私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

219、一転。

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ユージアの意見に賛成!と返事をしようにも、すでに眠さが限界で喋っても呂律が回らない自信があった……。
指1本ですら、動かしたく無いと思うほどに身体が重い。



「あははっ。エルはさすがに限界だねぇ。そのまま寝ちゃえば良いと思うよ!」

「ごめん……」

「謝る必要はないと思うよ。あとでその分頑張れば良いんだよ……頑張ったから眠いんでしょう?ありがとう」


ユージアの声を耳にして、ほっとしたのか完全に目蓋が閉じてしまった。
気怠い感覚がとても心地良くて……それでも会話が、父様とルーク先生の状況が気になっていたので必死に耳だけは、と完全に意識を手放すことがないように、堪える。

結界で守られた中で僕たちがのんびりしている間、父様とルーク先生はかなりの数の相手をしていたし、魔術師団員も健闘しているようだった……こちらは正直どっちが味方だったのか、見分けがつかない部分もあったのだけど。


「ねぇ、レオンはどうしてそんなに……戦いたいの?…」

「……少しでも力に…僕は、強くならないといけないから」

「強さっていろいろあるよね。あそこの化け物2人組は強いよ。強いからこそ、相手を殺さないようにして戦うから、手間取ってる。もっと強い存在で言えば……龍はもっともっと強いけど、強い龍ほど争いを嫌うって聞いたよ」

「そうね、私は争い好まないわ。でも今は、子の守りを引き受けてしまったのだけどね」


ふふふ。と優しげな声でゆっくりと、龍の奥方が話す。

……そうだよなぁ。
国を一つ守護してしまうことができるような存在が好戦的だったら、ぞっとする。
守護ではなくて攻撃されたら、きっと、ひとたまりもない。
まぁ、龍の仲間でも知能の低い者なんかは、交戦的な種族も多々いるみたいだけど。
それでも嬉々として人に襲いかかる、というのはあまり聞かない。


「ね?いざという時の戦力になるように、訓練はさぼっちゃダメだけど、でも今は王子の『いざという時』ではないと思うよって……何だあれ!」

「うわっ!?」


ユージアの声と、どん。という地面からの衝撃にびっくりして眼を開くと、結界の形がはっきり見えるほどの大きな火球に、あたりが包まれていた。


「さすが…龍の障壁は頑丈だなぁ…僕には無理そう…じゃなくてっ!何あの黒いの!!」


さっきまで優しげに楽しげにと、努めて明るい声で喋っていたユージアの声が、完全に恐怖の色に変わっていた。
その声色に驚いて、思わず僕も眼を開けた。

……先ほどと全く違う光景に、唖然とする。


「なに…あれ」

「犬か?いや、ヘビみたいのもいるなぁ」


小春日和のほんわかと温かな日差しに、芝生、そして果樹や背の高い樹々に覆われるような構造になっていて、そして今はその果樹の花が満開、見頃を迎えていて……ひらひらと風に遊ばれるようにして、大量の花吹雪ができてたはずなのに。

空は曇ってもいないのに暗く、遠目に黒く蠢めくようにぞわりぞわりと、黒い動物たちが疾走してくる。
しかもこちらへと一直線に。

中庭へと雪崩れ込むように集まりつつあった、敵味方混ざり合った人の群れが、その黒い群れに飲み込まれると戦いあっている、その片方のみが突然、崩れ落ちていく。


『……ルナだよ』

「うわぁあっ!」


突然、予想外の声が聞こえて、思わず飛び上がる。
声の主は……金髪の男の子の精霊だから…確かセシリアの精霊でフレアだった気がする。
セシリアは寝てるのに。また暴走中なのだろうか?


『王子、戦いに今すぐ・・・貢献したいなら、少し魔力貰えないかな?エルもユージアも。もらったらこの戦いをすぐに終わりにできるよ』

「……終わったら、寝て良い?」


思わず聞いてしまう。
眠さ限界なので、寝れるなら寝てしまいたい!
もう、そんな風にしか考えられらいほどにとにかく眠い。


「ゼンの背中ベッドは、まだ空きがあるよ!」

「ちょ!おい……僕は歩くベッドなの…?」

『倒れたら危ないからそのままね。手を……』


ユージアの軽口にゼンナーシュタットはジト目になった。
そして……順にフレアの手を握る。
僕もフレアと手を繋いだ直後から、トドメとばかりに倦怠感がさらに酷くなる。


『ユージアもおやすみ』

「おやすみって…ああもう!そんなに吸われたら…無理っ!着替え持ってきてないのに!!」


そう言いながら、ユージアも大きな杖を抱え込みながら身体を縮ませ、ゼンの腹へと倒れ込んで行った。
完全に身動きが取れなくなった視界の先で、満面の笑みを浮かべるフレアが龍の奥方へ礼をして彼女の張った障壁から抜け出ると、ルナへと姿を変えた。

そして……

薄れゆく意識の中、あまりの眠さに呂律の回らなくなっている中で…眼前に広がる惨状に、それぞれぽつぽつと言葉を呟くと、完全に意識を手放した。


「あれは無いわ……」

「ああ、無いな」

「地獄絵図っていうんだよね?こういうの……」

「阿鼻叫喚、かもしれないよ?」

「「「でも、無いわ……」」」


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