286 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
286、状況の確認だろうね。
しおりを挟む「ま、ゼン自身は話すだけ話してすぐに脱走してしまってね。守護龍がカンカンだったそうだけど」
「そういえば……すぐ戻ってきたもんね?そのあとは…」
「そうだね、ゼンと入れ替わるようにユージアが奴隷契約の締結の書類を持って現れて、その時に色々説明してくれたんだってね。そこから、ゼンの話の裏付けもいくつか取れて…」
「それと同時に国の内偵から、セシリアたちが王都へ向かって移動中だと知らせが届いたが……かねてから、その内偵たちが追っていた違法奴隷商の奴隷として移動中だという、報告でね。びっくりなんだけど…これ、本当?」
ああ、それには私もびっくりだったよ!
思わずコクコクとうなずく。
「起きたら、檻の中で…びっくりだった」
今まで教会の悪事に対して、内偵を進めていた案件が他にもあった事。
……それが人身売買だったのだそうで。
「……僕が王都から戻って、セシリアたちに追いついたときは、ちょうど奴隷商の荷馬車に2人が放り込まれてるところだったから…びっくりどころか、どうしたものかと混乱してたよ。しかも、セシリアってば、放り込まれても気づかないで、そのまま朝まで熟睡だったし……」
ああ、やっぱりユージアは早々に追いついてたんだね。と、妙に納得してしまった。
魔導学院からメアリローサに帰る時に、足の速さに関しては目を見張るものがあったから。
体力不足で最初にバテちゃったけど、さすがはエルフというか…走りはしっかり速かった。
……まぁ、一緒に走ってた人たちはもっと速かったわけだけど、あれはしょうがない。
ルークは同じくエルフだけど、魔術師団とはいえ現役の騎士団員だし、カイルザークに至っては獣人だ。
彼らに体力勝負で勝つのは厳しいと思うんだ。
「ふっ…ははっ。セシリアは、怖くなかったのか?」
レオンハルト王子が笑いまじりで聞いてきた。
やっぱり、こうやって言葉で聞くと笑えちゃうよね。
その最中はすごく怖かったんだけどさ……子供の睡眠の深さって凄いよね。
まぁ、初めての外出の後から、気を張ることばっかりで、野営とはいえ1人ぼっちではなくて、安心して寝ちゃったんだと思うんだ。
「怖かったけど、ゼンが大丈夫って言ってたから」
「放り込まれてきたのは、狸寝入りしてるゼンと熟睡のセシリアだったからね。檻が閉まった途端にゼンは起きたし……」
小さなため息と呆れ顔のエルネスト。
って、ゼンナーシュタットは狸寝入りだったのね……。
一緒にしっかり寝てしまってたのだと思ってたのに。
ちょっとショックを受けて、その顔がまた面白かったのかレオンハルト王子が私を見たままくすくすと笑い出す。
レオンハルト王子とシュトレイユ王子にしてみたら、冒険物語と変わらないんだろうなと…だって思いっきり目をキラキラとさせながら聞いてるし。
そんな様子を見渡しながら、ヴィンセント兄様が口を開いた。
「そうだね、そこでエルとセシリアたちは合流したんだね」
エルネストがゆっくりと頷いた。
ヴィンセント兄様が同調するような確認をしているような口調で話していて…時折、手紙を見つつ、そしてそこに何かを書き込みながら話していることに気づいた。
これは本当は聴取なんだろうなと思った。
手紙を見ているだけなら、そこに事件の詳細が書かれていての読み上げだったのだろうとは思うのだけど。
1対1では相手は子供だし、確実に萎縮してしまうだろうから。
そうなるとその時に感じていた違和感とか、ちょっとした情報というものが得られにくくなってしまうから。
(今みたいに和気藹々とした雰囲気で聴取ができたら、通常よりも多くの情報が得られるんじゃないかな?喋りやすいもんね)
子供だけど、被害者だし当事者だし。
他の被害者のためにも、拾える情報は全て拾って役立ててほしい。
「まぁ、困ったことにね。本当なら、すぐにでもセシリアのために迎えを出すところだったのだけれど、相手があまりよろしくない部類の人たちでね……一部の騎士団員でひと芝居打つことになったそうだよ」
「盗賊の襲撃と騎士団員の救援だね……あれ、どっちも騎士団員だったもんね」
「ユージアはよく見てるなぁ…正解だよ」
「やった!」
あぁ……ここにも同じく体験型冒険譚状態に感じてる子がいたわ……。
思わずジト目になってしまったが、エルネストも同じだったようで。
「王国騎士団なら、そんなことしなくたって……」
「エルにしたら、すぐに助けて欲しかったろうが……大人の事情だね」
ヴィンセント兄様が小さく首を横に振った。
金色の髪がふわりと揺れる。
「捕まえるのは、違法奴隷商だけじゃダメってこと?」
「そうだ。こういう悪い事ってのは、商売と同じで、買う人と売る人がいる。あの時すぐにエル達を助けてしまったら、売る人だけしか捕まえられないだろう?……そうすると、買う人が残ってしまうんだ。買う人が残っていたら、また売る人が現れてしまうよね?」
いたちごっこ、トカゲの尻尾切りとか言うやつだね。
確かにこういうことに関しては捕まえられるチャンスがあるのならば、一網打尽にしてしまいたいのはわかる、わかるけど、当事者にも一言欲しかった……。
荷馬車の中で、軽く絶望してたからね?!
「しかもだ、そのどちらも内偵が時間をかけて捜査をしても、はっきりとした証拠が出てこなくて、なかなか捕まえることができていなかった相手だ、被害者を増やさないためにも、一網打尽にできることがとても大切だと思わないかい?」
そうやって説明されれば、大切だということを理解できなくもない、けど、やっぱり納得いかない。
これは当事者と少し離れたとこから客観的に判断している者との温度差なのかもしれないけれど。
それくらいには、怖かったんだよ。
0
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる