私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

280、準備はいいですか。

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「ほらほら!早く行かないと、公爵家うちじゃないんだから、ご飯、無くなっちゃうよ?……それでなくても食べ盛りばっかりなんだから!ふふっ」


相変わらず悪戯っぽく笑う。
セグシュ兄様の食事は既に終えていて……あれ、そういえば『避難所ここ』に来た時はいかにも戦闘ありました!と言った風にボロボロだったのに、今は襟口に銀糸の刺繍が施された綺麗目のドレスシャツに紺に近い深い緑の襟付きのベストを身につけていた。
ふわふわと揺れる赤い髪と対照的で思わず目を引かれる。


えっと……なんだっけな?
確か専属メイドセリカに教えてもらったのだけど襟付きはラバルドっていうらしい。
ベストもウエストコートっていうんだっけ?
すぐに出てこない言葉ばかりで困るね。もう、チョッキでいいよね!と言うとセリカに不思議な顔をされてしまったし。


『とても、古い言葉をご存知ですね?』


あれ、古いの?!この言葉!と愕然とした記憶。
チョッキって言わない?使わ…ないのかしら?あれれ?

こうやって……前世の記憶がある事に気づく前からも、不思議と周囲がびっくりするような発言がポロポロとあって、周囲からは『少し変わった子』だったらしいから、余程突飛な行動を取らない限りは、浮かないはずなんだ。
突飛…突飛な行動……思い当たる節がありすぎて、頭を抱えたくなるわけだけど。


うん。話を戻そう。
貴族って自宅でもかなりきっちりとした服装が多いのだけど、今日のセグシュ兄様のは確実に外出用だと思う装いだった。
格好良いもんね!

ガレット公爵家の子供たち…まぁ成人してるのがほとんどだけど、みんな見栄えがするから、オシャレすると本当に素敵。
……私もその一員になれると良いなぁ。

じゃなかった、私も服装を直されていたし、本当に帰宅(?)できるのかな?と嬉しくなる。

でもその前にまずは、朝ご飯だ!
食堂に近づくほどに、ベーコンの焼けた良い香りがしてしている。


(ベーコンエッグが食べたい!そういえば、こういう料理は公爵家うちではあまり出ないんだよね。簡単すぎるからなのだろうか?でも、シンプルだからこその美味しさがあるんだよねぇ)


思わず顔が綻ぶのが我慢できずに、食堂に入るとカーテシーをする。
いくら身内とはいえ、朝のご挨拶は大事なのですよ。


『ああ~!セシリアはベーコンエッグが良かったのかぁ…。ベーコンステーキでした。しかも今、売り切れたちゃった』

「ええっ!?」


挨拶の口上より何より先に響き渡ったのはフレアの声。
ごめんなさい!と、片手を上げて謝るようなジェスチャーとともにフレアがテーブルの椅子を引いてくれていた。

私の席はユージアとカイルザークの間らしい。
向かい側にヴィンセント兄様とフィリー姉様。
エルネストはなぜか部屋の端っこで座禅を組むように座って手元を凝視していて、レオンハルト王子とシュトレイユ王子、ルークの姿は無かった。

の、前に!


「おはようございましゅ」

「「あ…おはよう」」


思わずの第一声はショックの悲鳴になってしまったけど、気を取り直して何事も無かったかのように、まずはご挨拶。
いきなりのフレアの衝撃発言に頭の処理が追いつかなかったのか、一瞬だけどポカン顔のヴィンセント兄様が見れたのでヨシとしよう。


「……精霊が暴走してると、考えがそのまま筒抜けになるんだね」

「そうだねぇ……こっちの制御を全無視とか、出来ちゃうからねぇ。と言うよりは、今のは単なる失言だから、精霊の性格の問題かと」


ユージアが少し遠い目になりながら呟いた言葉に、丁寧に説明をつけるカイルザーク。
そんなカイルザークの視線の先には、こちらに背を向けて、キッチンで調理をしているルナがいた。
ルナの背後にあるアイランド型のように設置された作業スペースには、可愛らしいジュレのデザートが見えた。


(キラキラと光るジュレの上に添えられている、オレンジ色の果実の欠片…桜桃さくらんぼ?いや、桜桃にしては少し大きいかな?……杏かな?)


思わず一緒になって、じーっと見ていると、フレアが颯爽とカトラリーのまとめられている小籠と、料理の盛り付けられたお皿を目の前に並べていく。

ちなみに……本日のメニューは、お子様ランチのようにワンプレートに可愛らしく盛り付けられた……ベーコンエッグが出て来ました。
ベーコン、売り切れてたんじゃなかったんですかね?
そもそもベーコンエッグが朝食のメニューですら無かったのでは?


『食べたかったんでしょう?』


ま、食べたかったけど…。

置かれたプレートとフレアの顔とを交互に見ていると、にこりと、それはそれは楽しそうな笑みを浮かべて答えられてしまった。
フレアは一通りの私への給仕が終わると、ルナが作っていたデザートの配膳を始めていた。


「ベーコンステーキってだけでも、私には中々に珍しい食事だったのだけど、セシリアはどこで・・・その料理を知ったのかしらね?」


フィリー姉様の何の気ない言葉に、ぴくりと、食事の手が止まるわけですが……さてどうやって答えるべきか。

毎度の事ながら『本で読んだ』が通用しないお年頃なので。
だって一人で読めないし、そもそも読めないような本を部屋に置いてあるわけもないし。
専属メイドセリカに聞いたと言っても、そもそも彼女が話すような内容でもないから、誤魔化してるのがバレバレという…ね。


ちなみに、ベーコン等の加工肉は、旨味を増すための加工の他に、保存をよくするための加工でもあるから、ベーコンステーキやベーコンエッグが主役メインとなるメニューというのは、存在はする……けど、どちらかといえば平民の食卓に馴染みのあるものなんだ。

逆にいえば長期保存の必要のない、塩気薄めの上品な味のベーコン等であれば、貴族の食卓にも並ぶ。
並びはするけど、ベーコン自体が主役になることはほとんど無いみたいだった。


(塩気たっぷりでも、カリッカリに焼いたやつとか美味しいのにねぇ)


むしろあの塩気を使って作るポトフとか、最高なのになぁ……。
こう、ベーコンを作るときの燻製の香りまで、お出汁のかわりになって、しかもスープに塩気が染み出したベーコンは、ほろほろのふわふわの、舌で軽く押すだけで切れてしまうほどに柔らかくて甘い風味になるんだ。
バラベーコンであれば、脂身も最高に美味しい!

しかも、すでに加工済みのお肉でしょう?
ポトフという煮物料理でぐつぐつとお鍋でしっかり煮込んでも、お肉自体からのスープを濁らす、肉汁やアクが出ないんだよね。


(ちょっと汁物系やガッツリ食べるスープ系で一品欲しいなぁって思った時に、さらっと作るには優秀な食材なんだ)


生肉よりは保存も効くから、ゆっくり使えるしね。


……って、ああああ、もう!調理法を考えてる場合じゃ無かった!
食事を目の前にして、思いっきりお腹が空いてるから、何を考えようにも食べ物の話に繋がってしまうわ。
うん、とりあえず食べてから話そう。

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