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はじまりはじまり。小さな冒険?
279、朝ご飯はまだですか。
しおりを挟む「……話はルナからなんとなく聞いたよ。『監獄』に行ってきたんだってね……無事でよかった…!」
耳元で囁かれるように声が聞こえてくる。
正直くすぐったくてしょうがないんだけど、ここは頑張ってこらえる。
どうやら私達が寝た後に、大人達でルナとフレアとヘルハウンドから状況の確認と、何があったのかな?そんな話をしたらしい。
「あとはユージアが起きたら出発かな。セシリアと一緒で魔力切れで寝てるんだよ」
そう言われてベッドを振り返ると、確かにユージアがぐっすりと寝ていた。
3歳児の姿だったのだけど、どうやら倒れた当初は10代の姿のままだったらしい。
「魔力切れでも、いきなり3歳児の姿に戻らなかったのは偉かったんだけどねぇ……朝になってみればほら、この通り」
くすりと笑ってみせる。
笑いながら、片手で少しはだけてしまっていた毛布をかけ直して、寝ているユージアの頭を撫でたり頬をふにふにとつついたりしている。
頭を撫でられている時は静かなのに、頬をふにふにむにむにとつつかれると、イヤそうな顔になって可愛い。
「……ユージアが起きたら、ちゃんとお礼を言うんだよ?」
どうして、ユージアが魔力切れになってしまったのか?
訊こうとしたところで先にセグシュ兄様に『お礼を』と言われてしまうと、何やら私が、しでかしたらしい?
何をしてしまったのか?と、さらに考え込みそうになっていると、セグシュ兄様に眉間の辺りを指先でぐりぐりされてしまった。
「子供でも、眉間にシワ…よるんだね。あははっ。でも、シワじゃなくて溝になっちゃうから、癖にしちゃダメだよ?」
私の眉間の辺りを指でぐりぐりしながら、面白そうに笑っている。
なんかちょっと行動が意地悪っぽく感じるのは……フィリー姉様に尻に敷かれまくった反動なのだろうか?
そんなセグシュ兄様の説明によると、私たちの異変にいち早く気付いたのがユージアで、一緒にその場にいたフレアにみんなを連れ戻すようにと言っていたらしい。
ただ、その時点でセシリアと契約で結ばれたリンクがルナによって閉じられていたために、フレアは私の元へと飛べなくなっていた。
ならばどういう事になってなっているのかと、自分の半身を通しての情報収集をしようにも、そのルナ自身が瘴気にのまれかけていてピンチ!という悲惨な状況で。
ルナのピンチにフレアに泣き付かれて、フレアを介してルナへの魔力提供をした。
そして花紋を通して…もしかしたらセシリアと連絡が取れるかも?という事も試してくれていたそうだ。
(倒れるまで、やらなくていいのに……でも、そのおかげでルナは無事だったんだろうね)
ユージアはセシリアを命の恩人だと言ってついて来てくれているけど、実際は私の方が助けられていることの方が多すぎて、どっちが恩人なのか分からなくなって来ているんだけどね。
「ちなみにそのお騒がせな精霊達は、もうすっかり元気になって食堂で他のチビ達と大暴れだよ」
にこりと満面の笑みで言われましても……。
なんかもう、ご心配おかけしましたとしか言いようがない。
「ごめんなしゃい」
「いや…本当はね、僕たちの方こそ謝らなくちゃいけない事があったんだ」
そっとベッドの端に座らされると、セグシュ兄様は生成りの飾り編みが可愛らしいカーディガンを私の肩にかけようとして、何を思いついたのか私の傍に置くと、隣に腰をかけて、手で私の髪を梳き始めた。
髪をいじられるのは好きだ。なんか安心する。
編み込みでもしようとしているのか、髪をわしわしと分けられる感触に、ぼんやりと周囲を見渡しながらセグシュ兄様の声に耳を傾ける。
「ここはもう安全だ、このお泊まりは念のためだ…と、すっかり気が緩んでいたみたいでね…でもね、ねぇ、セシー?『避難所』っていう、この部屋のことは知ったけど、この部屋の入り方……教えてもらってないよね?」
「知らにゃい…」
そういえば!と、はっとなっている私の顔を一瞬、覗き込むようにして、やっぱりニヤリと悪戯っぽく笑うセグシュ兄様。
そういえば、どうやって帰って来たんだろう?
「だよね……『避難所』って名前で呼ばれているだけあってね、助けを求めると転送される事がある。あとは基本的には『おまじない』を使うんだよ。セシリアの場合は、助けを求めたのが『避難所』に聞こえたんだと思う。ただ、助けを求める声っていうのは、あんまり拾ってくれないらしいから……今回は本当に運が良かったんだよ」
はぁ。と後ろからセグシュ兄様の小さなため息が聞こえた。
その手は今も私の髪を結い上げている真っ最中なのだけど。
……というか、そうか。
確かに『避難所』に飛んでくる前に助けは呼んだ。
でもあれはフレアに向かって叫んでたはずなのに、それでも『避難所』には有効だったのかしら?
面白い構造だなぁ……と考えてる途中で、さーっと血の気がひいていった。
ユージアへの『星詠み』がもしかして…今回のことだったのでは?と考えが至ったからだ。
(あの幻聴がユージアが伝えようとしてくれていたのだとしたら!いや、でも、あの時点ではユージアも部屋への移動の仕方を教わっていないはずだ。そもそも王族の血筋じゃないから、知っていても使えないし。そう考えるとユージアは知る必要すらない。もし説明する機会があったとしても、使うことができない子にまでわざわざ説明しないと思うんだ)
でも、奴隷紋だったら私のピンチに気づけても、ただ胸の痛さにのたうつだけだったはずだ。
ああ、でも奴隷紋でもピンチに気付けたら、幻聴じゃなくても手は打てるよね?
じゃあ、これは『奴隷紋じゃダメだ』の予言とは違うのかな?
「よし!……多分できた!これなら邪魔にならないよね?」
考えが堂々巡りに突入しそうな所でセグシュ兄様の髪結が完了して、傍に置かれていたカーディガンを着せてもらった。
……なーんか左右の髪の引かれ方というか、締め付けのバランスがおかしいような気がしたけど、完了したのなら、ありがとうだね!
「ありがとでしゅ」
「微妙に喋れて、やっぱり噛むんだね!……着替えも完了したし、食堂へ行っておいで。朝ご飯あるから」
うん、わかってる。
実は中途半端に呪いが軽減されてるものだから、以前にも増して噛みがはっきり聞こえちゃうし、逆に綺麗に言葉が喋れてる部分もあったりで、なんというか…私自身も片言で喋っているような気分だし!
昨日より噛み部分が増えてる気もするけど!
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