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はじまりはじまり。小さな冒険?
223、合流しました。
しおりを挟む守護された国に住んでる人は、王族ではなくても恩恵を受けているんだ。
だから、国民は守護されていることを誇りに思うし、龍を神格化するほどに大切にする。
特に魔法を使う人にはこれが重要で、その守護の範囲外に出てしまうと、魔法の威力が格段に下がる。
感覚としては……そうだなぁ。
シシリーみたいなへっぽこ魔法師ですら、守護の範囲外に出た途端に、脱力したような感覚に襲われていつも通りの魔法の威力が出せなくなる。
まぁ、それが本来の実力なんだけどね。
……それを嫌がって、守護されている国から一歩も出たがらないと言う魔法使いも多いのですよ。
そんな喪失的な脱力感は感じていない気がするので、守護が切れていないと思った。
つまり龍は無事であるという事。
龍が倒されていないのなら、守護龍に文字通り守護されている王が弑されるという事はほぼ無い。
万が一、王が弑されたのであれば……レオンハルト王子かシュトレイユ王子のもとへ、次の親愛の相手として守護龍が姿を現しているはずだ。
シシリーの魔導学園で『王族と守護龍』の「継承
の項で習ったと記憶している。
……守護が王家と龍との『血の契約』だから、契約を更新するか終了するか見極めにくるんだ。
「僕は……役立たずだな。本当に、何もできない。何も知らない」
「?」
悔しそうに俯いたまま、絞り出すように呟かれた言葉に、私は『大丈夫だよ』と、安心させたくて浮かべた笑みのまま、小首を傾げる。
(レオンハルト王子って以前から思ってたけど、かなり真面目な子なんだろうなぁ……)
みんなの素敵な『王子像』をしっかり演じきろうとしているようにも見える。
素直というか…言いつけも、ちゃんと守ろうとしてたし。
でもそれって、みんなの理想像であって、生きてる王子には無理だろっていう超人的な行動への期待だって混ざってるわけで。
ほら、白馬の王子様的なやつだよね。
ばっさばっさと敵を薙ぎ倒しちゃって、尚且つ頭も超良くて、臣下にも超慕われていて?
しかも、こういう時の敵って余所の国の騎士や、一般的な冒険者が倒せないようなとんでもない魔物が相手だったりとか。
(……それを単騎で余裕で倒しちゃう素敵王子様とかだったら、ぶっちゃけ国に騎士とか要らないし、いや、そもそも、人間辞めてるような存在だと思うのよね)
レオンハルト王子自身は、どんな王子様になりたいんだろうね?
周囲の『こうであってほしい!』じゃなくて、レオン王子本人の理想はどこにあるんだろう?
「レイのように珍しい属性持ちでもない、精霊もない、速さだってエルとカイには敵わない。魔力だってユージアやセシリアにはかなわない……」
「……?」
「僕は……っ!」
魔力か……でも、魔力だけあっても、操作が下手だったら魔法ってまともに使えないんだよね……それもあって…って、あ!
なんかもう、笑いすぎての泣き笑いから、今度は顔をぎゅっとしかめて泣きそうになっているレオンハルト王子そっちのけで必死にポケットをあさり始める。
確か持ってきてるはずなんだ。
がさかさとポケット内の色んな小物が手に当たる中から、これだ!と思うものを取り出していく。
……やっぱり持ってきてた!
「あ!そうだ!レオン、おみやげあげる」
「お土産?」
「うん、おみやげ!」
私の唐突な提案に、きょとんとしているのが見えた。
うん、泣いてるよりは良い顔!
目指すものが完璧王子だろうが良いお兄ちゃんだろうが、今は泣いてる場合じゃないよ?
非常時こそ、まずは状況を把握しなくちゃだ。
よいしょ、よいしょ。とエルを乗り越えて……と、着地点のベッドのスプリングの反発の良さに、妙に跳ねて思いっきり尻餅をつき、そのままずりずりとベッドから滑り降りる。
一瞬、ぶふぉっ!とか聞こえたけどこの際気にしない。
レオンハルト王子の座るテーブルセットの向かいのソファーに座ると、握り締めた手を目の前に差し出した。
つられて差し伸ばされたレオン王子の掌にころりと、ポッケから出したものを転がした。
「指輪……?」
「つえ、なの。ちいしゃいから、なぐれないけど、まほうはじょうずになるよ」
「杖……か?そうは見えないが」
レオンハルト王子は、手の上に置かれた指輪をまじまじと見つめている。
材質は白銀だったはず。
ミスリルに模様を彫金して、リングの内側の真ん中あたりに小さな魔石がはめてある。
正確には魔石じゃないんだけどね、杖の核石だし。
しかもリングの内側につけてあるから…一見したらとてもシンプルな金属のリングでしかない。
これ、結構重要なんだ。
杖の機能は核石があるからこそだから、壊されてしまったら杖としては、再起不能になる。
一応護身用の杖だから、簡単に核石が壊されてしまったら護身用として役に立たないからね?
護身用と言いつつ、指輪だから普段使いに便利すぎて、ずっとつけたままにしてた時期がシシリーにもありました。
「つけてみて?」
「サイズが…あれっ……」
指を通した途端にリサイズされるんです。
ピタリとはまり込んだ指輪と自分の指をと交互に凝視しているレオンハルト王子。
ジャストサイズにはまり込むし、つけっぱなしにしても血流を圧迫したりもしない。
武器としても重宝される貴重な金属なのにね。
魔道具として加工されてしまうと、リサイズ程度なら伸び縮みするような素材にできてしまう。
あ、リサイズ以外の場面での強度は通常通りの金属そのものなんで……しっかり硬いですよ?
「これで杖なのか…?マジックアイテム?」
「つえだよ。レイのぶんもあるの。でも、みんなには、つえなのは、ないしょね」
「……わかった。護身用か」
言わずともわかるってことは、そういう身にかかる危険のお話を誰かから聞いて勉強したのか、危険な目にすでに遭っているのか……前者でありますように。
平和が一番ですよ……。
「ねぇ、ルークせんせいは、いないの?」
「いない。あと、ここは王宮じゃ、ない」
「えっ……」
「レイと王宮中を探検したことがあるが、こんな部屋、見たことないぞ」
「えぇぇぇ……」
えええ。としか声が出なかったわけだけど、だとしたらどうやってこの部屋に来たんだろ?
王子たちが寝てたにしても、ゼンナーシュタットは?眠そうにしてなかったし、というかあの仔、最初っから昼寝してたもの。
ゼンまで寝てたってことはないと思うんだ。
逆にゼンまで寝てた、という状況を考えると。
魔法や薬で寝かされてしまった?やっぱり誘拐!?
ぞわりぞわりと背筋を冷たいものが走り始める。
……もしかして、死刑台への控室だったりしないでしょうね?!
そう思いはじめたそばから、大人の足音が近づいてきた。
反射的にびくりとして、レオンハルト王子も私も息を潜めると、ドアをじーっと見つめる。
そのまま通り過ぎてくれますようにとの無意識の願いは叶わず、ドアノブが動き出し、金属の擦れる音が響いた。
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