私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
238 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

238、厨房にて。

しおりを挟む




そもそもここまで血眼になる勢いで狙われる理由が、どうしてもわからない。

セシリアわたしは誘拐こそされたけど無事に帰還できたわけだし、自称聖女のフィアが暴走してたり、彼女の悪事部屋やら、ちょこっと知られたくない部分が暴かれてしまったりはあったけど、どの街にもある教会だもの『知らぬ存ぜぬのトカゲの尻尾切り』でしれっと乗り切ってしまえば良かっただけの事じゃないの?

正直なところ『どんな理由』で『誰が誰に』狙われているのかがはっきり分からないと……うん、何度考えてもやっぱり、理由くらいは知りたい。

考えなくちゃいけない事がいっぱいだ~とか思いながら、結局、何も考える余裕もなく今に至っちゃってるからなぁ。
とりあえずは、ユージアとの奴隷契約の解除と、犯人……首謀者の狙いと目的を知る。
これをまずは考えなくちゃいけないんだね。


「奴隷紋があれば、呼ばれるからね…痛いけど、場所もわかるし……離れたくないから、いいの…」

「んぐ…っ。ちょ…と、ユージア?」


ケーキ食べ終わったら、メモ帳に忘れずにメモしておかないとな……とか考えながらぼんやりとケーキを口に運ぼうとしていると、横から手が伸ばされて横抱きに、抱き寄せ…じゃなくて抱きかかえられる。


「1人は…ヤダ……」


ポツリと小さな呟きが頭上で聞こえる。
ああ、この抵抗できない体格差が恨めしい……ていうか、何?このどっきりシーンみたいな状況はっ!
ぎゅっと抱き寄せられて、頭を抱えるように手を回されて頭頂部に頬を押し当てられているようで呼気があたる。


「ユージアは、ひとりじゃ、ないでしょ?」

「1人だもん。みんな、僕が目を離したらすぐ居なくなっちゃうんだ」

「わたしは、いなくならないよ?」


居なくなりようが無いじゃない。一応、成人までは公爵家ここにいる。
……あ、『居なくなる』=『死ぬ』であれば保証はできないのか。
エルフの寿命は長いから、人の一生なんて瞬きのような時間で簡単に終わってしまう。
ルークと同じハイ・エルフだったら、もっと長い時間を生きるのだから、さらに多くの別れを経験していく事になる。


「うん、だから、大好きだから、いなくならないようにずっと傍にいる」


いやまて?
なんかすごい束縛っぽい発言が聞こえたような気がします……。
視界にかかる緑の髪を見ながら、どうしたものかと考える。


「セシリアだけだから……ちゃんと話を…教えてくれるから」


教えて、か。……そうだよね、ユージアは色々知らないんだものね。
今の言葉で、ルークじゃ無いんだから、いきなりのどっきりとかなんなの!?と、びびりまくってた気持ちが一気に鎮まる。


(耳年増っていうんだろうか、話術とか耳から入る情報だけで処世術を覚えてしまっただけで、なかみは本当に3歳程度のまま止まっちゃってるんだね)


セシリアわたしと出会うまで、それこそ今までが10代の姿だったし。
解けかかっていた呪を直されて身体が縮んでしまっても、そのまま10代の姿を好んでとっているし…と見ていると、中身も年相応で『10代くらいの男の子』として扱いそうになってしまう。
けど、ルークの言う『精神は3歳児程度』って、道徳的や知識的な何かより何より、心がまるっきり3歳児なんだろうなと思ってしまった。


(そう考えてからのさっきの言動は、また意味が違ってくるよなぁ)


恋愛感情からの連れ添いたい、ではなくて、子が親に求める庇護……当たり前だよね。
3歳児であれば、本来なら当たり前に両親に庇護されているべき年齢なんだから。
……寂しさもあるのかな。

頭に頬をすり寄せられているのかな?頭に暖かくて柔らかいものが押し当てられる感覚がある。
いつの間にかに背後抱っこのような状態で抱きしめられていて、自分で状況がよくわからないんだけど。
まぁこれ、ルナの悪戯で私が10代くらいの姿になった時に、ユージアに散々やってたよね……やられる立場になると、これまたなんとも言えない気分になるわ……。ちょっと反省すべき?

……だからといって、自重する気はないけどね。
また3歳児のちいさなユージアをフィリー姉様のように愛でる機会ができれば、全力で愛でますっ!


「ずっと傍にいたい……」


振り絞るような切なげな声。ぎゅっと抱く腕の力が強くなって……。
ポロリと、フォークに乗せたままだったケーキのかけらが転がり落ちていった。


「……あ、ケーキ、おちた」

「えっ……」

「さいごのひとくちだったのに…」


なんとか拾おうと手を伸ばすと、ユージアも動いたものだから体勢が大きく傾いて、さらにコロコロと…勢いよく転がり落ちていった。


「うわっ!生クリームがっ!あ~汚しちゃった!……怒られちゃう、かな?」


ケーキのかけらは私のエプロンドレスの上を転がり、ユージアの黒のフロックコートの上を転がり、床へ。
私のはエプロン部分だから目立たないだろうけど、ユージアのは黒のスーツ生地だからね……思いっきりクリームがついて点々と白くなっちゃってる。


『何やってんの……ユージア、コートこっちにちょうだい。セシリアも……』

『あ、セシリア、おにぎりおかわりする?途中だったでしょ?ケーキの後じゃ、微妙かな?』


ルナとフレアが給仕を終えたのか、一斉に話しかけてこられてユージアの抱擁から解放された。
フレアは颯爽とユージアからコートを剥ぎ取ると、奥の部屋へ消えていった。
ここの更に奥って使用人用の部屋だって言ってたよね。
ルナは、目の前に食べかけだった筍の炊き込みご飯のおにぎりと、味噌汁を置いてくれた。


「ルナもフレアもありがとうね。……ごはん、じょうずだね。おいしい」


筍も味噌汁も大好き。特に長ネギを多めに入れたワカメとお豆腐の味噌汁が好き。
そんな好きなものが見事に揃ったご飯は幸せでした。


水の乙女オンディーヌに言われてたもんなぁ『悪戯するなら良い意味で主人マスターを驚かせなさい』って。上手くいったみたいだね?」

『うん!胃袋掴めた?』


感心するようにルナとフレアを交互に見つめながら、ユージアが優しく笑う。
すると顔を覗き込むように、ルナが身を乗り出してくる。


「つかまれた……よく、よういできたね」

『知識共有があるからね!……でも不思議な調理法だったから、上手くいくかわからなくて…僕も楽しかったよ!』

「そうなの?」

『こっちの筍は「アク抜き」なんてしないし、そのまま焼いて食べるだけなんだよ?』


ルナが面白そうに笑いながら話す。目がキラキラしていて、小さな子供が面白いモノを見つけたときのような表情に見えて可愛らしい。

アク抜きなしで食べられる……よほど新鮮なのかな?
採ったばかりとか……そういうレベルの鮮度じゃないと、筍はどんどんえぐみが酷くなっていってしまうんだ。
筍というか竹は群生するから、街中にはほとんどないだろうし、そうなると街まで運んでる間にもどんどんえぐくなっていってしまう。


(そう考えると、もともと薬草としても使われるくらいの竹が、街の外で更に魔素を含んで育って…前世にほんと同じ植物であったとしても、少し性質が変化していたりする場合がある。その性質の変化が、えぐみを無くしたのかしら?)


あ、でも採ったばかりなら、前世にほんの筍もえぐみは無いんだよね。
……スーパーに並んでる新鮮な筍は、もともとえぐみのあまり出ない品種の筍だったりするんだけど、それでも採ってからの時間経過で徐々にえぐくなっていくから……アク抜き推奨なんだけどね。

ルナ達は、しっかりとアク抜きをしてから、調理してくれてたみたい。えらい。

にこにこと上機嫌のまま食器の片付けへと戻って行ったルナ。
2人の働きに感心しつつ、食事を再開していると綺麗になったコートを持ったフレアが戻ってきた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...