私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
289 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

289、足取りと、協力者。

しおりを挟む


「ガレウス司教とフィア司祭の足取りについてだ」


セシリアわたしとユージアが『監獄』に居たとき、教会では騎士団の強制捜査が入って、2人ともが重要参考人として拘束されたそうだ。
しかし、翌日にはものの見事に別人にすり替わっていた、と。

ですよね、だって私たちが『監獄』脱出後に違法奴隷商の荷馬車に放り込まれて、教会へ『籠』へ連れて行かれそうになった時に、その場で出迎えてくれていたのがフィア司祭だったもの。

そして、その『籠』から数人の少年を救出した時に、錯乱状態のフィア司祭を確保した。
…したのだけどこちらも、牢に辿り着く前に別人にすり替わられていたらしく、現在も逃走中なのだそうで……ってザル!ここもザルだった…。

進んで身代わりになろうとする人材がいる事にも驚きだけど、その手際の良さを考えると……。


「騎士団員に内通者がいたからな…まぁ今回の妖精の暴走の件で、その内通者も一掃されたわけだが」


説明をしながらチラリとルナ、そして黒い子犬に視線をやる。
力技すぎるような気もしなくはないんだけど、良い方に転がった!と考えちゃって良いのかしら?
ていうか、やっぱりあの子犬、へルハウンドって呼んでた子だよね?!


「司教も司祭も、2人の現時点の所在は掴めている。ただし、当面は捕えても同じようなことが続くと思われるために、敢えて監視するに留めている」


ザルすぎて、捕まえるたびに逃げられるくらいなら、常に視界に入れて監視している方が確実ってことですよね。
それと、捕まえてはいないから十分に注意しろ!ということですか。
大人ならともかく、常に受け身になってしまう子供達はどうやって自衛しろと?という考えになってしまうのだけど。


「……じゃあ、次は私が話しても良いかしら?」


何故か少しジト目気味のフィリー姉様が、声をあげた。
まぁ…うん、理由はわかるんだけどね、その視線を私に向けないで欲しい。
不可抗力だから。

現在進行形でルークの膝の上で、何故かルークに給仕をされている…。


(焼き菓子を取るにも手が届かないからね、とってくれるのはありがたいんだけど、自分で食べれるからね?!)


普段の無表情はどこへ行ったのか、その端正な顔に満面の笑みを浮かべて、焼き菓子を口元まで運んでくれる。

きらっきらの笑顔で『はい、あーん』ってやつですよ。
なんだっけ?前世にほんにそんな感じの話題になっていたお店があったよね?
メイドカフェだっけ?……執事カフェとかもあったってテレビで見たような記憶があるのだけど、こんな感じなのかしら?


(衣装が素敵ねぇ。とかイケメンさんねぇ。とかお話は聞いたことがあるけど、これはちょっと恥ずかしすぎる)


そろそろと膝から降りようにも、お腹のあたりでガッチリホールドされてしまっていて逃げられないし。
まぁでも……焼き菓子美味しいし、紅茶も美味しいし…ルークの膝の上って、とっても居心地がいいんだけど、ね。

子供が大人の膝の上に座りたがる気持ちが、今更ながら良く分かったよ。
優しい温もりと、包まれてる感じが凄く安心するんだよね。

時折、さらりと黒い艶髪が視界に入ると、頭上に吐息を近く感じる。
私の髪にキスを落としたり、頭に頬を当てたりしているようなのだけど……。

その度にフィリー姉様の視線が遠くなっていくのがわかるわけですが、本当に不可抗力だからっ!!!


「まぁいいわ……さて。私、あなた達の姉ではあるけど、結婚していて婚家で暮らしているし、正直あなた達とは接点が無い。こんな髪の色ではあるけど、聖女ではないのがはっきりしているし、婚家だって王家とは全く絡みがないのに……さて、なんで今回の件で無関係っぽい私が『避難所ここ』に保護されているのでしょうか?」


ぐるりと周囲を見渡すように視線を向けたあと、意味深に笑う。
そういえばそうだ、全く関係ない。
あれ?と、いう顔をしていると「幼児には難しすぎる話ね」と、くすくすと笑われてしまった。


「私ね……フィアの唯一のお友達なのよ。そして多分、情報源にされている。ま、知ってて付き合ってるんだけどね。って事でこれ。よく見て、覚えておいてちょうだい。そして、これは絶対に身につけないように」

「…これは」


赤い宝石がはめ込まれた、華奢なつくりのネックレスがテーブルに置かれた。
いぶし銀のチェーンで豪華ではないけれど、安っぽくも見えないデザインだった。

ただ、わかる人が見れば、赤い宝石はどう見ても魔石を加工した物だったし、留め金の形がとても頑丈に、簡単に外れない形になっていて…どう見てもお洒落目的に作られた物ではない事が容易にわかる。

実際、ユージアはこれを見た瞬間に顔色が悪くなってしまったし、カイルザークも私も固まった。
ここにあってはいけない…魔道具マジックアイテムだった。


「ユージアは馴染みがあるわよね」


ユージアは悲しそうな顔になって、コクリと頷く。
そう……『隷属の首輪』だった。
ただし、ユージアが着けていた物よりはずっと簡易な物で、造りも華奢だった。
言われなければ女性用、もしくは子供用のアクセサリーにしか見えない。


「教会には、これを作れる優秀なお抱えの錬金術師がいたわ。……ま、錬金術師そのこの首にも、これがついてたから、本意かどうかはわからないけどね」


いや、それ、絶対に不本意だからね?!
今回の騒動の直前に、フィアから預かったと、教会の人間から渡された封書に中に、手紙とこの『隷属の首輪』が同封されていたのだそうで。

手紙には、家族が増えたと聞いたのでお祝いだと『新しい兄弟達に着けてあげてね』と……。


「いやぁ、ついに来たか!と思っちゃったけどね。本当は全部で4個あったのだけど、1個は、持ってきた使者に着けてあげたのよ。素敵だから着けて見せて?って。……どうなったと思う?」


意地の悪い笑みを浮かべる。


「着けたら、ぶつぶつと譫言を呟きながら、まっすぐ教会へ帰っていったわ」


つまり、エルネストやユージアを諦めていない。

『隷属の首輪』はつけた瞬間から、一方的に奴隷契約を承諾したとみなされて、契約者の意のままに動き出す。
ぶつぶつ言いながら帰ってしまった、というのは『帰る』事が命令されてたのではなくて、命令を伺いに戻ったという事だ。

つまり、その程度には拘束力のある魔道具マジックアイテムなのだろう。
同じように作ったって、技術によって発動の効果はピンキリとなる。
ここまでしっかり発動するのであれば、腕の良い錬金術師までもが、囚われているという事になる。

そして、彼が囚われている間は『隷属の首輪』が製造され続けていると思って良いのかもしれない。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...