239 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
239、美味しいご飯とお悩み相談。
しおりを挟む『うん、セシリアのはクリーンで行けそうだね!』
もう!と呆れ顔で食事中の私のエプロンドレスの裾を掴むと、魔法を使ったのだろう。
魔力の流れを感じて、すーっと油汚れとなってしまった部分の変色がひいていった。
私はといえば、黙々と和食を堪能させてもらって……と言っても筍の炊き込みご飯のおにぎりとお味噌汁、あと桜大根だけだけどね。
その間、ユージアはルナとフレアのお手伝いをしてお皿を運んだり出したり、キッチン内を忙しそうに動き回っていた。
相変わらず、中途半端に長い緑の柔らかそうな髪がふわふわと…揺れて目を引く。
大人と言うには少し小柄で、カッチリとしたフロックコート姿と言うのも、男装の麗人のような華やかさがあって素敵だったのだけど、今はコートを脱いでベストの上からロングタイプのカフェエプロンをつけて、お手伝いをしていた。
これまたおしゃれなカフェの店員っぽくて格好良い。
(ユージアの普段が普段なだけに、崩れた表情ばっかりであれだったけど、こうやって頑張ってる姿は美少年なのよねぇ……うん、ルークと同じく目の保養だわ)
今の姿は『人間として育っていた場合の姿』と言うものらしいけど、それでもルークの息子だと言われたら納得できてしまうほどの、美貌の持ち主ではあるんだ。
表情もずいぶん豊かになってきたと思う。
……口を開くと、途端にとても残念な子になってしまうのだけど、ね。
そんなこんなを眺めながら、ポリポリと桜大根を食べつつ思う…って気づいたら食べきっちゃってたわ。
(そういえば、桜大根って漬物だから、即席では準備出来ないと思うんだけど、これは作ってる地域があったのかな?)
あるのなら、是非手に入れたい!
正直、沢庵でも浅漬けでも、糠漬けでも良いんだけどさ…特に桜大根は甘酸っぱくて好きなんだ。
前世での私が妊娠中、悪阻がひどくて何も食べられなくなった時に、近所のお漬物屋さんに教えてもらった食べ方があってね。
桜大根のおかげで、なんとかあの辛い時期を乗り越えれた。
そういう意味でも、私のお守りのような食べ物なんだ。
何より淡いピンク色で可愛らしいでしょ?
……まぁ産後、普通の味覚に戻ってから、同じものを食べたら…さっぱりしすぎて異常に食欲が刺激されちゃって……無性に肉が食べたくなったのは秘密。
******
給仕も食事の片付けもひと段落ついたのか、ルナとフレアが紅茶と焼き菓子を私の前に並べ始める。
ユージアも戻ってきて焼き菓子を……って君たち食欲すごいな?!
私はもう入らないよ?お腹ぽんぽんだよ?
3人の食欲に軽く胸焼けを起こしながらも、本題に入ってみる。
「ユージア、しようにんのおへや、イヤなんでしょ?」
「うん……でも、執事もやってみたい。それに、僕は公爵家の子にはしてもらえないから。でもみんなと一緒が良い。1人だけ使用人の部屋だと……離れてるのがイヤ~って……でも…執事は使用人なんだもんね……う~」
ユージアはクッキーを頬張りつつも、頬杖をついて唸り出す。
……まぁ『公爵家の子』には流石になれないよね。
そもそもエルネストやカイルザーク達と違って、しっかりと出自も身分もわかってて、しかも『辺境伯の子』な訳で。
養子として公爵家の子になるメリットが双方の家に、無い。
これで公爵家が後継になるのがセシリアだけ!とかいう一人っ子であれば、後継の目的で養子として迎え入れて……もしくは婿候補って事で…引き取る、なんて事もあるかもしれないけど、残念ながら私は子沢山の末っ子なので、そもそもが婿までとって公爵家に残る必要もないし、むしろ、公爵令嬢なんてネームバリューがあるだけマシという身分ですよ。
ぶっちゃけ公爵家との血縁や人脈目当てとしても末っ子じゃ影響力も低いだろうし、そうなると相手の家へのメリットが限りなく薄いから……家柄だけ立派でもね。
嫁としての貰い手があるのかも怪しいのでは?という状況。
そんな私が公爵家へ残るために婿をとってどうすんの?何がしたいの?って話になる。
他には、うーん……と私まで唸りそうになっていると、ルナがにこにこと紅茶を片手に『良い方法があるよ!』と小さく挙手をした。
『それさ、風の乙女と水の乙女の前で同じように相談してみたら良いよ!すごい勢いで解決してくれると思う!』
「本当?!」
ぱっと花開くかのように、明るい表情になってユージアが顔を上げる。
金色のまん丸の瞳が期待に満ちた光で、きらきらしている。
その様子に、フレアが大きなため息を吐くと、呆れたような表情になる。
『拳で、ね……痛いだけだから。ユージア、真に受けないほうが良いよ」
「そっち……まぁ確かにそうだよね~。でも、みんなと一緒にいたいのに、僕の前にだけ区別するみたいに壁があるみたいに感じて、イヤなんだ」
そう言うと、大きなため息とともに、テーブルに突っ伏してしまった。
壁、かぁ……。あるよね。
仲良くなった友達が、成長していくと能力は同じなのに、どんどん立場が変わっていってしまう。
ルークもスタートは一緒だったのに、頑張りが認められて、王家から爵位を賜って……どんどん有名になっていくのが自分のことのように嬉しくて、でも、どんどん寂しくなっていった。
きっともう、王宮ですれ違っても気軽に声をかけることすら、難しくなってしまうんだろうなぁ……と『頑張って!』と送り出すその背に、会うたびに豪奢になっていく騎士団の階級を示すローブやマントを見て、思うことは何度かあった。
その度に寂しさなのか胸がぎゅっと締め付けられていた。
それでもやっぱり、上を向いて頑張って進んでいくルークは素敵だったから……全力で応援してた。
特にこちらは前世と違って、身分制度がはっきりしているから、その感覚は特に大きいと思う。
……あ、ユージアの場合、それ以前の問題か。
多分、ユージアは公爵家の家族の輪に入りたいのだと思う。
だから、部屋も兄弟のように私やエルネスト、カイルザークの近くの部屋が良いし、でも執事としても働いてみたいのだろうね。
父様と母様には逆に伝わってる気がした。
執事として働きたい。でも、私やエルネスト、カイルザークともお友達でいたい。
どっちがメインの気持ちかってところだけど……うまく伝わってなかったんだろうね。
「もういちど、たのんでみようよ」
「……ありがとう」
「ユージアはがんばりやさんだからね、でも、ムリしないで。イヤならイヤっていおう?」
「うん…頑張る」
ユージアの突っ伏した頭まで、なんとか手を伸ばして『いいこいいこ』と、撫でる。
頑張った結果、椅子に立っちゃったけど、まぁ…見なかった事にしてもらおう。
突っ伏したままで少しだけ上がった顔は、目を細めて嬉しそうにしていた。
……やっぱりユージアは反応が素直だよなぁ。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる