私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

218、魔力切れ。

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はぁ…。と、ため息とともにレオンハルトは、膝を抱えて顔を伏せてしまった。


「え、ちょっと、あからさまにがっかりしないでくれるっ?!僕は養成所あっちで一戦交えてから、王宮こっちに来てるからね?」

「……空から来たのは何で?」

「あ、うん。養成所あっちには朝イチで着いてさ、準備もすぐ終わっちゃったから、今日の授業からの受講にしたんだ。で、座学を受けてたら、いきなり剣を構えた騎士が教室に雪崩れ込んできてさ……」

「戦ったのかっ!?」


はっと顔を上げて、ユージアを見上げている。
そういえば僕もユージアの戦闘は見たことがなかった。

戦闘と言っていいのかわからないけど、『籠』ではセシリアを小脇に抱えて…防戦一方だったけど、攻撃はしっかりと避けていた。
ただ、『隷属の首輪』で操られていた時に、セグシュ兄様と交戦状態になり、深傷を負わせたという話は聞いていたので、レオンハルトほどではないが思わず期待を込めた眼差しで見つめると……にやりと意地の悪そうな笑みを浮かべて首を振られてしまった。


「騎士団って戦いのプロだよ?そんなのに、僕が敵うわけないでしょ?」

「じゃあ怪我はっ!?」

「あ~ないない。鎧を着た人間から逃げるのなんて余裕だし。ただ、うまく躱して建物から出たら、こんどは暗部……殺し屋ね。単騎で動くような奴らに、群れを成して追いかけられちゃったんだけど…ね。まさか二段構えでくるとは思わなかったよ」


あはは。と疲れた顔で笑って見せる。
笑いながら、僕たちと向かい合うように座る。
ユージアの背後では、龍の奥方が同じように芝の上に座り、女の子を膝に乗せ絵本の読み聞かせのようなことをしていた。
……そのさらに背後では命をかけた戦いが繰り広げられているわけだけど。


「殺し屋って…よく気付けたな」

「顔馴染みというか、知ってる顔があったからね☆」

「どういう知り合いだよ……」

「教会に出入りしていた人達だったんだよ。そもそも僕、教会って殺しの発注を仲介したり、取りまとめてるのが仕事なのだと思ってたくらいだし」


今考えると、とんでもない団体だよね。と肩を竦めているが…とんでもなさすぎるだろ。
少し遠い目になるが、隣に座っているレオンハルトは動けなくなっているはずなのに、気持ち前のめりになりながら、ユージアを食い入るようにして見つめている。


「まぁ……殺しのプロに大挙して押し寄せられたら、どんなに素早くたって流石に逃げ切れないよなぁってなった時に」


ユージアは勿体ぶるように、わざと話を止めて、にやりと笑う。
話の続きが気になるのかレオンハルトは目をキラキラさせていた。


「なんと!背中に真っ白な大きな翼が生えましたとさ!」

「は?」

「えっ?」

「羽だよ羽。天使の輪もついでについちゃったかと思ったけど……風の乙女シルヴェストルの魔法だよ。風の乙女シルヴェストルが間一髪の所で空に引っ張り上げてくれたんだ。まぁそれは良いんだけど、これが逃げてる途中でいきなり姿が消えちゃってね。一緒に背中の羽も消えちゃうし。で、勢いのまま、ぽーんっとここに」


ぽーん。と面白おかしく笑って話しているけど、実際はどれほどの恐怖だったのか、想像つかなかった。


「ぽーんて……よく生きてたな」

「ほんとそう思う!いやぁ、ここで水球作ってキャッチしてくれなかったら、やばかったと思うよ?」


それに関しては、龍の奥方の指示だったことを話すと、ユージアは目を丸くして、背後で親子で寛ぐ奥方と女の子へとお礼をしていた。
何のための水球なのか説明もされずに急いで作ったものだけど、龍の親子はあの時点でユージアが見えていたのだろう。
種族差とはいえ、恐ろしい察知能力だと思う。


「魔力切れなのは何故?」

「ああ、着地するときに全力で障壁を張ってから水球に飛び込んだからね。いくら水球があったとしても、あのまま飛び込んだら、着地じゃなくて着弾になってたかもなぁ……スプラッタな事件が起きてたかもね……!」

「怪我……本当に無いのか?」

「うん!魔力もないけどね!……正直なところで言えば10代の姿の維持も、キツかったりするんだよね」


そう言いながら、自分の手足をふるふるしてみせる。
そういえば……ユージアには『本当の姿』があった、確かセシリアと同じ歳くらいで……実年齢はエルフならではだけど、小さい時のまま意識が途絶えていたとかで、精神なかみと同じ姿になってしまう魔法がかけられていると聞いた。

その魔法を利用して、魔法の効果に抗う魔力を常に使い続けることで、魔力の微量な操作や放出の仕方の訓練、ひいては自らの姿を一定の年齢に保っている、ということだった。


「レオン王子……?」

「レオンでいいと……言ったのに…」

「じゃあ、レオン。なんかとっても焦ってるけど、何かあったの?」


ごそごそと、腰に巻くようにしてあるベルト式のポケットに手を突っ込んで何かを探しつつユージアはレオンハルトに問いかける。
そして「あった!」と、何かをポケットから取り出すとにっこり笑う。
……今度は色とりどりの砂糖菓子を配り始めた。


「可愛いでしょ?金平糖って言って、お砂糖の塊なんだって」

「……お菓子いっぱい持ってるんだな」

「あははっ。今日の授業がさ、貴族の娯楽って内容だったんだよ。それでね、今の流行のお菓子と一般的な遊びとかの説明を聞いてたんだよねぇ……中断しちゃったけどさ。あ、初日から早退……いや、あれはサボりになっちゃうのかな?!」


金平糖を摘みながら、ぼんやりと空を見上げる。
ユージアとレオンハルトとの会話が続いていくけど、正直眠くてしょうがない。
寄りかかっているゼンナーシュタットの体温と被毛で、勝手に目蓋が落ちてきてしまう。


「ここまで甘いものが続くと、お茶がほしくなるな…」

「レオン…さすがにポケットから飲み物は出てこないかなぁ…でも、楽にはなってきた?魔力切れると、やたらと眠くなるんだよねっ」

「眠いのもあるが、動けないのがなんとも」

「うん、だからさ、レオン。寝ちゃおう?」


ユージアが満面の笑みを浮かべつつ、眠そうに眼をこする。
賛成……したい。しても良いのかな?とレオンハルトを見ると、同じく眠そうな目を見開き、驚くというよりは怒っている表情になっていった。


「は?!このタイミングで!どういう……」

「今は龍の奥方…奥様?うーんなんて呼べばいいんだろう?まぁ、守護龍の奥様が結界をここに張ってくれてるんだよ。それってめちゃくちゃ丈夫だから!だから、安全なうちに眠って回復しておいた方が良いかなって。どう思う?」



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