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はじまりはじまり。小さな冒険?
286、状況の確認だろうね。
しおりを挟む「ま、ゼン自身は話すだけ話してすぐに脱走してしまってね。守護龍がカンカンだったそうだけど」
「そういえば……すぐ戻ってきたもんね?そのあとは…」
「そうだね、ゼンと入れ替わるようにユージアが奴隷契約の締結の書類を持って現れて、その時に色々説明してくれたんだってね。そこから、ゼンの話の裏付けもいくつか取れて…」
「それと同時に国の内偵から、セシリアたちが王都へ向かって移動中だと知らせが届いたが……かねてから、その内偵たちが追っていた違法奴隷商の奴隷として移動中だという、報告でね。びっくりなんだけど…これ、本当?」
ああ、それには私もびっくりだったよ!
思わずコクコクとうなずく。
「起きたら、檻の中で…びっくりだった」
今まで教会の悪事に対して、内偵を進めていた案件が他にもあった事。
……それが人身売買だったのだそうで。
「……僕が王都から戻って、セシリアたちに追いついたときは、ちょうど奴隷商の荷馬車に2人が放り込まれてるところだったから…びっくりどころか、どうしたものかと混乱してたよ。しかも、セシリアってば、放り込まれても気づかないで、そのまま朝まで熟睡だったし……」
ああ、やっぱりユージアは早々に追いついてたんだね。と、妙に納得してしまった。
魔導学院からメアリローサに帰る時に、足の速さに関しては目を見張るものがあったから。
体力不足で最初にバテちゃったけど、さすがはエルフというか…走りはしっかり速かった。
……まぁ、一緒に走ってた人たちはもっと速かったわけだけど、あれはしょうがない。
ルークは同じくエルフだけど、魔術師団とはいえ現役の騎士団員だし、カイルザークに至っては獣人だ。
彼らに体力勝負で勝つのは厳しいと思うんだ。
「ふっ…ははっ。セシリアは、怖くなかったのか?」
レオンハルト王子が笑いまじりで聞いてきた。
やっぱり、こうやって言葉で聞くと笑えちゃうよね。
その最中はすごく怖かったんだけどさ……子供の睡眠の深さって凄いよね。
まぁ、初めての外出の後から、気を張ることばっかりで、野営とはいえ1人ぼっちではなくて、安心して寝ちゃったんだと思うんだ。
「怖かったけど、ゼンが大丈夫って言ってたから」
「放り込まれてきたのは、狸寝入りしてるゼンと熟睡のセシリアだったからね。檻が閉まった途端にゼンは起きたし……」
小さなため息と呆れ顔のエルネスト。
って、ゼンナーシュタットは狸寝入りだったのね……。
一緒にしっかり寝てしまってたのだと思ってたのに。
ちょっとショックを受けて、その顔がまた面白かったのかレオンハルト王子が私を見たままくすくすと笑い出す。
レオンハルト王子とシュトレイユ王子にしてみたら、冒険物語と変わらないんだろうなと…だって思いっきり目をキラキラとさせながら聞いてるし。
そんな様子を見渡しながら、ヴィンセント兄様が口を開いた。
「そうだね、そこでエルとセシリアたちは合流したんだね」
エルネストがゆっくりと頷いた。
ヴィンセント兄様が同調するような確認をしているような口調で話していて…時折、手紙を見つつ、そしてそこに何かを書き込みながら話していることに気づいた。
これは本当は聴取なんだろうなと思った。
手紙を見ているだけなら、そこに事件の詳細が書かれていての読み上げだったのだろうとは思うのだけど。
1対1では相手は子供だし、確実に萎縮してしまうだろうから。
そうなるとその時に感じていた違和感とか、ちょっとした情報というものが得られにくくなってしまうから。
(今みたいに和気藹々とした雰囲気で聴取ができたら、通常よりも多くの情報が得られるんじゃないかな?喋りやすいもんね)
子供だけど、被害者だし当事者だし。
他の被害者のためにも、拾える情報は全て拾って役立ててほしい。
「まぁ、困ったことにね。本当なら、すぐにでもセシリアのために迎えを出すところだったのだけれど、相手があまりよろしくない部類の人たちでね……一部の騎士団員でひと芝居打つことになったそうだよ」
「盗賊の襲撃と騎士団員の救援だね……あれ、どっちも騎士団員だったもんね」
「ユージアはよく見てるなぁ…正解だよ」
「やった!」
あぁ……ここにも同じく体験型冒険譚状態に感じてる子がいたわ……。
思わずジト目になってしまったが、エルネストも同じだったようで。
「王国騎士団なら、そんなことしなくたって……」
「エルにしたら、すぐに助けて欲しかったろうが……大人の事情だね」
ヴィンセント兄様が小さく首を横に振った。
金色の髪がふわりと揺れる。
「捕まえるのは、違法奴隷商だけじゃダメってこと?」
「そうだ。こういう悪い事ってのは、商売と同じで、買う人と売る人がいる。あの時すぐにエル達を助けてしまったら、売る人だけしか捕まえられないだろう?……そうすると、買う人が残ってしまうんだ。買う人が残っていたら、また売る人が現れてしまうよね?」
いたちごっこ、トカゲの尻尾切りとか言うやつだね。
確かにこういうことに関しては捕まえられるチャンスがあるのならば、一網打尽にしてしまいたいのはわかる、わかるけど、当事者にも一言欲しかった……。
荷馬車の中で、軽く絶望してたからね?!
「しかもだ、そのどちらも内偵が時間をかけて捜査をしても、はっきりとした証拠が出てこなくて、なかなか捕まえることができていなかった相手だ、被害者を増やさないためにも、一網打尽にできることがとても大切だと思わないかい?」
そうやって説明されれば、大切だということを理解できなくもない、けど、やっぱり納得いかない。
これは当事者と少し離れたとこから客観的に判断している者との温度差なのかもしれないけれど。
それくらいには、怖かったんだよ。
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