私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
287 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

287、大人達の苦心と作戦。

しおりを挟む



「ただし、セシリアやエルが運ばれている最中に危害を加えられることがないように、そして所在を見失うことがないように、いざという時は君たちをすぐ保護できるように、そう考えられての事だったんだよ」

「どんなに叫んでも、聞こえてなかったみたいだけどね」


エルネストも同じ考えだったのか、思いっきり不満をあらわにしていた。
まぁ「そんなに大変だったのか!」と目をキラキラさせたレオンハルト王子に迫られて、すぐに何とも言えない顔になってしまっていたけど。


「……盗賊役が護衛達を一掃、その盗賊役を騎士団員が追い払って、護衛の代わりを申し出る。商隊としては護衛は必須だし、今までの負傷してしまった護衛も早く街で手当てを受けさせないといけないしで、護衛の申し出を、受けざるを得ない状況にした……少し出来過ぎな気がするけど?」

「カイは一丁前だなぁ……そうだね。それでも王都に入るまでのセシリア達の安全は、手に入れられた」


カイルザークの大人びた口調に、少しびっくりした表情になりながらも、丁寧に説明してくれるヴィンセント兄様。
……確かに3歳児の使う言葉じゃ無いし、幼児の思考でも無いや。
『子供らしく振る舞う』ってことをうっかり忘れる程、不快なのだろう。
無意識になんだろうけど、しっぽがばっと立って少し前のめりになっている。

子供、好きだったもんね。
シシリーわたし程じゃなかったけど研究人間だったカイルザーク。
だけど、フィールドワークの度に当時の王都の孤児院によっていたことを知っている。

顔を出す度にちょっとした手作りの魔道具マジックアイテムのおもちゃ…当時でも子供向けのか魔道具というのが珍しくて、貴族の子供くらいしか遊んだことのないような、そんな高級なおもちゃを持ち寄っていたそうで、お礼の手紙が研究室宛に度々届いていた。


騎士団かれらの狙いとしては『どうやって街に違法奴隷を運び込んでいたか』こちらの現行犯も狙ってできたからね」

「あ……荷馬車の中を確認しなかったやつ!」

「そうだ。普通であれば、街の入り口で荷を改める。さらには商業地区の入り口でも荷を改める。そうやって違法なモノの持ち込みを監視しているはずなのに、実際には持ち込まれてしまっていた……ここまでくると完全に、組織的な犯行としか言いようが無いんだけどね」


エルネストのちょっと怒ったような声に、ヴィンセント兄様は困ったように肩を竦める。
確かに顔パス状態だったもんなぁ。と、当時を思い返す。
ちゃんと確認してよね!って奴隷運搬用の荷馬車の中で、エルネストとレイ…ゼンナーシュタットが騒いでたもんね。


「ん~まぁ、そんなもんじゃない?僕も深夜とかに何度か街の外に出してもらってたよ?」

「……それはどこの門から?」

「正門。あとは貴族門……たまに王城の門も」

「ザルだね」

「……だな」


ユージアの言葉に、完全に呆れたと言う表情のカイルザーク。
そしてピシャリと言うカイルザークの言葉に、大きくため息を吐きながら同意するヴィンセント兄様。
まぁ実際、呆れるしか無いよね。

ちなみに、『正門』とは王都自体への入り口で『貴族門』は貴族街への入り口。そして『王城の門』は…そのままだよね、王城の入り口だ。
どれもが遅い時間になると閉門と言って、よほどの緊急時以外は出入りができなくなる。

つまり団体ですら通してもらうことがほぼできないはずなのに、ユージアは…しかも個人で通れてしまっていた。
ザルだよね、本当にザルだ。

そして、今の会話も重要な証言になったのだろうか?
ヴィンセント兄様は呆れつつも手紙に書き込みをしながら話を続ける。


「……それは、どうやって通してもらってたんだい?」

「どうやって…?ん~僕の場合は、首輪で顔パスみたいに。まぁ顔は大体ローブで隠してたけど。他の暗部とかは、教会のローブ……じゃ無いな、なんかここに刺繍がしてあるローブで通してもらってたと思うよ」


こんな感じの刺繍で。と、説明をすかさずフレアが用意してくれたメモに書き込んでいくんだけど……。


「ユージア、絵…下手だな……」

「わっ…伝わわかればいいんだよっ!」


覗き込んできたレオンハルト王子の言葉にユージアは憮然とした顔で答えていたけど。
伝えたい相手にも…どうやら伝わらなかったようで、ヴィンセント兄様は首を横に小さく振った。


「……ごめん。私にはわからない…」

「ヒトデ…かな?似たようなのをよく取ってたよ」

「エル…違うんだ、海の、生き物じゃない…よ」


エルネストが真剣にイラストを見ての反応に、ユージアはさらに泣きそうな顔になってしまった。
その反応が年相応の子供に見えて、思わずクスッと笑ってしまった。


「ヴィンセント、それは百合だ…オレンジの、百合」


静かな、しかし今にも笑い出しそうな声が背後から聞こえた。
その声の方へ振り返ると、出入り口のドアの前に、微かに笑っているルークの姿があった。


「花だった…のか?」

「…花、です」

「そういや教会の花が白い百合だったね」


教会の象徴とされている花が白い百合なのだそうで。
そう言われてみれば、教会の大きな布物のには錦糸銀糸で白い百合のモチーフが刺繍されてい多様な気がする。


「ルーク、お帰りなしゃい…あれ?」

「また戻ってる…ふふっ」


笑いながらこちらへ近づいてくると、私の隣に座っていたシュトレイユ王子を抱き上げた。
静かだと思っていたけど、どうやらいつの間にかに眠ってしまっていたようで、抱きあげられてもなお、気付いた様子もなく、ルークの腕の中でもすやすやと寝息を立てている。
王子の安らかでとても可愛らしい寝顔。なのにそれを見つめるルークの表情はとても険しかった。


「これはどちらも…長患いになりそうだな……ルナ、これ以上の軽減はできないのか?」

『難しい…と言うか、シュトレイユ王子は呪いが強すぎます。セシリアに至っては本来の成長発達もあるみたいなので、これ以上は難しいです』

「あ……元からゆっくりな子だったのね」


フィリー姉様がくすりと笑う。
発達は…しょうがないと思うのですよ。

ルークはシュトレイユ王子をベッドへと運ぶと、寝かし直していた。
まだ……午前中も、朝食が終わったばかりだ。
おやつの時間と考えても、まだ疲れて寝てしまうにはずいぶん早い。


「まぁ…セシリアの症状だったら、学園入学までに治ればいいから、大丈夫でしょ」

みんなで私を見つめては、笑う。
なにこの扱いの違い!私だって呪われてたのでしょう?
もうちょっと心配してあげてよっ!

まぁそれはともかくとして。
シュトレイユ王子へとかけられていた呪いはとても深刻で、8割がた完成していたそうだ。
毒のように体内に摂取することによって、構築されていく呪いで…つまりは日々の食事に、呪いの材料になるようなものが、混ぜ込まれていたということになる。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...