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はじまりはじまり。小さな冒険?
252、作戦会議と林檎。
しおりを挟むおっと…思考を真っ白にしてる場合じゃなかった。
とりあえず落ち着こう。
「カイ、セシリアってあんな顔できるんだね…あははっ。眉間しわしわって!」
「目、まん丸だったね。あれはあれで可愛いんじゃない?」
「……話、聞いた方が…」
うん、なんかカイルザークとユージアがこっち見て笑ってるけど、見なかったことにしてあげるわ。
止めようとしてくれてるエルネスト…やっぱり良い子!
じゃなくて!私だって好きで百面相してるわけじゃないのよ!
後で覚えてなさいよ……。
カタカタとカートの移動する音が聞こえて、顔を上げるとフレアが満面の笑みを浮かべて私の前にフルーツの皿を置いてくれた。
「うわぁ…綺麗だな、それ」
「林檎?ウサギに白鳥?あと…なんかこのくるくるしたやつ、すごいな!王宮でも見たことがない」
『あ~はいはい!ちびっ子達はこっちおいで!あれ、食べるだけじゃなくて、切ってるのを見てても楽しいから!』
子供から先にフルーツを配膳しようとしていた手を止め、先に大人達へ戸配り始める。
レオンハルト王子とエルネストは、フレアの手招きに応じて、席を立って後方のキッチンスペースにいるルナの元へと一目散に移動してしまった。
フルーツの盛り合わせかと思ったら、林檎とさくらんぼ。
林檎は一部が綺麗に飾り切りがされていた。
(前世で、よく作ってたなぁ……懐かしい)
切るの大変だけど、子供は喜ぶんだよね。
林檎のウサギさんは入門編で、白鳥はちょっと難しい。
木の葉は割り箸を使えば、案外簡単にいけるけど…薔薇とか扇、風車は…よく切れる包丁と林檎の鮮度次第。
わざと一部が繋がったままに、ささっと切ってさっとスライドさせて飾る。
鮮度が良くなければぼろっと崩れるし、包丁の切れ味が良くなければ、繊細なスライスができない。
ウサギさんだって鮮度と切れ味の良い包丁であれば、小細工するまでもなく耳が薄く綺麗に切れるから、自然と反り返って、本当にウサギの耳のように可愛らしくなるんだ。
……今、春なのに、林檎なんてどうやって仕入れたんだろう?
さくらんぼだってまだだよね?
時期的にはまだ開花中くらいのはず……。
「食べるか?」
「あ、ありがとう…」
ルークの膝の上だったの忘れてたわ……。
眼前に切り分けられた林檎が近づいてきて、我にかえる。
美味しいし、好きだからいただきますけどね!……そろそろ脱出したい。
視界の奥ではルナがレオンハルト王子とエルネストに、色々と説明をしながら林檎の飾り切りを実演販売よろしく、楽しそうに手際良く作って見せている。
……それはさておき、私の持っている『監獄』内部の情報ってなんだろう?
ユージアに至っては、『隷属の首輪』が着けられていた時、という限定になるけど、使ってた立場だったっぽいし……ある意味詳しいのかな?
うーん、でもその時の記憶は使わせたくないよ。
とりあえず私が覚えてるのは、ゾンビがたくさんいて臭かった!ってのと、緊急用の出口があったってことだけど…あれ?
今こそ緊急時なんじゃないの?
「その腕輪がセシリアしか使えないのなら、連れて行かないといけないのよね?……行ったことがあるって言っても、連れて行きたくないのだけど…」
「そうだな…報告書によると『監獄』の中にはアンデッドがいたそうだし」
「いたよ~。追い回されたし、すごい臭かった!」
「戦ったのか!?」
「えっとね~…えっ?!」
「うわっ?!」
フィリー姉様とヴィンセント兄様の会話の内容にユージアが肯定した途端、レオンハルト王子が目をキラキラとさせてこちらへと戻って来たところで……ユージアごとふわりと浮かび上がると、私の視界から消えた。
『あ~。おかえり?あははっ!話の邪魔だったみたいだね』
「なんだそれ……」
「浮いた…凄いな!人まで浮かせられるのか…!」
「レオン…感心するとこじゃないから……」
フレアの笑い声とともに、キッチン部分の少し奥から憮然とするユージアと、摘み出されたことにすら大興奮のレオンハルト王子の声が聞こえてほっとする。
……まぁこのままだと確かに収拾つかないか。
「妥協、という意味でセシリアは連れていきましょう。でも、他の子達はここでお留守番でも良いのではなくて?特にレイ王子は消耗が激しいようだから……今は動かしたくないわ」
ヴィンセント兄様は納得したものの、フィリー姉様は……って当たり前だよね。
幼児をぞろぞろ連れていくとか、まして自分の弟妹ってだけでも心配なのに、王子達まで一緒だ。
しかも大人より子供達の数の方が多い、ちょろちょと動き回られたらフォローし切れないだろう。心配どころじゃないよね。
って、そうだったシュトレイユ王子、寝てるんだった!解呪したのだろうけど……辛そうなら、動かしたくない。
「普段であれば、私も同意見だが。今は騎士団内ですら、敵味方が入り混じってしまっている状況だからね。この群れのまま移動するのが一番安全なんだよ」
「まぁ……今回に限りは、そうね。宗教って怖いわね。今までの仲間が一瞬にして敵になってしまうのね……」
ふっと悲しそうに視線を落とすフィリー姉様。
ある意味、心の拠り所だからね。
ただ、こうやって国を潰せと、平穏をわざわざ壊せと願う神様なんて、心の拠り所という意味では本末転倒な気がするんだけど…気のせいかしらね?
「ルーク、しゃま」
「ルーク、で良い」
即座に呼び方を訂正されてしまったのだけど、あれ?
「えっと……入るのはともかく『監獄』の緊急用の出口は…使えないのでしゅか?」
「……セシリア、使えないと思うよ。僕たちだって水の乙女やゼンのおかげでなんとか出口を見つけ出せたから出れたってだけで、あの脱出用の魔法陣、使われた形跡が一切なかったもの。使えるとしても、魔法陣が読めなければ、使えない」
ユージアがさりげなく説明をしつつ紅茶のおかわりと、焼き菓子をのせたカートを押しながら近づいてきた。
『監獄』では必死に逃げまくってたから…主にユージアとゼンナーシュタットが、だけど。
私は小脇にかかえられてただけだし。
そういえば、魔法陣…使われた形跡なかったもんなぁ。
「あ……しょれは…」
無理ですね。
古代語って、読める人がほとんどいなくなってるそうだし、魔法陣の目的も発動条件もわからないければ、無理ですよね……。
っていうか、あれ?ちょっと…滑舌!!!
「セシリア…『三食昼寝つき』って言ってみ?」
「ん?しゃんしょくひりゅねちゅき……あれ?」
「やっぱり……噛みまくりっ!」
むずむずと口元を歪ませて、今にも笑い出しそうなユージアに指摘されて、再確認した。
確かに噛みまくりだ!
ぶふっ。とレオンハルト王子とエルネストがそろって笑い出す。
「呪いだからな……一度の解呪で完治するものではない」
「ふふっ…『セシリアって、喋れると本当はおしゃまさんなのよ』って母様が言ってたけど、ほんと、その通りなのね。早く治ると良いわねぇ」
呪いだもんなぁ……。
そうだよね、一発で治ること自体があり得ないのでした。
クロウディア姫の渾身の解呪なら!と思ったけど、そういえばあの姫様……状態異常付与は得意だったけど、解除は苦手だったもんなぁ。
過大に期待してしまった私がバカでした。
これはユージアと一緒に毎日解呪に通わなくちゃいけないパターンだわ……。
周囲の笑いとは裏腹に、思わず遠い目になってしまった。
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