220 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
220、小春日和。
しおりを挟む小春日和の良い天気。
リビングの掃き出し窓を開けて、縁側に出る。
縁側……ウッドデッキって言うのかしらね?本当はウッドデッキ風の縁側なんだけどね。
冬になったら雪囲いの邪魔になっちゃうから、全部撤去できちゃうの。
半畳よりは少し大きいかな?ってくらいの大きさの正方形の木製縁側が6台ほどそれっぽく並べてある。
満開の梅の香りが強く香る庭へと出て、庭木を植えてある鉢の前にしゃがみ込む。
ほんの数日前に、その雪囲いを外したばかりなのに、目の前の鉢の枝には3センチほどまで伸びてきている新芽がたくさん見えていた。
(これは薔薇だなぁ。こっちはブルーベリー。こっちは……ローズマリー。って……もう新芽どころか紫色の蕾がたくさんついてるし。こっちはラベンダー…かな?葉っぱがローズマリーと似てるけど銀葉だし)
全て30リットル以上の大きな鉢に植えてある。
理由は簡単。雪が降った時に、雪かきの邪魔にならないように全て庭の一角に移動できるようにしてあるんだ。
そのルールさえ守るようにすれば、雪の時期も暮らしやすい庭の出来上がり。
という事で、雪囲いを外して庭の一角に集めておいた鉢達も、雪解けと共に姿を現したので……って、あ、庭の一角ってね、雪かきをしない所に集めておくから、降雪と共に埋もれて封印されちゃう。
だから、雪が溶けてこないと鉢を救出することができないんだ。
ひとまず救出した鉢を、玄関先に適当に並べたところでこの前の作業は終了していた。
ちなみに、うちは旗竿地といって公道に面したアプローチから玄関ドアまでが30メートルほど離れているので、アプローチに鉢をずらりと並べて毎年楽しんでいるんだ。
「……ちゃ!ばーちゃ!」
舌ったらずな子供の声が部屋から聞こえてくる。
あら?と、思いつつふり返ると孫がいた。初孫だ。
顔を真っ赤にさせて、髪の毛が汗でぺったり濡れて逆立っていた。
タオルケットを毛布にしてリビングでお昼寝中だったのだけど、蒸れて起きちゃったのかな?
「ばーちゃ!ぱおる!ぱおる、どこ?」
「はいはい…あーごめん、さっき洗っちゃったんだった!お庭にあるから…乾くまで、待てる?」
ぱおる!と叫んでいるのはバスタオルの事で、彼はこのタオルがないと落ち着かない。
何をするにもどこに行くにもタオルを持参していて、もちろん寝る時も必須…なのだけど、流石に酸っぱ臭かったので、昼寝をしたタイミングでこっそりと回収して洗ってしまったのだった。
「やー!ぱおるっ!!」
(あ……行っちゃったか。でも流石にあれは不衛生過ぎだったから…ごめんね)
初孫はウッドデッキから姿を消すと、玄関ドアからちゃんと靴をはいて家の南側へと走っていった。
……まだオムツが外れていなくて、走る姿もお尻をぷりぷりさせるような走りで可愛らしい。
後を追うように家の南側へと向かうと、物干し竿の下で必死にぴょんぴょんと干されているタオルに向かって飛び跳ねていた。
「ばーちゃ!ばーちゃ!とって!とって!」
「うーん、まだ濡れてるよ?キレイキレイしてるから、もうちょっと待って?」
「ぱおるぅぅぅ」
途端に目に涙がたまり始める。
でも、濡れたままの状態で返すわけにもいかないので、抱き上げてタオルの端を触らせてみる。
予想外の冷たさだったのか、ぎゅっとタオルを掴んだまま眉間がしわしわになっていった。
「ほら、つめたいよ?もうちょっとしたら、ふわっふわのいい匂いになるから。良い匂いタオル、幸せだよ~?」
「しゃーしぇ?しぁーしぇ?」
「し・あ・わ・せ。気持ち良いのよ~?」
「きもちぃーの?」
「そう、気持ち良いよ~。そうだ、タオルが乾くまでお庭で遊んじゃう?」
「うん!あちょぶ!」
あぁ、やっと気をそらせた!と、少しほっとしつつ玄関の棚に用意しておいた、子供用のおもちゃをまとめてあるカゴを出す。
「今日はねぇ……シャボン玉とブーブあるよ!」
「あわあわしゅるっ!」
あわあわ!と言われたので、シャボン液をボトルから小皿へと注ぎ、シャボン玉用のおもちゃを渡す。
すると嬉々としておもちゃを小皿のシャボン液につけると、遊び始める。
おもちゃは拳銃のような形をしていて、引き金を引くと先端のプロペラが回り出して、大量のシャボン玉が出てくるような仕組みだった。
ストロー状の吹くやつは、まだ使えなかった。
(この子はシャボン玉、好きだなぁ…これでシャボン液の500ミリリットルのボトルが空いちゃったよ)
初孫は、自分の時代の育児と比べてしまうと、かなり色々と遅い子だった。
3歳なのにまだオムツだし(息子の時は保健婦さんから『普通なら1歳で外すんだからね?』って注意を受ける時代だったのよ)
喋り方も、どうにも舌ったらずで。
……寝る前に哺乳瓶でお水を欲しがったりもしている。
私の同年代からは『親からの愛情不足では?』と言われそうな勢いだけど、もしそうだったとしても今はしょうがないんだ。
初孫の両親が悪いわけじゃないし、虐待なんてことも絶対にない。
数日前に母親が入院してしまい、そして間の悪いことに父親も遠方への研修期間中だった。
初孫は母親の両親へと預けられるのだろうと思っていたら、なぜかうちへお願いが来た。
(私だったら姑にお願いとか、関係にもよるけど正直あんまり信用できないのになぁ)
「実家よりお姑さんの方がご飯美味しいから」
初孫の母親である義理娘が笑っていたけど、自分の夫方の親の顔を立てただけとかだったらどうしようか?思いっきり不安にさせてたらどうしようか?と、内心ヒヤヒヤだった。
ちなみに美味しいと褒めてもらったけど、私は料理が得意ではない。旦那は得意だけれど。
……旦那は休日に暇さえあればキッチンにこもって焼き菓子を作ってみたり、新しい料理に挑戦したりしている上に手際も味も良い。
旦那が使った後のキッチンは、私が使った後よりも、普段よりもぴかぴかになるのでキッチンを使われることに対しての不満も何もないし。
だから、もしかして旦那の料理を私が作ったものと勘違いしてたりしないよね?とも思った。
(あ、そうだ、今日は肉料理だけど……そうか、初孫がいるからお肉は柔らかい方がいいんだものね)
噛みきれない肉を食べさせて、肉嫌いになられても申し訳ないし、今日はオリーブオイル漬けにしよう!
そう唐突に思いついて、さっき見かけたローズマリーを使おうと考えた。
おろしにんにくとオリーブオイルとローズマリー、塩胡椒と、お肉を袋に入れて揉み揉みして冷蔵庫に入れて。
夕方、そのまま焼けばいいだけだから簡単な上に、オリーブオイルを吸った肉はとても柔らかいのですよ!
「さて、ばーちゃん、元気の葉っぱをとってるからね」
「はっぱ?げんきになう?」
「そうねぇ、とっても美味しいから、食べたら元気になっちゃうよ!」
「……ママもげんきになりゅ?」
あ……すまん。と思った時には後の祭りなんだけどね。ごめんなさい。
それと、ママにこれ食べさせるどころか…この匂いを嗅いだだけで、すごい勢いで吐くと思うの。
私達には食欲を刺激しまくる良い香りだけど、ニンニクまで入ってるからなぁ。
君のママにはとってもキツい拷問の様な香りなんだよ。
「ママのおなか、たいたいなの」
「ママは……まだ食べれないかなぁ。あとでじーちゃんが帰ってきたらママに会いに行こうね」
「うん……ママのたいたいなおしゅ、はっぱある?」
「ママはお茶ちゃん好きだから…お茶ちゃんもね、葉っぱから作れるのよ。でも、病院だとペットボトルのお茶ちゃんの方が飲みやすいかな?お茶ちゃんお買い物して持っていってあげようね」
たしか『病院のお茶でノンカフェインは麦茶だけで飽きた!』ってベッドの上で拗ねてたから、近所のスーパーに寄ってハーブティー系を探してみようかな?
苦手な味だったら、次回のお見舞いの時に回収してくればいいだけだもんね。
(そうそう!カフェインレスってのは微量にカフェインが入ってるらしいのよね!『カフェインレスって書いてある紅茶が売ってたよ』って教えたら『それはカフェインを90%くらい除去したよ!っていう意味なのよ』と義理娘に教えられた。知らないで持っていってたら、嫁イビリみたいになっちゃうところだったわ……紛らわしい!)
「おてつだい、がんばりましゅ!」
「一緒に頑張ろうね!」
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる