私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

236、ちゃんと話を聞いて。

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「……そもそもだ。ユージアのその10代の姿みためはともかく、この場にいるのがいくら身内だけだからといっても…こうやって奴隷紋を嬉しそうに見せちゃうくらいの子だよ?このまま外の世界に出てしまったら、それこそもっとひどいことになると思わないかい?」

「まぁ……そう…ね」


ヴィンセント兄様の言葉にも、返事はしたもののやはり納得いかない声色のフィリー姉様。
って、そうよね。
ユージアが嬉しそうに奴隷紋を披露しなければ、私がこの状況……恐怖で固まることはなかったんだし。


(まぁ…ヴィンセント兄様の言葉の通り、ユージアは言動こそしっかりしてるけど見事に世間知らずだし、とても優しい子だから外に出た途端にサラッと騙されて、本当の意味でどこかで奴隷にされてそうだとは思うことがある)


エルフってだけで価値があるからね…本当にいろんな意味で。

そう考えて、背にぞくりと寒気が走る。
エルフだから人よりはすばしっこいけど、ユージアはそれだけだ。
魔法も精霊も抵抗や身を守るための術すら持たなくて、一般的な知識も乏しい。

……こういう情報を総合して、3歳児あのすがたが本来の姿として呪に示されてしまったのなら、なるほどと納得すると同時に、やはりエルフの魔法はすごいと感心してしまう。
ユージアのようにイレギュラーな育ち方をしてしまった子に対してもしっかりと効いて、長い間、そして今も守り続けているのだから。
子を守りたい!という親の願いからかけられる魔法だそうだから、その効果の強さはひとえに親の愛の深さなのかもしれないけれど。


「……姉さん。納得いかなそうにしてるけどさ、ここにくる途中で事情は、説明したからね?」

「そういえばそんな子がいるって…言ってような。それにしたって、まさか奴隷紋だなんて!」

「奴隷紋の事も言ったよ?もう一度言うけど、一時的なつもりだったとは言え、正規な手続きで契約書も国へ提出して、受理されてるからね?……ちゃんと話を聞いてあげて?」

「今、ちゃんと・・・・聞いたわ?」

「そうじゃないよ…」


「でも……そうね。セシリア、急に怒鳴ってしまってごめんなさいね」


いいこいいこ。と、フィリー姉様に頭を撫でられた。
……むしろ泣いてしまって、事を大袈裟にしてしまって、ごめんなさい。

そう言おうと思っていたのに、顔を上げようとしたところでセグシュ兄様が頭を支えていた手にぐっと力を込めてきたので、私は胸に押し付けられた格好のまま顔を上げることができなかった。
何も言うなって事?……それはともかく、ぐっと押されすぎて息苦しいよ!


「それにしても…『可愛い』から『格好良い』に変わるとか…二度美味しいわねっ!」


嫁ぎ先うちにも1人欲しいわ…とかボソリと聞こえると、セグシュ兄様が盛大にため息を吐いた。


「ユージア、ほんと、ごめん」

「いや……僕も、ごめんなさい」


セグシュ兄様とユージアが謝りあいを始める。
そういえば、びっくりして頭から抜けてたけど、ユージアのことでこんなに揉めたみたいになってるのに、ルークは静かだな?と思ったら……よくよく耳をすませば、こちらのことは全くのスルーで、レオンハルト王子と、ヴィンセント兄様、エルネストとでなにか会話中っぽい声が聞こえてきた。

もしかして……この2人の喧嘩のような言い合いって、いつものことなのかしら。


「あら…?じゃあ、セグシュあなた、こんな小さな子に殺されかけたわけ?ちょっと……情けなさすぎやしない?ぷぷーってなっちゃうわよ?いくら休暇で大手を振って婚約者に会えるからって浮かれすぎ…鍛錬怠けすぎじゃない?」

「……」

「あれはっ僕が不意打ちしてしまったからで……」

「余計にダメダメだわ。情けないっ」


ユージアがフォロー?を入れている。
そういえば、どういう状況だったのか詳しく聞いてなかったな。
後で聞いてみようかな?


「でも僕、その前に……ゼンにこてんぱんにされてたんだよなぁ。ヤバイと思って隠れたところでセグシュ様が来たから、背後から急襲みたいになっちゃっただけで……って、あれっ……?そういえばゼンは?」

「ああ、そういえば戻ってきてないね」


……ん?ユージアの声に反応したカイルザークの声が…変な位置から聞こえて…と、不思議に思って顔を上げると、いまだにフィリー姉様の腕の中に捕まったままでした。
うっかり笑いそうになってしまったのだけど、私も人のことを言える状況ではないので、あえて触れないことにした。


「……ああ、彼?は緊急時とはいえ謹慎中だそうだからね。こちらと連絡を取った後に離宮へと戻されたよ……ものすごく、渋々だったけどね」


今、この非常時でもゼンナーシュタットの『謹慎』は有効なんだね。
これは……思わず笑ってしまった。
一応、様子を見に行って、大人とも連絡が取れた結果の今だと言うことはわかった。
ゼンが無事でよかった。


「セグシュ様…「兄様でしょ?あ、その姿なら兄さんでも良いよ!」」

「あら、セグシュ?。あなたも弟がいっぱいできて嬉しそうね?……彼らに『兄さん』って呼ばせるからには、今以上に情けない姿なんて絶対に披露するんじゃないわよ?」

「わかってるよ……で、ユージア、どうしたの?」

「あっ。はい、セシリアを預かります。落ち着くまで部屋を散歩してきます」


ユージアがにこりと笑って、私へと手を伸ばしてきた。
セグシュ兄様の抱っこは好きだけど、今はダメ。
フィリー姉様が怖すぎて、間に挟まれるような位置になるからどうにも落ち着かない。


「セシリア?ユージアと散歩してくるかい?」


即答!の勢いで、こくりと頷くと、そのままユージアに抱っこされてしまった。


「じゃ、行こう。奥の部屋気になってたんでしょう?いろいろ面白かったよ」


途中、ベッドの横を通り過ぎたら、毛布を抱えるようにしてすやすやと気持ちよさそうに眠り続けるシュトレイユ王子がいた。
フィリー姉様の罵声にも気付かず、すやすやと眠り続けるとは意外に図太いのかもしれない。


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