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はじまりはじまり。小さな冒険?
224、だーれだ。
しおりを挟む「あー……本当にいた」
軽いノック音の後、ドアが開かれ入ってきた、大人の第一声だった。
ふぅ。と、息を吐き目深に被っていたフードを外すと、金色の髪がふわりと広がる。
いつの間にやらレオンハルト王子はソファーから立ち上がり、私を隠すように前に立っていた。
そのレオン王子の前に真っ直ぐ進むと、金の髪の青年はひざまずく。
「王子、子供達を守ってくださり、ありがとうございました。セシリア…久しぶり」
金髪という事は、多分王族……でも王家の長男はレオンハルト王子だから、彼より歳上はいない。
となると、もう1人の宰相の息子さん?……いや、確か母様の話によると新婚だったはずだからこんな大きな子はいない。
従兄弟ではないとすると、金髪……えーっと…。
「泣かずにえらかったな!って……ん?……?」
髪の色といい瞳の色といい、このレオンハルト王子にそっくりそのまま成長させたような、この端正な顔の青年は、セシリアの兄のうちの誰かなのだろうという結論に辿りつく。
彼は人懐っこい笑顔を浮かべると、私の頭をくしゃくしゃと撫でながら、私の顔を覗き込んで一瞬目を見開くと、悲しそうな顔になる。
「えー…私の事、忘れてる?!」
「……あっ!ゔぃんしぇんとにいしゃま…?」
「……忘れてたね」
思いっきりがっかりされてしまった。申し訳ない。
……幼児期は特に数ヶ月おきに会っていても、綺麗さっぱり忘れ去られていることがある。
「ばーば」って呼んで思いっきり懐いて遊んでくれてたじゃない!って思うのだけど、2ヶ月ぶりに会った孫はつかまり立ちを卒業して歩けるようになって、可愛さ倍増していたのに……代わりに私と遊んだ記憶は綺麗さっぱり消えていた!ということがよくあった。
あれかなり悲しいんだよね。
ヴィンセント兄様、ごめんなさい。
「くっ…ははっ。で、本当に思い出せたのか?はははっ」
「ゔぃんせんとにいしゃま!ですっ」
これは確信だからね?!当てずっぽうじゃないよ?
レオンハルト王子がまた爆笑しはじめちゃったけど、この人は絶対にヴィンセント兄様!
……セシリアの兄の中で金髪は2人いる。
正直そのどちらも、直近ではあまり会っていなくて……まぁ成人しているし、同じく成人しているセグシュ兄様と違って、学園も卒業しているし、すでに婚約ではなく結婚をして家を出ているのだ。
長男であれば20歳、次男でも19歳。
今世では、もう完全に立派な大人です。
ただ、フードの下から白と黒の襟元が見えたから、ヴィンセント兄様かな?と思ったんだ。
ほら、治療院の研修で母様に習ったヴィンセント兄様は、その厳しさに泣いたって……。
白と黒の襟元は……母様の着ている治療院の衣装と似ていたから。
「いや、いいんだ、最近はほとんど会いに行ってなかったもんね…最後に会ったのは…年初めの儀以来だもんなぁ……」
「にいしゃま…?」
「あの時はまだ喋ってなかったし…名前が出てきただけ、マシだよね…」
喋ってたからね!?年初めの儀って言ったら、前世でのお正月だから!
その頃は2歳後半ですよ?!ちゃんと喋ってます!……まだオムツだったけど。
ていうか、レオンハルト王子、笑いすぎだからね?!
「セグシュとフィリーもここに来るはずだったんだが…まだ着てないのか」
「2人はまだです。あの…外の様子は…?」
「あぁ、不安になるよな。すまん。みんな無事だよ。首謀者も確保済みだし」
立ち話もなんだからと誘導されてソファーへ戻ると、レオンハルト王子は先ほどまで腰掛けていた場所へ座り、私は何故かヴィンセント兄様に抱えられて、膝の上に座らされる。
「ただ、他にも潜伏者がいないか?とか、そういう後処理の為に、リストに上がっていた王子達をここに一時的に避難させる事になったんだよ」
……そういや、今回の反乱の『首謀者』って誰なんだろう?
セシリアを誘拐するなら教会だろうと勝手に決めつけていたけど、実際に一度誘拐してるわけだし?でも、王子達の身の安全まで確保しなければならなかったと考えると……王位というか、国自体の敵なのかもしれなかった。
……一応、そういう意味では私も王位継承権があるから。
国の転覆を狙うのであれば、王家の血筋を根絶やしにするためにも、リストに入っちゃうのよね。
(あ、いや、そもそもその『リスト』ってなんのリストだろう?殺害リスト?捕獲リスト?…その内容によっても目的は違ってくるのか)
うーん。と、唸りそうになる勢いで考えこむ私とは裏腹に、ヴィンセント兄様は真面目な話をしつつも私の頭を撫でて「いっちょまえになったなぁ」とかぶつぶつと呟いているのが頭上から聞こえてくるし、向かいに座るレオンハルト王子はこちらを見ながら顔を真っ赤にさせて爆笑中だし。
いまいち締らない上に、なにか釈然としないのだけど……。
「あっ!そうだそうだ!セシリア。キミの精霊が大暴れしてるんだった!一度引っ込められるかい?」
『暴れてるのは、僕じゃないよ……』
「うわっ!ちょ…と。1人じゃなかったのか……凄いな」
それはルナですか?フレアですか?と、尋ねる前にすぅっと音も無くレオンハルト王子の隣に座っている状態で実体化をして姿を現したルナ。
もう、気配もなにもどきっとするくらいオバケのようだったよ!
同じタイミングで彼らのソファーの後ろに立ち、ルナの肩を励ますように叩くと、部屋の奥へと行ってしまったフレア。
彼らの唐突過ぎる登場に、思いっきり爆笑していたレオンハルト王子ですら、その笑った顔のまま固まっていた。
なかなか良い変顔のようになってる……ちょっと写真があったら撮りたい。
『セシリア、さっきはごめんね』と小さく一言、ルナから聞こえて……そこからあとはヴィンセント兄様へ視線を移すと会話を始めてしまった。
『暴れてるのは僕の眷属ではあるのですが。僕の命令ではないです』
「眷属であるなら、キミの方が上位なのだろう?鎮めてくれないか?」
『あの人達は彼らを怒らせすぎてしまったんです。怒りが強すぎて僕の声は届きません……聞こえたとしても、彼らは奪われたモノが帰ってこない限りは、止まるつもりもありません』
ルナは哀しそうな顔をして俯いてしまった。
妖精達の行動は、もっともだという事だというのもわかる。でも罰を受ける人間側としてはとんでもない恐怖であるし、普通では起こり得ない事なので……やってはいけない事だというのもわかる。と言った感じかな……。
なかなか難しいね。
そして、ルナがそうやって双方の考えを汲めるようになっていた事実に、こっそりと嬉しくなった。
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