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はじまりはじまり。小さな冒険?
318、プラムの行方と可愛い弟について。
しおりを挟むサロンへと向かうフレアを追って席を立とうとしたら、視界が真っ白になった。
『顔、ベタベタだよ?ちゃんと拭きなさいっ』
顔を温かいタオルでごしごしされる感覚があって、タオルを外されると、目の前に思いっきり笑ってるレオンハルト王子が見えた。
シュトレイユ王子の柔らかな金髪と違って、ストレートのはっきりとした金髪がふわりと揺れる。なかなかに良い笑顔だった。
「ありがとう?」
拭いてくれたのはルナだったらしい。
お礼を…というか、いきなり蒸しタオルをあてるとか、もう完全に子供扱いですねっ!
まぁ子供だけどさ。
飛び降りるようにして椅子から降りると、目の前にレオンハルト王子の手が差し伸ばされる。
うん、ちびっ子ながらさすが王子様!格好良いね!
「セシリア、行こう…!うぁっ…」
ぼふっと、私と同じように顔をごしごしされているレオンハルト王子……。
ルナ……レオン王子の素敵行動が台無しだよっ!
『王子もねっ!ちゃんと拭きなさい…シミになっちゃうよ?』
私の手を取ったまま、ルナに顔をごしごしされてしまってるんだけど、どうにもその様子が、パイ投げのクリームたっぷりのパイを顔面に押し付けられている様子に似ていて、思わず……。笑っちゃった。
「……笑うな」
「王子だって笑ってたもん」
「レオンだ!」
「はーい…あははっ」
タオルを外された時の顔、顔を真っ赤にして憮然とした…なんともいえない表情で。
あぁ、子供でもこんな顔するんだな。とか思ってしまったら、もう、笑いが止まらない。可愛い。
(これって、格好つけたのに、肝心なところで失敗して、格好つかなくて、それどころか失敗がめちゃくちゃ恥ずかしくて!って、なってる時の顔だよね。可愛すぎるっ!)
レオンハルト王子のあまりの可愛らしさに、悶えそうな勢いで笑ってしまった。
どうにも笑いの波が止まらなくなってしまって、その様子にレオン王子は小さくため息を吐くと、手を引き、進み出した。
「プラム、なくなるぞ?」
「そんなしゅぐには…っ!」
「しゅぐ……ぶっ!いや、すぐ、なくなる」
まさかね?と思いつつ、肩をふるふるさせて、多分笑ってるレオンハルト王子に手を引かれて、サロンへと向かう。
肝心なところで…って笑ってしまったけど、私もこのタイミングで噛むとか、酷い。しっかり笑われたし。
******
「嘘、でしょ……」
「だから言ったろう」
テーブルの前で呆然とする私と、半ば遠い目をしながら、呆れた声で反応するレオンハルト王子。
……獣人2人組の食欲をあなどってたわ。
可愛いボウル状のお皿に、軽く15個くらい積まれて運ばれていったはずなのに、すでに2個しか残っていなかった。
そして、獣人2人組の小皿には、プラムのタネの山。
「初めて食べたけど、美味しいね!コレ」
「凄く…甘かった」
さっきの様子から、ライバルはエルネストだけかと思ってたんだけど、カイルザークもしっかり食べてた。
満足げなエルネストと一緒になって目を輝かせて、すごい勢いでプラムを食べているカイルザーク。
「甘味と酸味が良い感じだね。プラム…っていうの?」
「ああ、南の地方だと今時期に取れる。カイの里にはなかったのか?」
「うーん、あったのかもしれないけど、食べる機会はなかったよ」
美味しい!と、プラムに噛り付きながら、にこりと笑う。
スモモの樹の耐寒性は結構高くて、確か前世では北海道でも庭木に植えてあるのを見たことがあるから、北の国にあったカイルザークの里周辺くらいの気候なら、あってもおかしくないんだよね。
ただ、カイルザークは幼いうちに里から追い出されているからね。
……今ではない時の3歳の記憶、ということになる。
(大人になってしまうと、不思議なことに小さい頃の記憶って、よほど印象的な事でも無ければ、食べ物や暮らしって、覚えていそうであんまり思い出せないんだよなぁ)
習慣的なものは意外と覚えてるんだけどねぇ。
とりあえず、ダッシュで最後の2個をレオンハルト王子と私の分!ということでキープさせてもらって、席についた。
カイルザークが名残惜しそうにしてたけど、私だって食べたいっ!
ついでに『食い意地!』って、セグシュ兄様が笑い転げてたけど、知らないっ。
******
ちなみに、子供達がプラムの取り合いをしている間、大人達はいつの間にやら机の上に現れた、大量の書類と戦っていた。
今回の報告書?らしい。
結構な量が積み上げられていて『大人って大変なのね』とプラムに噛り付きながら遠目に見ていると、フィリー姉様と目があってしまった。
「セシリア、こっちいらっしゃい」
「ひゃい?」
反射的に返事したら、変な声になってしまった。
ぶふぉ!と激しい吹き出しがセグシュ兄様の方から聞こえた気がするけど、知らない。
最近笑いすぎだよ?
「……食べてからで良いわよ」
ごめんなさい。齧ってる最中で、まともな返事ができませんでした。
食べ終えてから、食べ終えてから……ね。
「微妙におっとりな子なのねぇ…本当に大丈夫かしら?」
何がですか?!
不意にフィリー姉様から話しかけられて、びくりとしてしまった。
私は何を心配されてるんだろう……?
「絶対に、状況を理解してないと思うわ」
フィリー姉様の、意志の強い瞳に見据えられて、固まっているとそのまま抱き上げられて膝の上に抱え込まれてしまった。
「ん~!やっぱり、弟も可愛いけど、妹が良いわ!カイもエルも可愛いけど、いずれは、ああなるのよ?むさ苦しいったら……」
「……そこでどうして僕を指さしてるんだろうね?姉さん?」
セグシュ兄様を指さしながら、私に言い聞かすように話すフィリー姉様。
……雲行きが怪しい気がするのですけど、気のせいですよね?!
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