私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

233、ご飯を食べよう。

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「おまちどうさま~……じゃなかった!お待たせいたしました…?」


食事は簡単に済ませよう。との事で、食事はみんなが座ってたソファーセットのテーブルに並べられた。
大皿料理で小皿がそれぞれ用意されて、みんなで取り分けていくスタイルだった。

最初に置かれたのはいくつかの種類のパンに鮮やかな野菜や肉が挟まれたサンドイッチと、黒い紙のようなもので包まれた白飯のかたまり……そう、おにぎりだった。

しかも筍ご飯のおにぎりがある!
思わず目が輝いてしまったのは私だけではなくて、エルネストも嬉しそうにおにぎりに手を伸ばしていた。


「里の食堂みたいだな…王都にも米があるんだ」

「エルは知ってるの?このサクサクしたやつとか!」

「ああ…これ、筍だろ…ですよね?」


不思議そうに聞いてくるユージアに、普通に返したあと姿を見て我に返ったかのように急いで敬語に変えるエルネスト。
あぁ……ユージアってば縮んでる時はエルネストより年下だけど、10代の姿の時は年齢差が逆転するんだものね、紛らわしいよね。


「敬語いらないから。そんな無理して喋っても楽しくないわよ」

「楽しく…ってフィリー姉さん…まぁ、エルも公の場じゃないから、普通で大丈夫だよ」


サンドイッチよりも見慣れない料理に興味を惹かれたのか、フィリー姉様は俵むすびのおにぎりを頬張りながら、笑う。
私もこれは是非食べねば!と手を伸ばした。

……筍ご飯大好きなんだ。
前世にほんの実家の敷地には竹林があって、春になると桜が散り終える頃から、ニョキニョキと筍が顔を出し始めるので、細長いスコップを持ってほくほくと掘りに行った記憶があるよ。
地面から頭が出るかでないかくらいの筍が美味しくてね。
慣れてくるとなんとなく『ここに筍があるな』って分かるようになるんだよ。

懐かしいな……北海道で1人暮らしをしていた時に、上司にタケノコが食べたいって話をしたら、山菜の水煮の中に混ざってるような物凄く細くて小さな筍の料理をいただいてしまって……美味しかったのだけど、これじゃないとは言えず、ちょっと寂しくてね。

採れすぎたからって母が冷蔵クール便で送ってくれた時は、届いてすぐ箱を開けたのに、完全に冷えてるはずの筍が、アク抜きするために外皮を少し剥いたところから、中心に向かってほんのり温かく感じて…いつも当たり前にしていた事だから、急に懐かしくなって、ほろりと泣いてしまった事がある。
……ホームシックじゃないからね!

筍ってすぐ熱をもつんだよ。
その熱で美味しくなくなっちゃうし、すぐダメになっちゃうの。
だからね実家にいた時も掘りたてでも、急いでアク抜きの準備をしなくちゃいけなかったの。

懐かしさと久しぶりの筍ご飯に、思わずほろりと涙ぐみそうになったところで、はっと我に返る。
ここで泣いたらダメだよね?
「懐かしかったから」とか理由に言えないし、言っても「3歳児ようじが何言ってるんだ」ってなっちゃう。

必死に堪えて、顔をぎゅーっとしてから、一心不乱に筍ご飯にかぶりついた。


「……で、タケノコってなんなの?歯応えがすごく面白くて、美味しいわ!」

「えっと…里の近くに生えてて……」


私と同じく筍ご飯を頬張って、うまく説明できそうにないエルネスト。
ユージアも小皿にいくつかの俵にぎりを取り分けると、黙々と食べ始めていた。
サンドイッチとおにぎりとか、完全にピクニックとかイベントのお弁当って感じだね。


「ああ、王都付近では…珍しい食材だな。エルネストは南西の出身だったか」


ポツリとルークが説明の続きをしてくれて、エルネストが小さくコクリと頷いた。
……同じ種族でも里の位置は随分違うんだね。カイルザークの住んでいた里は中央公国よりもさらに北の国だから、気候も真逆と言って良いほどに違う。


「これは『竹』と呼ばれる植物の…芽だ。子株とも…言う」

「竹ですか?薬草の芽が食事に……」


竹という言葉にヴィンセント兄様が反応していた。
治療院だと薬にも詳しいから、薬草であればって……竹って薬草だったんだ?!
まぁぶつぶつと神妙な顔をしながら、筍ご飯の俵にぎりを食べている。


「これも薬草ですか?」

「ああ、薬草としては竹の内の皮を使うんだが、解熱や痰切り、胸のムカムカを落ち着けたりする薬効がある……群生するタイプでね、王都周辺では珍しいんだよ」


フィリー姉様の勢いに気圧されてしまったのか終始無言だったレオンハルト王子が、ヴィンセント兄様に話しかけていた。
薬草だったんだ……今まですごい勢いで食べまくってたけど、薬効を感じたことはないような…鈍かっただけなのかしら?


「面白い……食事だね?」

「おにぎり…」

「うん。ルナがセシリアが好きだろうからって準備したんだよ。ちょっと変わってるけど、僕も好きだな、このおにぎり」

「セシリア?これっておにぎりっていうの?よく知ってたわね?」


ユージアと何気なく話していたら、しっかりフィリー姉様に聞かれていたようで、びくりとする。
食べるのに必死で気付かなかったということにしてスルーしてしまったけど、言動には気をつけなければっ!

ていうか、ルナ、私の思考読んだわね……。
でも、嬉しい方向の暴走だから、これは許しちゃおう。


『……味噌汁もあるよ?』


フレアがにこにことカートを押しながら近づくと、大きめのマグカップに注がれた味噌汁を私の前においてくれた。
うん、どう見ても味噌汁だった。
ネギっぽいものが浮いていて、具は…なんだろう?見えないや。
それと、マグカップなのがなんとも言えない。

それにしても、どう見ても和食。


(食材はともかく、調味料や食べ方がこちらの世界にも存在していたことが驚きなんだけど)


しかもエルネストが知ってるってことは、平民には一般的な料理なのかもしれない。
ちょこんと端に添えてあるピンク色の温野菜のような紺野菜の切れ端、もしかしてもしなくても桜大根だったりしちゃうのかな?

みんなも不思議な顔をしつつも、サンドイッチよりおにぎりを手にする回数の方が多かった。
味噌汁も同じく不思議そうな顔はしていたけど、飲んでたし。


「セシリア。ルナが、竹は王都の近くにも群生地はあったのに、筍はまだどこにも生えてないからって、ずーっと南の方まで飛んで採ってきたんだって!」

『セシリアが好きかなって…ダメだった?』


いつの間にやらルナが姿を現して、というか奥の部屋から他の料理を運び出し終わったのか、カートを置いたまま、私が座るそばまで来ていた。
いつもより、あ、シシリーの時の経験も含むだけども、随分とルナのしょげている時間が長いなと思いつつ。
だって、いつもならシシリーこっちがどんなに怒ってたって、どこ吹く風といった感じだったからね?


「ダメじゃないよ、ありがとう。たけのこおいしかった!…それと、ルナおかえり」

『いろいろとごめんなさい……』


改めてごめんなさいをされてしまった。
どうもルナの不可抗力っぽいものまで、ついでに謝られているような気もしなくはないんだけどね。
眷属の暴走とか。

……あと、こうやって真剣な顔でルナが謝っているのに『あの可愛い子は誰?!セシリアと何話してるのっ!」っと、こちらへ飛びかかってきそうな勢いでキャーキャーはしゃいでるフィリー姉様が、すごい勢いでヴィンセント兄様に動きを封じられるという事件を目撃してしてしまったのだけど、見なかったことにしよう。


「これって、おわび?」

『うん!水の乙女オンディーヌが「事を上手く運びたいなら、相手の胃袋を掴め!」ってアドバイスで!』

「……ルナ、それセシリアほんにんにいっちゃダメなやつだと思う」

『えぇっ!?そうなのっ』


うん、ダメなやつだね。
嬉しかったのに少しだけ減点だわ。

ユージアの呟きに、めちゃくちゃ焦ってるルナとフレアが可愛かったから、許そう。
って……水の乙女オンディーヌは、なんて事をルナとフレアに吹き込んでるんですかね……。

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