私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
319 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

319、姉様的可愛らしさの基準。

しおりを挟む



「そもそもねぇ、弟とか妹って言ったら、少なくとも、可愛くなくちゃダメなのよ!セグシュ、今のあなたは…可愛いかしら?」

「いや……その基準自体がおかしくない?そもそも、野郎に可愛さを求めないでよ!」


えっと、どうしよう。
フィリー姉様に、頬をむにむにされたり撫でられたり、可愛がられてるのはわかるんだけど、セグシュ兄様を罵倒しながらというのはちょっと……。
いいこいいこ!と撫でられても、全く落ち着きません!

はぁ。と、フィリー姉様のあからさまな深いため息が頭上から聞こえてくる。


「ほらねぇ…。昔はさぁ~『ねえさまっ!』って目をキラキラさせながら、私の後を追ってくるような、それこそ天使みたいに可愛らしい子だったのに。どうしてこんなに…生意気で、むさ苦しくなっちゃったのかしら」

「いくつの時の話ですか……。人は成長するんです。もう少し、現実を見て?」

「もうちょっと、良い方向に成長すれば良かったのに……」


ちっ。と、小さく舌打ちのような音まで聞こえてたりして……って、フィリー姉様っ?!

助けを期待して、ヴィンセント兄様へと視線をやると、残念ながら書類に集中していて、こちらの状況に気付いていないようだった。
他の子達は!と周囲を見渡すと……そもそも誰も席についていなかった。

レオンハルト王子はシュトレイユ王子のベッドのそばに置かれているサイドチェアに腰掛けて、じーっと様子を観察しているようだったし、エルネストとカイルザークに至っては、じゃれあいの続きが始まってしまっていた。

……ただ、今回は不思議と、エルネストの方が優勢で、ぽんぽんと掴まれては投げられてるカイルザークの姿が見れた。


(少し休憩したとはいえ魔力切れ直後だし、まだ本調子じゃないのかな?)


とりあえず、このそれぞれにカオスな状況をなんとかならないかな?
そう思いつつ、フィリー姉様とセグシュ兄様との言葉のじゃれあいに挟まれた格好で遠い目になっていると『避難所』の入り口のドアから、ノック音が響いた。






******






「母様っ!」


サロンの奥、シュトレイユ王子の眠るベッドから、ドアへと向かって駆け出すレオンハルト王子。
ドアの向こうから現れたのは、真っ青な顔の王妃と、いつものように、にこやかな母様。
母様は治療院のローブ姿だから、仕事中だね。
シュトレイユ王子や私の呪いの件での王妃の付き添いといったところかな?無事なのが確認できてホッとする。


「おかしゃま……」


声をかけようとして、思わず躊躇してしまった。

……だって、治療院の装束だったから。
仕事中だもの、邪魔しちゃダメかな…と、躊躇していると、フィリー姉様の拘束が緩んで背をポンと押された。


子供ちびが遠慮なんかしてるんじゃないわよ。セグシュ・・・・に先こされるわよ?」

「は?どうして僕?!」

「あら……どうしてかしらね?入寮前日までずーっと『母様と一緒じゃなきゃ寝れないっ!』って、泣き喚いてたのは…「ぁああああっ!もうっ!!」」


フィリー姉様に「早く行け」と背を、今度は強く押された。

……セグシュ兄様の幼い頃って…可愛かったんだろうなぁ。
頬を赤らめながら、どうにかフィリー姉様の言葉を止めようとしているセグシュ兄様の反応を見て、思わず笑ってしまうのだけど。

途中、予想外の来客にじゃれて絡まったまま動きを停止して、王妃と母様と見つめているカイルザークとエルネストの姿にも、笑ってしまった。


(カイルザークってば、本当の子供みたいなんだもの。いや、身体は子供なんだけどさ)


セシリアわたしと再会するまでは、20代の青年だった。
そのまま眠り続けて、起きたら……身体が今の姿ようじに縮んでしまっていただけで、意識や性格までは幼児退行しているはずではないのに、ね。

それなのに仕草や行動が、時折、本当の子供のように見えてしまう時がある。
身体が縮むと、心も引っ張られてしまうのかしら?不思議だよね。


母様へ近づくたびに、無意識に、早足になり、駆け足になる。

母様もわたしを受け止めるように手を広げて、腰をかがめてくれていたのだけど。
直前でレオンハルト王子が、今にも泣き崩れてしまいそうな悲しげな表情の王妃様にぎゅっと抱きしめられているのを目にして、ピタリと歩みが止まった。

……仕事中だった!
フィリー姉様が良いって言っても、セシリアわたしは母様とお約束してるもの。


「おかしゃま……今は」

「あら、今は・・仕事前よ。大丈夫。良い子ね」


ふわりと、浮かべていた笑みが一層強くなった気がした。
ゆっくりと母様に近づくと、そのまま抱き上げられてしまった。
私と同じ色味の淡い桜色にも見える銀髪がふわりふわりと視界で揺れる。


「えらいわね!いっぱい頑張ったんですって?……今も、あなたの精霊が頑張ってくれているから、王子は無事なのだと聞いたわ。ありがとう」


父様もハンスも褒めてたのよ?と、母様に間近で囁かれて、何故か視界が歪み始めてしまった。
泣いてる場合じゃないんだけどなぁ……。
母様の抱っこの安心感は最強だと思う。
多分、いや、かなり重いと思うけど、ずっと抱っこされていたいと思ってしまう。

あらあら。と、小さく笑う声が聞こえて、顔を隠すように抱え込まれてしまった。
泣きそうだったの、見えちゃったのかな?

少しだけ……そのままギュってしててもらおう……。
涙が止まるまで。
ギュってしててくれるだけで、すごく安心するんだ。






******






「我が子が少しずつ蝕まれていたなんて…」

「はいはい、それはもう何度も聞いたからね。まずはその呪いをはずしちゃいましょう?泣く前にやることがあるでしょう?」

「そう…ね」


王妃と母様がシュトレイユ王子の眠るベッドのそばで、その様子を確認しつつ会話をしていた。
学生時代から仲が良かったそうで、2人だけになると敬語も何も無しになるって、母様の寝物語でよく聞いてたけど、本当みたい。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...