私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

290、誘拐と首輪と。

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ぞわぞわと嫌な感覚が体を走っていく。
隷属の首輪これ』はそんなに気軽に使って良いものではない。
作成にあたっても、かなり気を使って作る物だし……一体何を考えているのか。
いや、考えていないからこういう事態になったのか?


「4個だからエルとユージアと、セシリア、あとは……カイのことは知らないだろうから……もう1つはセグシュの分かしら?」

「なんで僕…」

「従順な旦那様候補だから?」

「うわ……でもそれ、僕である必要ないよね?!」

「冗談よ。ふふっ。最後の1つは、白い猫みたいなやつ。セシリアがガレット公爵家おやしきで飼い始めたのですってね?……それが欲しいみたいよ?『全員お揃いでつけたら可愛いかと思って作らせてみたの』って書かれてたから」


セグシュ兄様のすごく嫌そうに引きつった表情を見て、愉快と言わんばかりにくすくすと笑う。


「そうね、あの子はあなたの外見だけを好きみたいだから、中身は要らないわね?」

「うへぇ……なんだそれ」

「だって、そういう子なんですもの。そうじゃなきゃ、誘拐した相手わたしを親友と呼ぶとか図々しいことしないわよ。反吐が出るわ」


常識的にありえないでしょう?と、笑う。
まぁ有り得ないよね。


「誘拐騒ぎかぁ…僕は使用人達から断片的に、あと学園で噂として聞いた話でしか内容を知らないからなぁ」

「まぁそうよね、赤ん坊だったセグシュが全てを理解していたらそれはそれで怖いわ」


またもや、セグシュ兄様を揶揄う目つきでにやりと笑うと、当時のお話をしてくれた。


フィリー姉様の話によると、セシリアわたしの時のように魔力測定会に出席したその日に、教会に拐われてしまったそうだ。
上の姉…ドロッセル姉様と一緒に。
ドロッセル姉様……えっと長女で、ガレット公爵家の子供達の一番上のお姉様です。

当時、ドロッセル姉様とセオドア兄様6歳、ヴィンセント兄様5歳、フィリー姉様3歳。
そしてセグシュ兄様が1歳…当時の姿が全く想像つかないのだけど、ちびっ子いっぱいのカオス!なのは理解できた。


ドロッセル姉様とセオドア兄様は本来3歳児で受けるはずの測定会に出席した事がなくて、この時、フィリー姉様と一緒に測定を受けたらしいんだ。
簡易的なものは、してあったから魔法学園には規定通り5歳から入学済みだったのだけど、ちゃんと公式な場での記録がなかったために、改めて測定会に参加したのだそうだ。

って、兄弟の年齢を聞いていて気づいたんだけど、ドロッセル姉様とセオドア兄様が3歳の時って…フィリー姉様0歳…つまりタイミング的には母様は妊婦でも臨月か、生まれていたとしても母乳育児云々以前に母体がボロボロですよ……って事で外出は厳しい。

さらに、ドロッセル姉様とセオドア兄様自身も双子だから…という理由だけでは無いのでしょうけど、身体が弱かったそうで。
なかなか測定会に出席できるタイミングがなかったのだそうだ。


前世にほんで息子が3人いただけでカオスだったのに、4人。しかも双子もいるとか…大変だったろうなぁ)


まぁ公爵家こちらではメイドも乳母もつくし、前世にほんでワンオペなんて言われて問題にもなった孤独な育児状況にはならなかったろうけど、それでも大変なことには変わりない。

そんな中での魔力測定会で、測定の為にとスタッフに手を引かれていったドロッセル姉様とフィリー姉様が、そのまま会場から忽然と姿を消した。

誘拐か!?と、騒ぎになりかけたところで教会側から『司教の娘フィアと会場で意気投合して、今は教会内で遊んでいる』という旨の連絡とともに『二人とも教会での滞在を望んでいるので、学園入学まで教会で聖女としての教育を』と一方的に言われ、それ以後の返答がなくなってしまったそうだ。


「あの時は……そうだな、2人の魔力の残り香のようなものは感知できていたから、無事なのはわかっていたが…肝心の2人の所在は何故か精霊で追う事ができなかった。今考えると『監獄』もしくは『籠』の中にいたのだと思われる」


ルークの説明を聞いて、あぁ、ユージアと同じ状況だったんだ…そう思うと途端に恐ろしくなる。


(……子供をさらってる時点で絶対に許せないんだけど。親の精神的なダメージわからないのかしら?まぁ、わからないから、こんな事件起こすのか……)


どこからどう見たって、完全に組織的な誘拐なわけだけど…教会へ子供を返すようにと連絡をしても、『子供達が望んでいるから』とか、どうにもこうにも屁理屈のように言葉を並べられては、安否の確認すら取れないような状況が続く。
数日が経過しようとした頃、なんと自力で教会から姉妹が出てきたらしい。

その、教会脱出の際に、フィリー姉様達はユージアに外へと案内してもらったのだそうだ。


「ということで、私、ユージアとは昔、会った事があるのよ。覚えていないでしょうけど……あなた一応、私の恩人なのよ?2度と捕まらないように気をつけてよね?」


フィリー姉様のその言葉に、激しく怒られた意味を理解した。


「フィリー姉様…ごめんなしゃい」

「ああ、良いのよ?私もいきなり怒鳴ってびっくりさせちゃってごめんなさい。まさか、あの時助けてくれたユージアおにいさんの中身が、あんなに幼くて、変態的どマゾな思考な子だとは思わなかったし」

「ちょっと…言い方!」


ユージアが顔を真っ赤にして、反論していた。
同時に、ぶふっ!とレオンハルト王子の笑い声が聞こえる。

咄嗟に手を当てて口元を隠してたけど…遅いよ?
俯いて我慢しているのか、テーブルから辛うじて見える、金髪の頭がふるふると小刻みに震えていた。


「あの時助けてくれた人が目の前にいて、本当はお礼を言わなきゃいけないのに、まさかの自分の身内いもうとがその人に酷い事をしている状況だったなんて…。と、短慮を起こして思わず怒鳴ってしまったの、本当にごめんなさいね」


そりゃ怒るよ。
私だって、そういう場面であれば怒ってたと思う。
恩に対してのお礼をする以前に、身内が既に仇を返しまくってるとかね……ダメすぎる。
フィリー姉様だって悪くない…。


「奴隷契約を解消したくなかった事情も聞いたし、結果的にではあるけど、今は奴隷ではなくなったのでしょう?……それがどちらにも不本意な物でなければ、問題は無いわ」


再度謝ろうとしたら、問題は無いと止められてしまった。
そして、すごい勢いで遠い目になっていくフィリー姉様。

……あー、うん。
そろそろ私、ルークの膝から降りたいなぁ……。
思わず私も遠い目になる。
なにどさくさに紛れて、頭に頬擦りとかしてるのさっ!!!

こういう時くらいちゃんとお話をさせてよっ!

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