私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

288、呪いと絵心。

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『シュトレイユ。あの子の専属メイド。あれはダメ。すぐに外しなさい。近いうちに…行動を起こころされるわよ?……今も起きてこれないのが証拠だと思って?』


星詠みの姫、クロウディア様の言葉が浮かび上がる。
彼女の『近いうち』とはどうも『数日中』なのだろうということは理解した。
だって、数日前に王子達の部屋に一泊してしまって…起きた時のシュトレイユ王子は、しっかり元気でいっぱい喋ってたもの。

それがここ数日のうちに、ここまで弱ってしまっていたということは、『数日中ちかいうちに』殺せてたってことだ。


(今の事態のように事が露見しなければ、シュトレイユ王子もだけど、いずれは私も……)


ぞくり。と、背を寒いものが駆け抜けて行った。
でも、今回は助かったのだと思う。
長患いだろうが何だろうが、呪いの存在が露見して治療が始まった。
これ以上の呪いの悪化は、ない。


(レイの呪いは…ルナが症状を抑えつつの治療じゃないと、現状は改善が見られないレベルまで完成していたようだから……守護龍の目を掻い潜って、この呪いを盛っていったことを考えると、本当に微量微量で行われたのだろう。つまり本当に昔から、それこそ生まれた直後くらいから盛られていたと。そうなると……完治までは同じか、それ以上の期間がかかる事になるから…)


ルークはベッドから少し離れると、右手を高く掲げる。
するとシュトレイユ王子が寝かされていたベッドの近くに、小さなテーブルセットが現れて、ベッドの周辺を丈の短めのオーガンジーのような半透明な素材の天蓋がふわりと囲ってしまった。

室内なのに、ふわふわと揺れる天蓋。
この部屋の空調がしっかりきいている証拠なのだけど、ちょっと不思議な光景だ。

ルークはその様子を確認するとこちらに戻ってシュトレイユ王子が座ってた場所に座る…ついでに私を持ち上げると膝の上に…って、どさくさに紛れてなにしてるのさっ!?

呪いについて考え込んでいた私の思考を全て吹っ飛ばして、呆然としている私を、ルークは微笑みを浮かべて、そっと優しく撫でる。

完成された美しさではあるが、普段は人形のように表情を出さないルークがとった予想外の行動に、私と優しげな笑みを浮かべているルークとを交互に見つめ、見惚れつつも唖然としているフィリー姉様。

同時に呆れたようにルークを凝視するヴィンセント兄様。


(予想外ですよって顔してるけど、私が一番予想外ですからね?!…姉様)


そんな様子にルークは不敵な笑みを浮かべると、テーブルにオレンジ色の百合の刺繍がされたケープを置いた。

教会のシスターが身につけていたケープと、ほとんどデザインも刺繍も変わらない。
一つだけ違うのは、胸のあたりに黄色やオレンジをメインとした鮮やかな百合の花の刺繍が施されていたというだけだ。
一見しただけでは、祝祭用の豪華版なのだろうか?くらいにしか感じない。


「オレンジ、黄の百合は、偽りと憎悪を意味する。暗部やその周辺結社が使うにはぴったりだと思わないか?」

「確かに……」


しかし。と、ケープの隣に並ぶように置かれていたユージアのメモに目をやると、あからさまに大きなため息をついた。


「それにしてもユージア…絵心がないにしても限度があるだろう。これは……」


顔を覆うように眉間を押さえると、ため息をつく。


「つ…伝わればいいんだよっ!」

「伝わって…いなかったようだが?」

「えっと…ユージア?画家のようにとまではいかないけど、練習はしたほうがいいよ。高度な魔法を構築する際には……ほら、魔法陣、描くよね?歪んでると、上手くいかないから」


まぁ授業くらいでしか魔法陣なんて描かないけどさ。と、セグシュ兄様がフォローを入れる。

顔を真っ赤にしてルークを睨みつけているユージアに苦笑まじりで頷くルーク。
ユージアを見つめる眼差しは、どこか懐かしそうで、えもいわれぬ色を浮かべていた。


(あれ……魔法陣ってそんなに使わないものなのかな?)


魔道具マジックアイテム作ったりとかもだけど、魔物避けとかちょっとしたものは紙に魔法陣で描いておいて、あとは魔力を通すだけ!ってだけにしておいたら楽なのに。
そういう、お便利な使い方は廃れてしまっているのかしら?

カイルザークも同じように疑問に思ったのか、不思議そうな顔でルークを見つめていた。


「最近は、古代語が完全に廃れてしまってね。残念ながら授業以外で魔法陣を使いこなせる者は少ないが……ただ、古代語を覚えるのなら、魔法陣はスキルとしてほぼ必須になるから、もう少し…練習した方がいいな。課題を出しておこう」

「……お願いします」


悔しそうにだけど、ユージアはちゃんと返事をしていた。えらい。
ルークのことは芯から嫌い!というわけではないのだろう。
まぁ、服を剥がされてみたり、貞操の危機的に襲い掛かられてみたりしてれば、こういう態度にもなってしまうのだろうけど、そこはまぁ…ルークの自業自得もあると思うんだ。

それでも親として…いや教師なのかな…ちゃんと助言を聞き入れることができるのはえらいと思う。


ルークはテーブルの上のユージアの描いたメモを手に取ると…メモは手から忽然と姿を消してしまった。
証拠として使うのか、我が子の作品として回収したのか?後者だったら、ちょっと可愛いところもあるのかな?と思ったりもして、思わず笑みがこぼれる。


「さて……会話は一通り聞こえていたが、いくつか補足事項がある」


ここに居なかった間の会話まで、どうやって聞いてたのさ…と突っ込もうとして、気づく。
風の乙女シルヴェストルとの聴覚共有、かな?
ルナとフレアの姿しか見てないから、きっと忙しく飛び回ってるんだろうなとは思ってたけど。

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