私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

239、美味しいご飯とお悩み相談。

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『うん、セシリアのはクリーンで行けそうだね!』


もう!と呆れ顔で食事中の私のエプロンドレスの裾を掴むと、魔法クリーンを使ったのだろう。
魔力の流れを感じて、すーっと油汚れとなってしまった部分の変色がひいていった。

私はといえば、黙々と和食を堪能させてもらって……と言っても筍の炊き込みご飯のおにぎりとお味噌汁、あと桜大根だけだけどね。

その間、ユージアはルナとフレアのお手伝いをしてお皿を運んだり出したり、キッチン内を忙しそうに動き回っていた。
相変わらず、中途半端に長い緑の柔らかそうな髪がふわふわと…揺れて目を引く。
大人と言うには少し小柄で、カッチリとしたフロックコート姿と言うのも、男装の麗人のような華やかさがあって素敵だったのだけど、今はコートを脱いでベストの上からロングタイプのカフェエプロンをつけて、お手伝いをしていた。
これまたおしゃれなカフェの店員っぽくて格好良い。


(ユージアの普段が普段なだけに、崩れた表情ばっかりであれだったけど、こうやって頑張ってる姿は美少年なのよねぇ……うん、ルークと同じく目の保養だわ)


今の姿は『人間として育っていた場合の姿』と言うものらしいけど、それでもルークの息子だと言われたら納得できてしまうほどの、美貌の持ち主ではあるんだ。
表情もずいぶん豊かになってきたと思う。
……口を開くと、途端にとても残念な子になってしまうのだけど、ね。

そんなこんなを眺めながら、ポリポリと桜大根を食べつつ思う…って気づいたら食べきっちゃってたわ。


(そういえば、桜大根って漬物だから、即席では準備出来ないと思うんだけど、これは作ってる地域があったのかな?)


あるのなら、是非手に入れたい!
正直、沢庵でも浅漬けでも、糠漬けでも良いんだけどさ…特に桜大根は甘酸っぱくて好きなんだ。

前世にほんでの私が妊娠中、悪阻つわりがひどくて何も食べられなくなった時に、近所のお漬物屋さんに教えてもらった食べ方があってね。
桜大根のおかげで、なんとかあの辛い時期を乗り越えれた。
そういう意味でも、私のお守りのような食べ物なんだ。
何より淡いピンク色で可愛らしいでしょ?

……まぁ産後、普通の味覚に戻ってから、同じものを食べたら…さっぱりしすぎて異常に食欲が刺激されちゃって……無性に肉が食べたくなったのは秘密ナイショ






******






給仕も食事の片付けもひと段落ついたのか、ルナとフレアが紅茶と焼き菓子を私の前に並べ始める。
ユージアも戻ってきて焼き菓子を……って君たち食欲すごいな?!
私はもう入らないよ?お腹ぽんぽんだよ?

3人の食欲に軽く胸焼けを起こしながらも、本題に入ってみる。


「ユージア、しようにんのおへや、イヤなんでしょ?」

「うん……でも、執事もやってみたい。それに、僕は公爵家の子にはしてもらえないから。でもみんなと一緒が良い。1人だけ使用人の部屋だと……離れてるのがイヤ~って……でも…執事は使用人なんだもんね……う~」


ユージアはクッキーを頬張りつつも、頬杖をついて唸り出す。

……まぁ『公爵家の子』には流石になれないよね。
そもそもエルネストやカイルザーク達と違って、しっかりと出自も身分もわかってて、しかも『辺境伯の子』な訳で。
養子として公爵家うちの子になるメリットが双方の家に、無い。

これで公爵家うちが後継になるのがセシリアわたしだけ!とかいう一人っ子であれば、後継の目的で養子として迎え入れて……もしくは婿候補って事で…引き取る、なんて事もあるかもしれないけど、残念ながら私は子沢山の末っ子なので、そもそもが婿までとって公爵家に残る必要もないし、むしろ、公爵令嬢なんてネームバリューがあるだけマシという身分ですよ。

ぶっちゃけ公爵家との血縁や人脈目当てとしても末っ子じゃ影響力も低いだろうし、そうなると相手の家へのメリットが限りなく薄いから……家柄だけ立派でもね。
嫁としての貰い手があるのかも怪しいのでは?という状況。
そんな私が公爵家へ残るために婿をとってどうすんの?何がしたいの?って話になる。

他には、うーん……と私まで唸りそうになっていると、ルナがにこにこと紅茶を片手に『良い方法があるよ!』と小さく挙手をした。


『それさ、風の乙女シルヴェストル水の乙女オンディーヌの前で同じように相談してやってみたら良いよ!すごい勢いで解決してくれると思う!』

「本当?!」


ぱっと花開くかのように、明るい表情になってユージアが顔を上げる。
金色のまん丸の瞳が期待に満ちた光で、きらきらしている。

その様子に、フレアが大きなため息を吐くと、呆れたような表情になる。


『拳で、ね……痛いだけだから。ユージア、真に受けないほうが良いよ」

「そっち……まぁ確かにそうだよね~。でも、みんなと一緒にいたいのに、僕の前にだけ区別するみたいに壁があるみたいに感じて、イヤなんだ」


そう言うと、大きなため息とともに、テーブルに突っ伏してしまった。

壁、かぁ……。あるよね。
仲良くなった友達が、成長していくと能力は同じなのに、どんどん立場が変わっていってしまう。
ルークもスタートは一緒だったのに、頑張りが認められて、王家から爵位を賜って……どんどん有名になっていくのが自分のことのように嬉しくて、でも、どんどん寂しくなっていった。

きっともう、王宮ですれ違っても気軽に声をかけることすら、難しくなってしまうんだろうなぁ……と『頑張って!』と送り出すその背に、会うたびに豪奢になっていく騎士団の階級を示すローブやマントを見て、思うことは何度かあった。
その度に寂しさなのか胸がぎゅっと締め付けられていた。

それでもやっぱり、上を向いて頑張って進んでいくルークは素敵だったから……全力で応援してた。

特にこちらは前世にほんと違って、身分制度がはっきりしているから、その感覚は特に大きいと思う。

……あ、ユージアの場合、それ以前の問題か。
多分、ユージアは公爵家の家族の輪に入りたいのだと思う。
だから、部屋も兄弟のように私やエルネスト、カイルザークの近くの部屋が良いし、でも執事としても働いてみたいのだろうね。

父様と母様には逆に伝わってる気がした。
執事として働きたい。でも、私やエルネスト、カイルザークともお友達でいたい。
どっちがメインの気持ちかってところだけど……うまく伝わってなかったんだろうね。


「もういちど、たのんでみようよ」

「……ありがとう」

「ユージアはがんばりやさんだからね、でも、ムリしないで。イヤならイヤっていおう?」

「うん…頑張る」


ユージアの突っ伏した頭まで、なんとか手を伸ばして『いいこいいこ』と、撫でる。
頑張った結果、椅子に立っちゃったけど、まぁ…見なかった事にしてもらおう。
突っ伏したままで少しだけ上がった顔は、目を細めて嬉しそうにしていた。

……やっぱりユージアは反応が素直だよなぁ。

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