私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

278、晩ご飯はまだですか。

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床のようなものが近くに見える。
……駆けながら見えていた白くてキラキラした含有物のあった壁材とは違うから、これは確実に床だろう。

思っていたより視界が暗い。

今までいたのは天井付近で、側には豪奢なシャンデリアや副照明のたくさんあるキラキラとした場所だった。
遠く遥か上からのシャンデリアや、装飾付きの間接照明からの不規則な光が降り注ぐ事によって、魔石光の無機質な光であるにもかかわらず、木漏れ日のような自然光と勘違いを起こさせる……そんな技法が、魔導学園ではよく使われていた。

この『監獄』も同じ年代に造られたものだったということがよく分かり、私にとっては…少し懐かしい気すらしてくる特徴だ。

ぼんやりと暗闇に目が慣れてきたところで見えたのは、人。
攻撃の姿勢をとっている……。


「フィリー!セグシュ!待て!……よく見ろっ!」


兄様と姉様……?
今の声は、ヴィンセント兄様…?


「「セシリア!!」」


フィリー姉様とセグシュ兄様の悲鳴にも似た悲痛な叫び声が響く。
あ、そうか、どうみてもこの状況じゃ、私は食われてるようにしか見えないや。
ひとまずは無事だとアピールしなくちゃ!
そう思い、両手足をパタパタと動かして反応をしてみせる。


「あ…はい。無事……でしゅ」


また噛んだ……。
まぁいいや、変に静まり返ってたから、ちゃんと伝わったはず。
……思いっきり噛んでるところまでしっかり伝わったみたいだけど!
セグシュ兄様とフィリー姉様の臨戦体制も解かれたみたいだから、まずは一安心ってことにしておこう。


「その状況は無事とは言わないっ!カイっ!カイは大丈夫か?!」

「だ、大丈夫…です。…むしろ助けてもらっての、この状況なので……無事です」


ヴィンセント兄様の声までする……。
大分、視界が暗闇になれてきたので再度見渡すと…ここは『避難所』のサロンのようだった。
帰って来れたんだなという思いで、ほっとしていると、黒い獣が顎の力を緩め、少し前へ…下を向くようにして私を離してくれた。

ありがとう!と、お礼を言いつつ振り返ると、やっぱり獣の正体は黒い毛並みに赤い眼の、ヘルハウンドだった。
大きな身体の割に、毛並みは柔らかそうなんだよね。
思いっきりモフりたい衝動に駆られていたのだけど、流石に今のタイミングだと周囲に怒られそうなので、我慢した。


セシリアわたしは空気の読める良い子なのですよ)


ちなみに、私に続きカイルザークとルナも降りてくる…って、やっぱり二人とも首のあたりから出てきていた!
ちょっとずるいなと思いつつも、よくよく考えたら背に乗せてもらうより、咥えられて走ってたって方がレアな気がするから、いいや。

今回は許す、許しちゃう。
でも、機会があったら、今度は背に乗せてもらうんだ。


『ああ~死ぬかと思った!ありがとう!……そうだった!フレアっ!!!』


ルナはヘルハウンドの鼻の辺りを気軽にポンポンと叩くとお礼を……と急に焦った表情になり、フレア姿をベッドの上に見つけて、そちらへ駆けて行ってしまった。

精霊が寝ることってないから。
それがなんで寝てるのか?といえば、ルナとフレアの場合は、姿を2つに分けているけど根本の『核』という話でいえば、1つしかないから。
なので片方に…今回で言えばルナに高負荷がかかった場合、エネルギーの供給をルナにだけ送ってしまうということがあるんだ。
結果的に言えば、いきなり栄養失調になってしまったフレアは、干からびて倒れてしまったというわけで。


(で、とりあえずわかっている事は…さっさと寝ないとヤバイってこと、かな?)


ご飯ができるまで少し寝てなさいって時に私たちは帰還したらしいので、そのまま一緒に寝ることにした。
そうそう、寝る前にエルネストに『お前ら臭い!』って言われたけど、クリーンで清めてから、ちゃんと綺麗にしてからベッドに入ったからね!?

……ベッドに入ってから、ふと気になったのは私達の身体に染みついていた臭いは死臭だったのかそれとも怨嗟の念だったのか。
獣人って、いや…カイルザークと同じ上位種だもんね、エルネストは。
鼻の利く彼らは、感情すら嗅ぎ分けることができるらしいんだ。


(だからこその『監獄』でのあのカイルザークの大惨事だったのだけど)


あんなに瘴気を集めてしまえる環境だったのだもの、相当臭かったんだろうなと思うのと同時に、そんな環境に長くいたのだろうユージアを思って悲しくなってしまった。

ま、悲しくなった直後に、一気に脱力感と眠気に襲われて……そのまま気を失うかの如くに意識を失ったわけですが。

理由は簡単です。
ルナがフレアを起こすために、セシリアわたしの魔力をごっそりと持っていったから。
もうちょっと加減してくれてもいいのにね。
暴走状態だと、こういうときに優しさがないんだよなぁ……。






******






……ということで朝なんですが。
あれっ?晩ご飯は????

ベッドから起き上がって呆然としていると、セグシュ兄様がこちらを見て笑っていた。
すぐそばのサイドチェアに腰掛け、手には数枚の手紙が見える。


「セシリア、おはよう…なんて顔してるの?ふふふっ。眉間にシワが寄ってる」


いつもの優しげな声で、近づいてくると頭を撫でて、いつの間にかに緩められていた首のボタンを止めて、リボンタイをつけてくれた。


「昨日はいっぱい頑張ったんだってね…晩ご飯は魔力切れで残念だけど起きれなかったみたいだね」

「おはよう…ございましゅ」

「言葉も戻っちゃったねぇ。セシリアはこのままでも可愛いと思うけどね。あははっ」

「しょれはっ…!ダメですっ」


可愛すぎ。という声が聞こえたかと思うと、急に浮遊感があり、抱き上げられたことに気付いた。
ぎゅーっと強く力を込められて、後ろから抱きしめられたような状況になっていた。

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