私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
221 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

221、花丸あげるよ。

しおりを挟む



孫も、ママも頑張ったんだよね。
いっぱい頑張って寂しさを乗り越えて……家族が増えて。

そう、今回の入院はママが倒れたんじゃないんだ。ママが不調なのでもない。
お腹の赤ちゃんの様子がちょっと……ね。
それもあって管理入院っていうのかしら?急遽入院してしまったのだ。

私の息子でもあって初孫このこの父親は、出産時期に仕事が立て込まないようにと調整した結果、今年度中に受けなくてはならなかった遠方への研修を、年度始めのこの時期に入れた。

本当なら、この研修が終わってからはほぼ残業なしの定時帰宅になるはずだった。
大きなお腹ではどんどん出来ることが減っていってしまうからと、その後の妊婦検診も同行できるように、出産にも立ち会えるようにと、スケジュール調整をしていたのだそうだ。

妊娠は病気じゃない。だから何があるかわからないから大変だよね。本当にこれ。
病気じゃないから悪阻も浮腫も、不安定すぎる精神状態も妊婦である本人ですら、どう対応していいか分からない。


(だって病気じゃないから、はっきりとした原因が不明だから)


だから『治すための薬も無い』だって治すべき病気じゃないんだもの。
ただただ、お腹の赤ちゃんが不機嫌だっただけかもしれないし、1人分の臓器で2人分の命を支えてる高負荷からの身体の誤作動かもしれない。

私の時は周囲に『妊娠は病気じゃない。甘えるな』って言われたけどね。
でも、辛いものは辛いんだもの、しょうがないじゃない。

そうやって両親が頑張って、それでもどうしようもなくて祖母わたしが預かった。

そんな初孫も一生懸命寂しさと闘いながら頑張ってる。

ぐー掴みだったスプーンが、綺麗に使えるようになったよ。
オムツも夜、寝る時だけになったんだよ。
お着替えも、脱ぐだけなら全部自分で出来るようになったよ。


「ほんとはね、ままにほめてほしいのよ。でもね、ママもがんばってゆの」


言葉に「ほめてほしい」と出てしまうくらいに、自分に言い聞かすようにして顔を真っ赤にして眼に涙を溜めて……いっぱい我慢してがんばっていた。


そうして、2ヶ月近い入院の後に無事に赤ちゃんが生まれて、この子はお兄ちゃんになって。
嬉しくて嬉しくて、弟も小さくて可愛くって、みんなもおめでとうって祝ってくれて。
大好きなママも可愛い弟も病院から帰ってきたけれど。

パパもママも新しい家族おとうとにつきっきりになってしまうから、みんなが嬉しいはずの家族の中で『お兄ちゃん』になったこの子は結局、寂しくて。

ママにぎゅっとして欲しいのも我慢、1日頑張ってきたことを褒めて欲しくても我慢。
ママの胸に大切に抱かれている弟のために、育児でいっぱいいっぱいのママのために、ずっとずっと我慢して。

……我慢の反動からか、ある日いきなり赤ちゃん返りをしてしまったけど、弟の育児がひと段落する頃には、優しいお兄ちゃんになっていた。


(あ……そうだ、これ夢だわ。懐かしいなぁ……季節のご挨拶ってことで月1程度に送られてくる息子のメールから『孫が増えるよ!』って話を聞いた。基本的にはメールのみで関わらないようにしていた息子夫婦からのSOSがあって……出産までのお手伝いをしたんだった)


唐突に『これは夢だ』と気づくと、急に世界が歪み始めていった。

そうだよね、これは夢だよ。
だって、さっき預かっていた孫だって最後に会った時は高校3年生だったもの。
週に何日かは、学校帰りや休日に遊びに来てくれて、家の仕事を手伝ってくれる優しい子だった。


「ばあちゃんのご飯が食べたい」


いつもそう言って笑ってる。
育ち盛りの食べ盛りに、年寄り向けの料理なんて、美味しく無いだろうに。
どう考えても、祖父母を心配しての定期的なお手伝いと安否確認みまもりだったのだと思ってる。
感謝感謝だ。


(もう会えないのはわかっているけど……成人まで見ていたかったな)


急に寂しくなって周囲を見渡す。
……気づけば、誰もいない、何もない部屋になっていた。
庭はいつも通りの景色なのに、何故か物悲しい雰囲気がある。

そして視界の端から……景色が黒く崩れ夢の終わりを理解する。

まだここに居たいのに。まだ見たい人がいるのに。まだ逢ってない人もいるのに。
ああ……さよならだ。
また、夢で逢えるだろうか……?

黒く崩れた後は、真っ白な、一面雪景色のように眩しくて真っ白だけの視界になった。






******






懐かしい夢だったなぁ。


(なんで夢だって気づいちゃったんだろう……もうちょっと騙されたままで浸っていたかった)


すごくもったいなかった!と思いつつ、手元のふわふわな毛布をたぐり寄せるが、毛布はするりと手からすり抜けて、ふんわりと私の顔を上に降りてきた。

気持ち良いのだけど、毛布が欲しいのはそこじゃない。
もう一度掴んで、毛布から顔を出そうとすると、その毛布はまたするりと手から抜けるように逃げて、ふわりと顔に降りてきた。

……ん?んんっ?!


(毛足の長い毛皮の毛布ってなんだよっ!?)


そういえば、ゼンに抱えられて寝てしまったんだっけ。
でもここは、芝の上じゃなくてベッドの上だよね?だって、シーツの柔らかな感触があるし。


(とりあえず、この毛布……顔にかけるのはやめて欲しい!)


毛布を再度掴んで…ん?なんで掴めるんだろう?
そう思って、うっすらと眼を開けると……目の前に尻があった。
しっぽの生えたおしり。


「これ、毛布じゃないじゃんっ!!!」

「おっ…起きて第一声がそれ、なのかっ…!ぅぐっ…あははは」


夢の続きかと思うほどにリアルに目の前におしりがあって、幼少時の息子や孫にしたように、反射的に「かんちょー!」とつつきそうになったのは、内緒にしとく。
……子供の寝相って、激しいんだよねぇ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...