私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

265、ご飯の後はデザートと。

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「木にも動物のように油が含まれてるんだね…不思議」

『まぁ、肉の脂身から抽出するよりも恐ろしく少量しか取れないから、商品として手に入れるには、かなりの高級品になっちゃうかも……ええと、確かバケツいっぱいの実からコップ1杯くらいしか採れないんだよ。少ないでしょう?』


ルナが面白おかしく、身振り手振りでオリーブオイルの搾り方を説明し始めると、王子たちが興味津々な様子で聞き入っていて……あれ?セグシュ兄様まで真剣に聞き入っている。
公爵家の食事にもオリーブオイルが使われた料理が結構出てたと思うんだけど…あんまりこういうのは気にしたことが無かったのかな?


『オリーブ以外にも胡桃とか向日葵とか…種子には油分が含まれてたりするよ』


ちなみにオリーブの実は、油を搾るだけじゃなくて、塩漬けやお酒に漬け込んだりして食すことも可能です。
……まぁ梅の実みたいに、そのまま食すには少々難があるのだけれど。


(というか、梅もオリーブも生は美味しくないどころか、エグミがね……苦い!渋い!ぎゃーってなるよ!)


子供達が真剣にルナとフレアの食材談議に目を輝かせているうちに、大人たちは食事終了して……子供達の食事のフォローをしてくれていた。
ヴィンセント兄様は王子たちの給仕…やたらと楽しそうにサンドイッチを作っていて、フィリー姉様はエルネストに肉を大量に勧めていた。
……やっぱり『獣人=肉好き』のイメージ、あるよね。

それと一緒に、カイルザークにも肉類を勧めるのだけど、すごい勢いで遠慮しまくっていた。


「肉も美味しく感じるけど、それよりこのニンニクが塩気が効いてて、すごく美味しい…」


無言になって黙々とジャーマンポテトを頬張っていたユージアが、やっと喋った。
人心地着いたのかな?


「そうだな。シャキシャキしてるのに生じゃないから辛くないし、でもモソクソしてなくて食べやすい」

「エル……モソクソって…まぁ言いたいことはわかるけど」


くすくすと笑いながらセグシュ兄様が、サンドイッチ用に盛られていた野菜を小皿に取ると、ドレッシングをかけてサラダを作っていた。


「……そこはせめて、ボソボソとか、モソモソとか…そういう表現じゃないかな?」

「どっちも、さして変わらないじゃない」


セグシュ、あなたまだ食べるの?と、呆れた視線を送りつつ、フィリー姉様がため息を吐く。


「……ほんと、羨ましいわ。セシリア、この子たちのどちらか、私に頂戴」

「えっ!?」

「料理もできるし、優秀だし、ハンス先生の精霊並みじゃない。私も一人欲しいわ」

「えっと……」


2人で1つの精霊だから……別々に動いているけど分離はできないんだよな…とか真面目に考えてしまったのがルナたちに伝わってしまったのか、私を見る2人の表情が思いっきりジト目になっている……。


「フィリー、無理言うんじゃないよ。その精霊達はセシリアを好いて契約してるだけで、その兄妹だからといって同じように精霊に好かれるってわけじゃないんだから」

「わかってるわよ……でも羨ましすぎるわ。こんなに可愛い子が二人もなんて」


ヴィンセント兄様がフォローしてくれているけど、そうなんだよね。
精霊との契約って、相手の人柄を気に入っての契約だから、その契約を自分の子や兄弟たちに引き継がせることはできないんだ。

あくまで対等の契約だから、って言うのもあるんだけど……。
そうだなぁ、精霊と契約主は『ペットと主人』ではなくて『お友達』の関係だから、簡単に相手を変えられないし、変えたいと思わないよね。
契約主が納得して『今日からこの子とお友達になってね?』なんて契約主の変更をいきなり押し付けられても、精霊だって困っちゃうだろうし。


「……私の風の乙女シルヴェストルは、料理はしない…」

「うそっ……じゃあ」

「得意かどうかの問題ではなくて…私に料理の知識がない、からだ。精霊と契約者は知識の共有をするから…な。どちらかが知っていればいいが、知らなければ…扱えない」

「そう考えるとセシリアの精霊は2人いる分、知識の吸収が早いんだね?」


ユージアが何かを確認するように、聞いていた。


「そういうことになる。ただ、セシリアの場合は、そもそも制御できていないからな。大方どちらかが放浪中にでも覚えてきたんだろう」


あ、はい、そういうことにしておいてください。
思わず、うんうんと肯くと、ふっと笑われてしまったけど。

よくよく考えたら、今の時点でセシリアわたしが料理を知ってること自体がおかしすぎる。

前世にほんでよく口にしていた食材や調理法が、エルネストの出身である地方の郷土料理として存在していたことは嬉しかったけど、セシリアは3歳児で、箱入り娘で、ここ数日で初めて外出をしたという立場だ。
その外出だってトラブルに巻き込まれての遠出であって、物見遊山ではない。
つまり、遠方の食文化を学ぶタイミングなんてあるはずが無いのだから。


(でも、すごく懐かしい味だったし、美味しかったなぁ)


そうだ、この騒動が落ち着いたら、梅干しを漬けよう。
実は初夏くらいになるから、それまでにはきっと落ち着いてるよね?


「ごちそうさまでした!」


私が食べ終わる頃には、みんな既にお茶だったり、じゃれついてたりしてるわけですが……えー私ってそんなに食事のペース遅いのかしら……。

遠目にレオンハルト王子が、シュトレイユ王子に指輪を渡しているのが見える。
あのあと、シュトレイユ王子の分も渡しておいたんだ。

護身用と言う意味では、飾りどころではなく、早急に必要そうだったし。
まさか呪われてるとか、近いうちに命を失うとか言われるほどに、やばいところまで危険が迫ってたなんて夢にも思わなかったし。

これで少しでも安心が手に入ればいいのだけど。

ちなみにじゃれついてるのはカイルザークがエルネストに、だよ。
食後の腹ごなしなのかしらね?
カイがすごい勢いで躱されたり投げられたりしてるんだけど、よく怪我しないよなぁ。

ユージアはルナとフレアの手伝いをしてるのが見える。
食器洗ったりしまったりと忙しそう。


『はい、デザート』

「おおお~うしゃぎしゃん!」


目の前に林檎のウサギ。
ルナが持ってきてくれていた。
いつ見ても懐かしい!そう思いながらリンゴに齧り付いていると、ルナは向かい側の椅子に座りながら、ため息を吐いた。
ルナの紫を帯びた漆黒の髪が肩先に触れてさらりと広がる。


『あらら…完全に滑舌が戻っちゃったねぇ……』

「うん、もどっちゃった」

『……これから、よろしくね。「監獄」は精霊ぼく達でも、許可がないと通れない作りになってたよ』

「がんばりゅ。がんばって、かえしてあげよう」

『じゃあ、頑張るセシリアに…先にご褒美あげちゃう』


そう言うと、ルナは私の頭を撫でるとにこりと笑って、その手に魔力を集めだした。
金色の瞳が怪しげな魔力を帯び始める。


『解呪まではできないけど…ちょっとだけ。……呪いを誤魔化してあげる』

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