288 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
288、呪いと絵心。
しおりを挟む『シュトレイユ。あの子の専属メイド。あれはダメ。すぐに外しなさい。近いうちに…行動を起こされるわよ?……今も起きてこれないのが証拠だと思って?』
星詠みの姫、クロウディア様の言葉が浮かび上がる。
彼女の『近いうち』とはどうも『数日中』なのだろうということは理解した。
だって、数日前に王子達の部屋に一泊してしまって…起きた時のシュトレイユ王子は、しっかり元気でいっぱい喋ってたもの。
それがここ数日のうちに、ここまで弱ってしまっていたということは、『数日中に』殺せてたってことだ。
(今の事態のように事が露見しなければ、シュトレイユ王子もだけど、いずれは私も……)
ぞくり。と、背を寒いものが駆け抜けて行った。
でも、今回は助かったのだと思う。
長患いだろうが何だろうが、呪いの存在が露見して治療が始まった。
これ以上の呪いの悪化は、ない。
(レイの呪いは…ルナが症状を抑えつつの治療じゃないと、現状は改善が見られないレベルまで完成していたようだから……守護龍の目を掻い潜って、この呪いを盛っていったことを考えると、本当に微量微量で行われたのだろう。つまり本当に昔から、それこそ生まれた直後くらいから盛られていたと。そうなると……完治までは同じか、それ以上の期間がかかる事になるから…)
ルークはベッドから少し離れると、右手を高く掲げる。
するとシュトレイユ王子が寝かされていたベッドの近くに、小さなテーブルセットが現れて、ベッドの周辺を丈の短めのオーガンジーのような半透明な素材の天蓋がふわりと囲ってしまった。
室内なのに、ふわふわと揺れる天蓋。
この部屋の空調がしっかりきいている証拠なのだけど、ちょっと不思議な光景だ。
ルークはその様子を確認するとこちらに戻ってシュトレイユ王子が座ってた場所に座る…ついでに私を持ち上げると膝の上に…って、どさくさに紛れてなにしてるのさっ!?
呪いについて考え込んでいた私の思考を全て吹っ飛ばして、呆然としている私を、ルークは微笑みを浮かべて、そっと優しく撫でる。
完成された美しさではあるが、普段は人形のように表情を出さないルークがとった予想外の行動に、私と優しげな笑みを浮かべているルークとを交互に見つめ、見惚れつつも唖然としているフィリー姉様。
同時に呆れたようにルークを凝視するヴィンセント兄様。
(予想外ですよって顔してるけど、私が一番予想外ですからね?!…姉様)
そんな様子にルークは不敵な笑みを浮かべると、テーブルにオレンジ色の百合の刺繍がされたケープを置いた。
教会のシスターが身につけていたケープと、ほとんどデザインも刺繍も変わらない。
一つだけ違うのは、胸のあたりに黄色やオレンジをメインとした鮮やかな百合の花の刺繍が施されていたというだけだ。
一見しただけでは、祝祭用の豪華版なのだろうか?くらいにしか感じない。
「オレンジ、黄の百合は、偽りと憎悪を意味する。暗部やその周辺結社が使うにはぴったりだと思わないか?」
「確かに……」
しかし。と、ケープの隣に並ぶように置かれていたユージアのメモに目をやると、あからさまに大きなため息をついた。
「それにしてもユージア…絵心がないにしても限度があるだろう。これは……」
顔を覆うように眉間を押さえると、ため息をつく。
「つ…伝わればいいんだよっ!」
「伝わって…いなかったようだが?」
「えっと…ユージア?画家のようにとまではいかないけど、練習はしたほうがいいよ。高度な魔法を構築する際には……ほら、魔法陣、描くよね?歪んでると、上手くいかないから」
まぁ授業くらいでしか魔法陣なんて描かないけどさ。と、セグシュ兄様がフォローを入れる。
顔を真っ赤にしてルークを睨みつけているユージアに苦笑まじりで頷くルーク。
ユージアを見つめる眼差しは、どこか懐かしそうで、えもいわれぬ色を浮かべていた。
(あれ……魔法陣ってそんなに使わないものなのかな?)
魔道具作ったりとかもだけど、魔物避けとかちょっとしたものは紙に魔法陣で描いておいて、あとは魔力を通すだけ!ってだけにしておいたら楽なのに。
そういう、お便利な使い方は廃れてしまっているのかしら?
カイルザークも同じように疑問に思ったのか、不思議そうな顔でルークを見つめていた。
「最近は、古代語が完全に廃れてしまってね。残念ながら授業以外で魔法陣を使いこなせる者は少ないが……ただ、古代語を覚えるのなら、魔法陣はスキルとしてほぼ必須になるから、もう少し…練習した方がいいな。課題を出しておこう」
「……お願いします」
悔しそうにだけど、ユージアはちゃんと返事をしていた。えらい。
ルークのことは芯から嫌い!というわけではないのだろう。
まぁ、服を剥がされてみたり、貞操の危機的に襲い掛かられてみたりしてれば、こういう態度にもなってしまうのだろうけど、そこはまぁ…ルークの自業自得もあると思うんだ。
それでも親として…いや教師なのかな…ちゃんと助言を聞き入れることができるのはえらいと思う。
ルークはテーブルの上のユージアの描いたメモを手に取ると…メモは手から忽然と姿を消してしまった。
証拠として使うのか、我が子の作品として回収したのか?後者だったら、ちょっと可愛いところもあるのかな?と思ったりもして、思わず笑みがこぼれる。
「さて……会話は一通り聞こえていたが、いくつか補足事項がある」
ここに居なかった間の会話まで、どうやって聞いてたのさ…と突っ込もうとして、気づく。
風の乙女との聴覚共有、かな?
ルナとフレアの姿しか見てないから、きっと忙しく飛び回ってるんだろうなとは思ってたけど。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる