわけだけど、こっちの世界ではどうってことなかったりするのかな?
それはそれでイヤだなぁ。
うわぁ…と思いながら、見上げたフレアは、先ほどまでの笑顔は何だったのか?
珍しくも、かなり険しい顔をして怒っている。
『その前に、私もあなたの部下に「おしおき」をしなくてはならないのですが、良いですか?』
0
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる