252 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
252、作戦会議と林檎。
しおりを挟むおっと…思考を真っ白にしてる場合じゃなかった。
とりあえず落ち着こう。
「カイ、セシリアってあんな顔できるんだね…あははっ。眉間しわしわって!」
「目、まん丸だったね。あれはあれで可愛いんじゃない?」
「……話、聞いた方が…」
うん、なんかカイルザークとユージアがこっち見て笑ってるけど、見なかったことにしてあげるわ。
止めようとしてくれてるエルネスト…やっぱり良い子!
じゃなくて!私だって好きで百面相してるわけじゃないのよ!
後で覚えてなさいよ……。
カタカタとカートの移動する音が聞こえて、顔を上げるとフレアが満面の笑みを浮かべて私の前にフルーツの皿を置いてくれた。
「うわぁ…綺麗だな、それ」
「林檎?ウサギに白鳥?あと…なんかこのくるくるしたやつ、すごいな!王宮でも見たことがない」
『あ~はいはい!ちびっ子達はこっちおいで!あれ、食べるだけじゃなくて、切ってるのを見てても楽しいから!』
子供から先にフルーツを配膳しようとしていた手を止め、先に大人達へ戸配り始める。
レオンハルト王子とエルネストは、フレアの手招きに応じて、席を立って後方のキッチンスペースにいるルナの元へと一目散に移動してしまった。
フルーツの盛り合わせかと思ったら、林檎とさくらんぼ。
林檎は一部が綺麗に飾り切りがされていた。
(前世で、よく作ってたなぁ……懐かしい)
切るの大変だけど、子供は喜ぶんだよね。
林檎のウサギさんは入門編で、白鳥はちょっと難しい。
木の葉は割り箸を使えば、案外簡単にいけるけど…薔薇とか扇、風車は…よく切れる包丁と林檎の鮮度次第。
わざと一部が繋がったままに、ささっと切ってさっとスライドさせて飾る。
鮮度が良くなければぼろっと崩れるし、包丁の切れ味が良くなければ、繊細なスライスができない。
ウサギさんだって鮮度と切れ味の良い包丁であれば、小細工するまでもなく耳が薄く綺麗に切れるから、自然と反り返って、本当にウサギの耳のように可愛らしくなるんだ。
……今、春なのに、林檎なんてどうやって仕入れたんだろう?
さくらんぼだってまだだよね?
時期的にはまだ開花中くらいのはず……。
「食べるか?」
「あ、ありがとう…」
ルークの膝の上だったの忘れてたわ……。
眼前に切り分けられた林檎が近づいてきて、我にかえる。
美味しいし、好きだからいただきますけどね!……そろそろ脱出したい。
視界の奥ではルナがレオンハルト王子とエルネストに、色々と説明をしながら林檎の飾り切りを実演販売よろしく、楽しそうに手際良く作って見せている。
……それはさておき、私の持っている『監獄』内部の情報ってなんだろう?
ユージアに至っては、『隷属の首輪』が着けられていた時、という限定になるけど、使ってた立場だったっぽいし……ある意味詳しいのかな?
うーん、でもその時の記憶は使わせたくないよ。
とりあえず私が覚えてるのは、ゾンビがたくさんいて臭かった!ってのと、緊急用の出口があったってことだけど…あれ?
今こそ緊急時なんじゃないの?
「その腕輪がセシリアしか使えないのなら、連れて行かないといけないのよね?……行ったことがあるって言っても、連れて行きたくないのだけど…」
「そうだな…報告書によると『監獄』の中にはアンデッドがいたそうだし」
「いたよ~。追い回されたし、すごい臭かった!」
「戦ったのか!?」
「えっとね~…えっ?!」
「うわっ?!」
フィリー姉様とヴィンセント兄様の会話の内容にユージアが肯定した途端、レオンハルト王子が目をキラキラとさせてこちらへと戻って来たところで……ユージアごとふわりと浮かび上がると、私の視界から消えた。
『あ~。おかえり?あははっ!話の邪魔だったみたいだね』
「なんだそれ……」
「浮いた…凄いな!人まで浮かせられるのか…!」
「レオン…感心するとこじゃないから……」
フレアの笑い声とともに、キッチン部分の少し奥から憮然とするユージアと、摘み出されたことにすら大興奮のレオンハルト王子の声が聞こえてほっとする。
……まぁこのままだと確かに収拾つかないか。
「妥協、という意味でセシリアは連れていきましょう。でも、他の子達はここでお留守番でも良いのではなくて?特にレイ王子は消耗が激しいようだから……今は動かしたくないわ」
ヴィンセント兄様は納得したものの、フィリー姉様は……って当たり前だよね。
幼児をぞろぞろ連れていくとか、まして自分の弟妹ってだけでも心配なのに、王子達まで一緒だ。
しかも大人より子供達の数の方が多い、ちょろちょと動き回られたらフォローし切れないだろう。心配どころじゃないよね。
って、そうだったシュトレイユ王子、寝てるんだった!解呪したのだろうけど……辛そうなら、動かしたくない。
「普段であれば、私も同意見だが。今は騎士団内ですら、敵味方が入り混じってしまっている状況だからね。この群れのまま移動するのが一番安全なんだよ」
「まぁ……今回に限りは、そうね。宗教って怖いわね。今までの仲間が一瞬にして敵になってしまうのね……」
ふっと悲しそうに視線を落とすフィリー姉様。
ある意味、心の拠り所だからね。
ただ、こうやって国を潰せと、平穏をわざわざ壊せと願う神様なんて、心の拠り所という意味では本末転倒な気がするんだけど…気のせいかしらね?
「ルーク、しゃま」
「ルーク、で良い」
即座に呼び方を訂正されてしまったのだけど、あれ?
「えっと……入るのはともかく『監獄』の緊急用の出口は…使えないのでしゅか?」
「……セシリア、使えないと思うよ。僕たちだって水の乙女やゼンのおかげでなんとか出口を見つけ出せたから出れたってだけで、あの脱出用の魔法陣、使われた形跡が一切なかったもの。使えるとしても、魔法陣が読めなければ、使えない」
ユージアがさりげなく説明をしつつ紅茶のおかわりと、焼き菓子をのせたカートを押しながら近づいてきた。
『監獄』では必死に逃げまくってたから…主にユージアとゼンナーシュタットが、だけど。
私は小脇にかかえられてただけだし。
そういえば、魔法陣…使われた形跡なかったもんなぁ。
「あ……しょれは…」
無理ですね。
古代語って、読める人がほとんどいなくなってるそうだし、魔法陣の目的も発動条件もわからないければ、無理ですよね……。
っていうか、あれ?ちょっと…滑舌!!!
「セシリア…『三食昼寝つき』って言ってみ?」
「ん?しゃんしょくひりゅねちゅき……あれ?」
「やっぱり……噛みまくりっ!」
むずむずと口元を歪ませて、今にも笑い出しそうなユージアに指摘されて、再確認した。
確かに噛みまくりだ!
ぶふっ。とレオンハルト王子とエルネストがそろって笑い出す。
「呪いだからな……一度の解呪で完治するものではない」
「ふふっ…『セシリアって、喋れると本当はおしゃまさんなのよ』って母様が言ってたけど、ほんと、その通りなのね。早く治ると良いわねぇ」
呪いだもんなぁ……。
そうだよね、一発で治ること自体があり得ないのでした。
クロウディア姫の渾身の解呪なら!と思ったけど、そういえばあの姫様……状態異常付与は得意だったけど、解除は苦手だったもんなぁ。
過大に期待してしまった私がバカでした。
これはユージアと一緒に毎日解呪に通わなくちゃいけないパターンだわ……。
周囲の笑いとは裏腹に、思わず遠い目になってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる