私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

220、小春日和。

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小春日和の良い天気。
リビングの掃き出し窓を開けて、縁側に出る。
縁側……ウッドデッキって言うのかしらね?本当はウッドデッキ風の縁側なんだけどね。

冬になったら雪囲いの邪魔になっちゃうから、全部撤去できどかせちゃうの。
半畳よりは少し大きいかな?ってくらいの大きさの正方形の木製縁側が6台ほどそれっぽく並べてある。

満開の梅の香りが強く香る庭へと出て、庭木を植えてある鉢の前にしゃがみ込む。

ほんの数日前に、その雪囲いを外したばかりなのに、目の前の鉢の枝には3センチほどまで伸びてきている新芽がたくさん見えていた。


(これは薔薇だなぁ。こっちはブルーベリー。こっちは……ローズマリー。って……もう新芽どころか紫色の蕾がたくさんついてるし。こっちはラベンダー…かな?葉っぱがローズマリーと似てるけど銀葉だし)


全て30リットル以上の大きな鉢に植えてある。
理由は簡単。雪が降った時に、雪かきの邪魔にならないように全て庭の一角に移動できるようにしてあるんだ。
そのルールさえ守るようにすれば、雪の時期も暮らしやすい庭の出来上がり。

という事で、雪囲いを外して庭の一角に集めておいた鉢達も、雪解けと共に姿を現したので……って、あ、庭の一角ってね、雪かきをしない所に集めておくから、降雪と共に埋もれて封印されちゃう。
だから、雪が溶けてこないと鉢を救出することができないんだ。

ひとまず救出した鉢を、玄関先に適当に並べたところでこの前の作業は終了していた。

ちなみに、うちは旗竿地といって公道に面したアプローチから玄関ドアまでが30メートルほど離れているので、アプローチに鉢をずらりと並べて毎年楽しんでいるんだ。


「……ちゃ!ばーちゃ!」


舌ったらずな子供の声が部屋から聞こえてくる。
あら?と、思いつつふり返ると孫がいた。初孫だ。

顔を真っ赤にさせて、髪の毛が汗でぺったり濡れて逆立っていた。
タオルケットを毛布にしてリビングでお昼寝中だったのだけど、蒸れて起きちゃったのかな?


「ばーちゃ!ぱおる!ぱおる、どこ?」

「はいはい…あーごめん、さっき洗っちゃったんだった!お庭にあるから…乾くまで、待てる?」


ぱおる!と叫んでいるのはバスタオルの事で、彼はこのタオルがないと落ち着かない。
何をするにもどこに行くにもタオルを持参していて、もちろん寝る時も必須…なのだけど、流石に酸っぱ臭かったので、昼寝をしたタイミングでこっそりと回収して洗ってしまったのだった。


「やー!ぱおるっ!!」

(あ……行っちゃったか。でも流石にあれは不衛生過ぎだったから…ごめんね)


初孫はウッドデッキから姿を消すと、玄関ドアからちゃんと靴をはいて家の南側へと走っていった。
……まだオムツが外れていなくて、走る姿もお尻をぷりぷりさせるような走りで可愛らしい。

後を追うように家の南側へと向かうと、物干し竿の下で必死にぴょんぴょんと干されているタオルに向かって飛び跳ねていた。


「ばーちゃ!ばーちゃ!とって!とって!」

「うーん、まだ濡れてるよ?キレイキレイしてるから、もうちょっと待って?」

「ぱおるぅぅぅ」


途端に目に涙がたまり始める。
でも、濡れたままの状態で返すわけにもいかないので、抱き上げてタオルの端を触らせてみる。
予想外の冷たさだったのか、ぎゅっとタオルを掴んだまま眉間がしわしわになっていった。


「ほら、つめたいよ?もうちょっとしたら、ふわっふわのいい匂いになるから。良い匂いタオル、幸せだよ~?」

「しゃーしぇ?しぁーしぇ?」

「し・あ・わ・せ。気持ち良いのよ~?」

「きもちぃーの?」

「そう、気持ち良いよ~。そうだ、タオルが乾くまでお庭ここで遊んじゃう?」

「うん!あちょぶ!」


あぁ、やっと気をそらせた!と、少しほっとしつつ玄関の棚に用意しておいた、子供用のおもちゃをまとめてあるカゴを出す。


「今日はねぇ……シャボン玉とブーブあるよ!」

「あわあわしゅるっ!」


あわあわ!と言われたので、シャボン液をボトルから小皿へと注ぎ、シャボン玉用のおもちゃを渡す。
すると嬉々としておもちゃを小皿のシャボン液につけると、遊び始める。

おもちゃは拳銃のような形をしていて、引き金を引くと先端のプロペラが回り出して、大量のシャボン玉が出てくるような仕組みだった。

ストロー状の吹くやつは、まだ使えなかった。


(この子はシャボン玉、好きだなぁ…これでシャボン液の500ミリリットルのボトルが空いちゃったよ)


初孫は、自分の時代の育児と比べてしまうと、かなり色々と遅い子だった。
3歳なのにまだオムツだし(息子の時は保健婦さんから『普通なら1歳で外すんだからね?』って注意を受ける時代だったのよ)
喋り方も、どうにも舌ったらずで。
……寝る前に哺乳瓶でお水を欲しがったりもしている。

私の同年代からは『親からの愛情不足では?』と言われそうな勢いだけど、もしそうだったとしても今はしょうがないんだ。
初孫の両親が悪いわけじゃないし、虐待なんてことも絶対にない。
数日前に母親が入院してしまい、そして間の悪いことに父親も遠方への研修期間中だった。

初孫は母親の両親へと預けられるのだろうと思っていたら、なぜかうちへお願いが来た。


(私だったら姑にお願いとか、関係にもよるけど正直あんまり信用できないのになぁ)

実家うちよりお姑さんおかあさんの方がご飯美味しいから」


初孫の母親である義理娘が笑っていたけど、自分の夫方の親の顔を立てただけとかだったらどうしようか?思いっきり不安にさせてたらどうしようか?と、内心ヒヤヒヤだった。

ちなみに美味しいと褒めてもらったけど、私は料理が得意ではない。旦那は得意だけれど。
……旦那は休日に暇さえあればキッチンにこもって焼き菓子を作ってみたり、新しい料理に挑戦したりしている上に手際も味も良い。

旦那が使った後のキッチンは、私が使った後よりも、普段よりもぴかぴかになるのでキッチンを使われることに対しての不満も何もないし。
だから、もしかして旦那の料理を私が作ったものと勘違いしてたりしないよね?とも思った。


(あ、そうだ、今日は肉料理だけど……そうか、初孫がいるからお肉は柔らかい方がいいんだものね)


噛みきれない肉を食べさせて、肉嫌いになられても申し訳ないし、今日はオリーブオイル漬けにしよう!

そう唐突に思いついて、さっき見かけたローズマリーを使おうと考えた。
おろしにんにくとオリーブオイルとローズマリー、塩胡椒と、お肉を袋に入れて揉み揉みして冷蔵庫に入れて。
夕方、そのまま焼けばいいだけだから簡単な上に、オリーブオイルを吸った肉はとても柔らかいのですよ!


「さて、ばーちゃん、元気の葉っぱをとってるからね」

「はっぱ?げんきになう?」

「そうねぇ、とっても美味しいから、食べたら元気になっちゃうよ!」

「……ママもげんきになりゅ?」


あ……すまん。と思った時には後の祭りなんだけどね。ごめんなさい。
それと、ママにこれ食べさせるどころか…この匂いを嗅いだだけで、すごい勢いで吐くと思うの。
私達には食欲を刺激しまくる良い香りだけど、ニンニクまで入ってるからなぁ。
君のママにはとってもキツい拷問の様な香りなんだよ。


「ママのおなか、たいたいなの」

「ママは……まだ食べれないかなぁ。あとでじーちゃんが帰ってきたらママに会いに行こうね」

「うん……ママのたいたいなおしゅ、はっぱある?」

「ママはお茶ちゃん好きだから…お茶ちゃんもね、葉っぱから作れるのよ。でも、病院だとペットボトルのお茶ちゃんの方が飲みやすいかな?お茶ちゃんお買い物して持っていってあげようね」


たしか『病院のお茶でノンカフェインは麦茶だけで飽きた!』ってベッドの上で拗ねてたから、近所のスーパーに寄ってハーブティー系を探してみようかな?
苦手な味だったら、次回のお見舞いの時に回収してくればいいだけだもんね。


(そうそう!カフェインレスってのは微量にカフェインが入ってるらしいのよね!『カフェインレスって書いてある紅茶が売ってたよ』って教えたら『それはカフェインを90%くらい除去したよ!っていう意味なのよ』と義理娘に教えられた。知らないで持っていってたら、嫁イビリみたいになっちゃうところだったわ……紛らわしい!)


「おてつだい、がんばりましゅ!」

「一緒に頑張ろうね!」

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