私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

297、side シシリー。猿のノミ取り親子的な。

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『初めて……この姿を褒められました』

『そうなの?こんなに素敵なのに』

『気味悪がられるだけですよ。同族にだって……』


小さく息を吐く音が聞こえた。
耳が後ろに下がりっぱなしだ。
そんな耳を前へ押し戻して、耳の付け根の毛の柔らかい部分を梳いていくのだけど、そんなに不安なのかな?

ぐいぐいと耳は後ろへと戻ってくるし、そのうち俯いてしまったので、表情は背後から見えないのは当たり前だけど、そんなことより、私がそのまま前へつんのめるように転がり落ちそうになってきてしまった。


『忘れましたか?実際、私は異質だ、と……群れから追い出されてここにいるんです』

『うん。聞いた。知ってる。でもね。とっても幸せな感触なのよ?』


大丈夫大丈夫。と、ポンポンと軽く叩くように、額の部分を梳きつつ撫でる。
ちょっと体勢が前のめりになってて、そろそろ転がり落ちそうで、私の方が大丈夫じゃなくなってきてるんだけど、カイルザークは大丈夫。
そんなの心配すべきことじゃないよ。


『こことか、めちゃくちゃふわふわだよね!潜り込んで寝たい。ここなら確実に安眠できるよね』


耳の後ろの柔らかい毛が密に生えている部分から、毛並みにそって首の両サイドを梳いていく。
あまり深く梳きすぎて、地肌を傷つけないようにと先に手を撫でるように押し付けると、深く深く沈み込む。


(それがもう、なんとも言えないくらいに柔らかくて、肌触りが良くて、しかも体温を感じられて暖かくて、幸せな感触なんだよ)


梳くのがどんどん楽しくなっていくのだけど、これきっと明日は筋肉痛だな~。
とにかく感触が幸せすぎて、作業に夢中になりながらの会話だった訳だけど。


『それは色々と、差し障りがあるのでやめてください』

『差し障りって……特に無くない?』


とても困ったというか、酷く照れているような小さな声が聞こえてくる。
差し障り…特にないような気がするんだけどね。
意味がわからずに「なんだろう?」と、首を傾げてしまった。


『……人化した私に同じことが、できますか……?今、人でいう、裸なんですけど』

『あ……うん。それは差し障る。思いっきり差し障るね!ごめんっ』


そういやそうだった、ゲストルームで洋服脱いでるんだもの。
獣人は獣化した時は被毛が衣類がわりだとは言うけど、部分獣化の獣人さんは、ちゃんと着衣してたもんね。

裸で昼寝とか……ダメだわ。
少し恥ずかしくなって、壁に頭をつける要領でカイルザークの脇腹あたりに額を近づけると、そのまま深く沈み込んでしまって、目算狂ってバランスを崩し、頭突きをしてしまった。

人化状態で考えると、セクハラとかいう問題をすっ飛ばして、責任者としてのシシリーわたしの首が飛びかねない。危険すぎ。大問題だ。

そう思いつつも、カイルザークの見事な毛並みに心奪われて、毛を梳きつつもついでにふわふわな感触を楽しんでいた。


『あ~幸せ!ふわっふわで気持ち良いねぇ。背中のここ、なかなかにいっぱい取れるから、ちょっと強く梳いてるんだけどカイは痛くない?』

『すごく、気持ち良いです。あと、そこ……微妙に背中じゃ無いようなんだけど……』

『ん?……あー。お尻か!ごめんっ!』


ごめん!と、謝りつつも、正直どこからが腰で、お尻部分なのか判らない。
でもまぁ、位置的にはしっぽ間近だったので、きっとお尻だったのだろう。
意外にこの部分も手が届かないのか、背中以上にごっそりと毛が取れる。
お尻だからと言われても、流石にここを中断とか、この毛がごっそり取れる爽快感を知ってしまったら、やめられませんよ?


『……あーでも、もうちょっとでお尻の辺りも全部梳けそうだから、続けてもいい?』

『先輩がイヤでなければ……お願いします』

『全然イヤじゃないよ?ふわふわモフモフ触り放題とか、もう、幸せすぎて』

『……っ!先輩っ!だから、そこっ!お尻ですから!頬擦りとか……やめてください』

『はっ!そうだった!』

『えぇぇ……』


ふと、大きく動かれた反動で背からずり落とされたので声の方を見ると、前脚で器用に頭を抱え込んでいるカイルザークが見えた。
なんか猫っぽくて、可愛い。

ていうか、お尻に頬擦りとか赤ちゃんのお尻ならぷるぷるで、やってしまいたいと思った事があるけど、あれはきっと許されると思うのだけど、それ以外にやるとか変態だわ……。
自分の無意識の行動に戦慄しつつ、少しだけ反省する。


さて、背中からお尻(!)までは終わった。脚も外側は終わった。
しっぽは自分でできるらしい。却下された。残念。

お腹とか内側は……流石に見えちゃいけないものが見えてしまいそうなので、やってません!
……やりたいけどね。お腹って、背中よりももっと柔らかな毛だろうし。


『一応背中は終わったよ~。首回りも梳いていい?』


首回りもかなり立派な襟毛……犬の場合はこの辺りの毛をエプロンって呼ぶらしいけど。
そこも梳きたいなぁ。
さっき耳の後ろを梳いた時に、部分的には触ったんだけどね。気になってたの。

うん、やっちゃおう。


『えっと……』

『ちょっと頭上げてね』


前脚で頭を隠す(抱える)という、なかなか器用なポーズになっていたので、前脚を引っ張って頭を上げさせて、カイルザークの返事を待たずに問答無用で梳き始める。


意外に手が届きそうなものなのだけど、ここもごっそりと毛が取れた。
首の後ろも、顔をぐーッと上へ向かせて喉の部分もやったし。


『これは痒いよね……』

『……ここまで抜けるとは…思いませんでした』


私の声はもちろんだけど、カイルザークの声までが呆然とした色を持っていた。

背後を振り向くと、黙々と梳いて抜いた毛の山が出来上がっていた。
文字通りの山で、これを綿にしたら、ふわっふわの布団が何組か作れそうな量が取れてる。


ちなみに今は、横に寝転がってもらって、脚の内側やお腹の部分を梳いてる。


(……見られちゃ困る部分は、隠せるらしいですよ!知らなかったけど)

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