243 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
243、夢か現か。
しおりを挟む「彼女は人間だったわ。貴方の番でもなかったのでしょう?」
「ああ……」
「私に言ったわよねぇ?『身体の構造こそ人族と変わらないが、圧倒的に時の流れが違う。人族が恋愛対象になる事はない』って」
訳がわからない!
私は王位継承権が遠目とはいえ、王族だ。
その私が騎士団の上層部へと一気に昇り詰めた優秀な騎士へと、降嫁するという話が上がった。
これはきっとハンスの事だと内心楽しみにしながら、王からの呼び出しに応じてみれば、ハンスは王の打診を、その場で!即答で!断わった。
(その場の私の居た堪れなさと言ったら…もう、ね)
私としては、職務上とはいえ警護でも何度も顔を合わせていたし、それなりに会話だって交わせていたし、親愛とは言わずとも少しくらい情が生まれていても良いものなのに。
『人族は恋愛対象ではありません』と、バッサリだった。
王族の姫君だからさ…自分の想う人とは番えないだろう事は覚悟していたのだけどね。
番う以前に、気持ち良いくらいにバッサリと切り捨てられたのだった。
……まぁ、おかげで今の縁談があったのだから、文句は言えないけどね。
で、そのバッサリと私を切ったこの騎士は…幼馴染みだったという女性の死で凹んでいた。
私も知っていた女性だが、容姿も才能も可もなく不可もなく、少し変わった特徴があったとは聞いていた。
それなりに綺麗な人でもあったけれど、でも、それだけで普通の人間だった。
「あれは…人族だが、花だった」
「あ~高嶺の花ってやつ?……って、余計にダメじゃない!横恋慕とか最低よ?貴方ほどの人が…横恋慕だなんて認めないわよ?!」
「そして……恩人だ」
「恩人……ね。あーもう!また泣くっ!!!鬱陶しすぎだから!」
絞り出す様な声で、歯を食いしばるようにして呟くと、再び俯いてボロボロと涙を零す姿に、思わず頭を抱えてしまう。
それと同時に、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
「あのね!今日は私の人生の門出なのよ?華々しく国を出発するの!……なのに、外は記録的な大雨!側近は杖抱えて泣いてて使い物にならんからと同行拒否の知らせが来る!……とか…ほんと、なんなのよっ?!」
そして、この国は解散する。
公国だから、高官たちもそれぞれの地元に帰っていく。
中央公国は姫の嫁入りを見送ったあと、今日を以て、終わりを告げる。
そんな歴史的にも大切な日になるはずなのに……。
「……許さないわよ?いきなり騎士団辞めるとか、爵位の辞退も認めないわ」
「要らない。要らないんだ…爵位なんて」
「はぁ?…自分から望んでおいて、どの口が言ってるの?!」
「騎士団だって、シシリーがいないなら、なんの価値もない……」
「価値も、だなんて…っ!貴方まさか……」
私の声に反応するどころか、言葉の続きを聞かずとも肯定するかのように、そのまま顔を膝にうずめてしまう。
つまりだ、我が国の騎士団の花形ともいえる第一師団所属の超エリートな地位へと、短期間のうちに昇り詰めた、この顔良し見栄え良しのエルフ。
……その原動力は正義感や騎士団のトップに立ちたいという向上心や野心からではなく、ただただ『シシリー』という女性を手に入れたいが為の求愛行動の一環としての行動だった、という事か。
(国王が知ったら寝込んでしまうかもしれないわね)
まぁ、もう治世に悩むこともないのだろうけれど。
「あああもう!若いエルフは面倒臭いって聞くけど、貴方も大概ねっ!」
「……なにも要らない。面倒ならこのまま捨て置いてくれ……」
「逢えるわよ?その彼女が番に殺されたのでなければ、また生まれ変わるもの。貴方の寿命なら、それくらい余裕で待てるんじゃないの?」
拗ねた子供のようになっている姿からは、騎士であるということすら想像できないほど情けなくて……呆れからのため息しか出てこない。
しかもだ、その表情すら絵になるほどに美しくて…余計にムカついてくる。
「逢えると思うか?」
「さぁ?……詠む?」
「いや……いい」
まぁ取り敢えずこの男は連れて行くの決定だから、彼の部下に準備をまかせて、さらに早足で移動をする。時間が無いからね?!
次は……。
「父様母様、そして兄様……最後のお別れに参りました」
騎士団宿舎前のゲートから、一気に王宮内へと飛ぶ。
このゲートもそろそろ使い納めね。そう思いながら、いつもみんながくつろいでいるサロンへと足を向けた。
「あぁ……クロウディア…本当に一緒に行かなくていいのかい?」
「父様、私は人族として生をうけましたから…人族として生を全うしたいと思います」
私だけ人族として生まれてしまったんだもの。しょうがないじゃない。
一緒について行っても、そこに私の幸せは存在しないわ。
それくらいに寿命も身体の性能も残念な方向に、家族とは違ってしまった。
先祖返り、というものらしいけど、なんで私だけ人族だったのか……納得はできないけれど、でも、生まれたからには後悔はしたくない。
「あの子も帰ってしまったし……このまま2度と会えなくなるかもしれないのよ?」
「もとより…お別れが少し早くなっただけですよ。それに私には、待っていてくれている方もいますから」
優しい家族たちが本当に心配してくれているのはわかるけど、でも、貴方達の寿命、私の何十倍あるんですかね?ってくらい長いじゃない!
そんな人たちにしたら、私が長生きしようが今すぐ死のうが、時差も感じないほどの一瞬でしかないじゃないの。
それならせっかく人族として生まれついたのだもの、人族らしく生きることにしようと決めたのだから、心配ならむしろ頻繁に会いに来れば良いのよ。
少し鼻息が荒くなりかけたところで、ソファーに深く沈み込むようにして本を読んでいた兄様が顔をあげた。
短髪のくせに子供のように柔らかな金の髪が、ふわりと揺れた。
「クロウディアらしいね。嫁ぎ先は……メアリローサ王国か。縁があればもしかしたら一度くらいは会えるかもしれないな。あそこは薔薇がとても綺麗なんだ」
「……私が生きてるうちに兄様の気が向いてくれるといいのですけど。兄様、早く素敵な番を見つけて幸せになってくださいましね?まぁ、私の方が先に幸せになってしまいますけど」
「うーん、耳が痛いね。まぁきっと父さんと母さんが心配してるみたいな、一家離散みたいにはならないと思うけどね……それでも、すぐには助けに行けない距離くらいには離れてしまうのだから…クロウディア、頑張って。必ず幸せになってね」
「もちろんよ!」
任せなさい!と胸を張ったところで、周囲が明るくなっていった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる