私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

245、それは注告なのか強制なのか。

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深呼吸をするように穏やかな声色で話が続いていく。
……セグシュ兄様とフィリー姉様は部屋の準備と、寝たまま起きてこないシュトレイユ王子の傍にと、部屋に残ったらしい。


「ここは…「シっ!」」


ヴィンセント兄様がルークへと話しかけようとしたところで、静かにするようにと会話を止められる。
それを待っていたかのように、薄暗い部屋の奥からフィリー姉様に良く似た気のの強そうな女性の声が響き始める。


『まず…レオンハルト。貴方の今の側近は…あまりお勧めしないわ……いずれ敵対が表面化するわね。一部はすでに敵対しているようだけど』


唐突に自分の名前を呼ばれたレオンハルト王子は、びくりとすると私と同じように部屋の奥へと必死に目を凝らしている。


『シュトレイユ。あの子の専属メイド。あれはダメ。すぐに外しなさい。近いうちに…行動を起こころされるわよ?……今も起きてこれないのが証拠だと思って?』


弾かれるように反応したのはヴィンセント兄様で、元来た廊下を猛ダッシュで駆け戻っていった。
レオンハルト王子は、理解が追いつかないのか、その場で固まってしまっていたが、言葉の内容が理解できてきたのか徐々に顔色が悪くなっていってしまった。


『エルネスト…可愛いわね。貴方はとても優秀な子だから…レオンハルトのお友達でいてくれると心強いわね。……貴方は、そうね。疑問や不審に思ったことは必ず・・周囲に聞きなさい。そうすれば大丈夫』


エルネストは、部屋の奥をじっと見つめ、小さく頷くと、ふらつき始めたレオンハルト王子を支えて、元の部屋へと歩き始める。
やっぱり優しい子だ。
頷いてはいたけど、きっとレオンハルト王子が心配で内容はほとんど聞いてなかったように見えたから、あとで確認も兼ねて話してみようかな。


『カイルザーク。久しぶりね?…貴方、今も・・気苦労が絶えないみたいね?でも……もう少し積極的でもいいかもしれないわ…何事にも、ね』


なんで縮んでるのか、今も生きてるのかが不思議だけど、小さいって良いわね!可愛いわ…などと、呟きが聞こえた気がしたけど、あえて聞こえなかったことにしとく。

ふふふ。と面白そうにクロウディア様の笑う声が響く。


『さて、セシリア……精神感応できたわよね?あれを見れたのなら、貴方は死なないように。絶対に、よ?本当に面倒くさいのよ?あれ。全力で回避なさいね』


機嫌が戻るまで年単位よ?本当に面倒だからね?そう疲れたように浅く笑う。
えっと、回避の理由はそこですか?私が死ぬと、ルークが面倒くさい状態になるからって……。
あ、いや、そこじゃない…。

つまりは死ぬかもしれないタイミングが王子達の他に、私にも『ある』って事だよね?!
うええええぇ?
軽くパニックのように頭から煙を出しかけていると、子供をあやす様に背中を優しくぽんぽんとルークに叩かれた。

あ、私、子供だった……とりあえず落ち着こう。
落ち着かせてくれてありがとう。と思ってルークを見上げると、いつもの涼しげな無表情さんはどこへ行ってしまったのか?憮然とした表情で頬を赤らめて……あぁ、恥ずかしかったのね。


『ユージア、ね?貴方は……頑張れとしか。……それにしても、私の知ってるハンスとそんなに変わらない歳のはずなのに、貴方、ずいぶん幼いわね?…でも、よく似てる』


似てる。と言われて思いっきりイヤな顔をするユージアだったのだけど、続いて言われた言葉に、さらにイヤな…青ざめる勢いで全力で嫌がる顔になってしまった。


『胸の契約紋は外しなさい。それは奴隷紋よね?……貴方にそれがあると、周囲が困るから』


その一言に、胸の、奴隷紋のあるあたりをギュッと手で隠す様にしながら、気持ち後退る。


『ああ、貴方が外すのイヤなのはわかってるから。ただ、奴隷紋だけはダメなの。そのままだと、貴方も、貴方の大事な人たちをも…悲しませる結果になるわ』


クロウディア様が一つ一つ、言葉を選ぶ様に言った『悲しませる』の意味。
多分、誰かが死ぬのだろう。
ユージアが『奴隷』という身分を利用されてしまうのだろうか?
どういった未来が待っているのか予想がつかないけれど、どうやらユージアにも選択次第では本人もしくは仲間の死亡という、バッドエンドが待っているという事はわかった……。


『ふふふ……本当にイヤなのね?そこで一つ提案なのだけど……契約内容はほぼ一緒で、奴隷ではなくて『花紋』という契約に差し替える気はない?それなら…一方通行セシリアの身の危険の察知だけではなくて、相互の危険の察知もできるし、非常時であれば奴隷紋の様に相手の居場所もわかるわよ?……どうかしら?』


内容としては、今までは私の心の悲鳴を奴隷紋が察知して、胸の痛みとしてユージアに伝えていた。
それが『花紋』に変える事で、痛みではなく伝えてくれる事、そしてそれはユージアがピンチの時、私にも伝わる、そしてその大体の居場所がわかる…というものの様だった。

奴隷紋の上位互換、というよりはお互いに助け合える対等な関係での、契約といった感じに聞こえた。


「セシリアの困った時がわかるなら…変えても良い……」

『そう。良い子ね。じゃあ、そのまま……机の上にある羊皮紙に触れなさい。セシリアもね』


ユージアが、俯いたまま静かに返事をすると、その言葉がまるで聞こえているかのように、クロウディア様からの返事があった。
机の上……部屋の奥に、小さな執務机が置かれているのがぼんやりと見える。
あれのことだろうか?

ルークに抱かれていたのをおろしてもらって、ユージアの後ろについて机に近づくと、確かに羊皮紙が置かれていた。
その羊皮紙には、細やかな紋様が描き込まれている…魔法陣だ。

2人で魔法陣が書かれている上に手を添えると、今にも朽ちてしまいそうに羊皮紙がぱりぱりと音を立てながら、その身に緑色の光を放ちながら魔法陣を発動させた。


「……?ってええっ?!」

「だ…だいじょうぶ?」


奴隷紋があった場所、ちょうど心臓の上の皮膚を押さえ込んで呻き声を上げるユージア。
……私は、なんともない。
痛みも痒みもなかったわけなのだけど…何か変わったのかな?

ユージアはアスコットタイを外して、ドレスシャツの襟首部分を寛がせると、胸の奴隷紋の状態を確認していた。
奴隷紋は……魔法陣がそのまま焼き付いた様な紋だったのだけど、『花紋』とはよく言ったもので、胸に着物の花紋の様な…綺麗な薔薇の花の様な紋様が浮かび上がっていた。


『ごめんなさいね?私、契約の魔法、得意じゃないのよ。痛みは…紋の焼きかえの痛みね…これで魂の回廊を疑似的に結んだわ。期間と内容は…奴隷紋と同じにしてあるから、期限の延長は双方の気持ち次第で加減して頂戴』


魂の回廊……?擬似的に結ぶ?
ごめん、シシリーわたしもクロウディア様と同じ時代を生きていたはずなのに、初めて聞く言葉だった。
どういうものなんだろう?
そして……ユージアの胸に『花紋』浮かび上がってるんだけど、私の胸にも浮かび上がってるんだろうか?

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