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はじまりはじまり。小さな冒険?
242、開かずの間を探そう。
しおりを挟む「あったか?」
「こっちには、なーい!」
「こっちにも、ないな」
子供達が蜘蛛の子を散らすかのように、部屋の中を走り回っていく。
うん、鬱憤を晴らすのには良いかもしれないね。
大人と違ってじっとしてるの苦手だからね。
という事で、フィリー姉様の指示の下『開かずの間の扉』を探して部屋中を走り回っていた。
現在の管理者であるルークや王族が部屋の形状などの操作はできるのに『開かずの間』だけは『星詠みの姫』の管理なので制御できず、とんでもない場所に扉が現れるのだそうだ。
つまり、今回も扉自体がどこにあるかがわからない。
「うわっ!変な部屋!」
「「「!?」」」
「…ああ、これは…娯楽室ってやつだねぇ」
緊急時の避難所として使われているちょっとした部屋だと説明を受けた割にはとても広くて『使用人の部屋だ』とユージアに説明を受けた場所の他にも部屋はいっぱいあって。
扉を開けると、びっくりするものがたくさん置いてある!と、いうことを何度か繰り返す。
その度にカイルザークがその部屋の用途を説明していく、という流れになっていた。
一部屋一部屋が広い上に部屋数もあるから、部屋を探すために走り回っていたレオンハルト王子は汗だくになっていた。
ほとんど全力疾走だもんね。
王子に続いて走るエルネストとカイルザークは涼しい顔をしてたけどね。
私?私は、今もユージアに抱えられたままですよ。
探索に参加しようとした所でユージアの抱っこから解放された……と思ったらルークに捕獲されたのだけど。
直後にフィリー姉様の腕に長らく捕獲されていたカイルザークと共に『あなた達も行ってらっしゃい!』と解放されたのだった。
……フィリー姉様の意地の悪い笑みと、ルークの憮然とした表情に見送られて。
(ま、結局またユージアに抱えられての、探索になってるけどね)
ユージアはユージアで、エルネストやカイルザークに対抗意識があるみたいで必死に走り回っている。
森での疾走、悔しかったのかな?
みんな、あの速さであの時間、そしてあの長距離を走り切れるのだから、十分にすごいと思うんだけどね。
獣人に体力勝負を挑むのは無謀だと思うんだよな……。
ふと、ユージアが止まると、目の前に少しだけ豪華な飾り彫の施された、アンティーク調の大きな扉が現れた。
「ねぇ、この扉、思いっきり怪しいよね?他の扉より豪華だし」
「うん、みんなをよぼうか」
「その前に……って、えぇぇっ?!」
ユージアが錠の状態を確認するために、彫金の施された燻銀のような風合いのドアノブに触れた直後、視界が暗転した。
******
『私』は真っ白なワンピースをマントのように翻しながら、騎士団の上級宿舎の一室へと踏み込んだ。
その部屋はとてもカビ臭く、書類が積み上げられていた。
ただし乱雑にではなく、とても丁寧に……量が量だけに芸術的に。
代わりに、全く生活感のない部屋だった。
その部屋の最奥の窓際、カーテンの影に隠れるようにうずくまる人物の腕を、むんずと掴むと引っ張り上げる。
「ほらっ行くわよっ!!」
「あ、ああ……」
流石というか女性の細腕では、男性の腕を引き上げるのは無理があったようで、掴んでいたはずの手が滑り、勢い余って後ろへとタタラを踏んでしまった。
それがさらに悔しくて、今度は念入りに身体強化をかけてから掴み、思いっきり引き上げると、その男は譫言のような返事はあったが、騎士団の礼服を着けた身体は引かれるままにだらりと力なく壁に寄りかかる。
引き上げられた衝撃から、男の長くて漆黒の艶髪がさらさらと広がると、エルフの特徴的な尖った耳が露出した。
ぴっと横に広がるはずの尖った耳も、髪に隠れてしまうほどに下がっていた、ということになる。
気怠げに上げられた顔は、涙か汗かわからない水分で、髪も巻き込んでくしゃくしゃになっていた。
その視線は虚で私と合うことはなく……完全に死んだ魚のような瞳になっていた。
それすらもこの男の優美な顔立ちには、美しさとして蠱惑的な色を醸し出している。
このエルフの特徴的な耳を持つ男は寝不足のクマすら美しさを際立たせるような、猛烈な美貌を備えていた。
思わず見惚れてしまうけど、今はそんなことはどうでも良い。
「ちょっと…なんでこんな所で抜け殻になってんのよっ!」
「ああ…」
「さっきから『ああ』しか言ってないわよ?!これじゃ人事不省と変わらないじゃない……」
「ああ……」
私の声も届いているのかすら分からないほどに虚ろな様子で、返事も思いっきり生返事。
時間が無いっていうのに!
引っ張り上げていた手を離すと、エルフの男はその場に崩れ落ちた。
片手には大切そうに女性用の杖が抱かれていた。
「ああああぁーっ!!!もうっ!氷の貴公子が聞いて呆れるわ!もう少しくらいシャキッとしなさいよねっ!!!」
「ああ……」
項垂れる背中を思いっきり引っ叩いてみたが、全く反応が無い。
むしろ、私の声にゆっくりと顔を上げると、胸に抱いた杖が視界に入ったのか、その杖を愛おしそうに見つめ、直後悔しそうに顔を歪めると、涙がぽろぽろとこぼれ落ちていく。
その様子のあまりの美しさに見惚れかけ…思いとどまる。
そんなことをしてる場合じゃ無いっ!
「……ねぇ、そんなにその杖の持ち主が大切だったの?」
「ああ……」
「女物の杖を抱えて、しくしく泣いてる姿なんて…情けなさすぎよ?」
「ああ……」
一辺倒な反応が続き、大きなため息が出る。
ほぼジト目になっているだろう。
なんだろうこの女々しい物体は。
この男は老若男女問わずに秋波を送られるような、美丈夫だったはずだ。
つい先日も、街の一画に雪崩れ込んでしまった魔物の氾濫の予震をほぼ1人で蹴散らしたくらいの英雄だったはずだ。
……その英雄のはずの素晴らしい騎士は、余震の魔物を蹴散らした後、唐突に消息を絶った。
爵位の返上と騎士団からの退団の手紙を残して。
まぁ部屋に閉じこもって出てこなくなっただけの事だったのだけど。
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