私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

320、呪いの解き方と、可愛い女の子。

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ちなみにレオンハルト王子は、王妃様に抱っこされたままだった。
ちらりと王妃の肩越しに見えたレオン王子の目は真っ赤で……そりゃ泣いてたよね。
不安ばっかりだったもんね。と、母様に抱っこされてから、やたらと緩い涙腺のおかげで、私までつられて泣きそうになってしまった。


「おかしゃま…?」


不意に背を優しく撫でられる感覚が強くなって、母さまを見上げる。


「ずっと一緒にいたのにね。その舌ったらずが呪いのせいだったなんて…気づいてあげられなくてごめんなさいね。そうよね、大人の姿になったらしっかり喋れてたんですもの。あの時疑うべきだったんだわ……」


ぎゅーっと、抱きしめる力が強くなって、不思議と気持ちが落ち着いて、安心していく。

私は…そうやって気にかけてくれている人がいてくれるだけで、充分嬉しいよ。
今までは、数えるほどしかいなかったから。


(……あとね、母さま。今のは多分ね、ヴィンセント兄様の解呪の効果が薄まってきたのだと思うの)


私はどうやら、呪いで発症してしまったのが『滑舌が悪い』ってだけみたいだから、体調方面では特に心配はないみたいだし、急ぐほどでもないから、大丈夫だよ。

レオンハルト王子は呪いにかかった形跡はなかったそうだ。

私やレオンハルト王子が泣いている間に、母様が確認をしてくれてたらしい。

……私が軽症なのは、少ししか使われてなかったから。
どちらも、食事や水に呪いをかけた物を混ぜ込んでいたらしいんだけどね、セシリアわたしの場合は、育児中は『大聖女』である母様が完全に付きっきりだったこともあって、食事に細工というのが難しかったそうだ。

シュトレイユ王子の場合は……王妃が付きっきり。と、いっても公務があるからね、どうしても隙があったようで。
そもそも乳母や教育係に、悪意を持ったものが混ざり込んでいたのだから、避けようもなかったそうだ。






******






「さぁさぁ、シュトレイユ王子の呪いを、みんなで吹き飛ばしちゃいましょうね!すーぐ元気になっちゃうから、おうちにもすぐに帰れるわ!」

「すぐに……?」

「そう!すぐに、よ?……ちょっと大変かもしれないけど、みんなで助ければすぐに治るわ!」


再開の挨拶もそこそこに、ソファーへ腰掛けると紅茶を片手に、にこにこと楽しそうに説明する母様。
母様が『できる』と言い切る事は、本当にできてしまえる気がしてくるから不思議だ。


「普段なら難しいのだけどね、今日は特別よ」


唇に指をあて、強気な笑みを浮かべる。
目を奪われるほどの美貌にはっとなる。

……母さまに見惚れている場合じゃなかった。

えっと、呪い解く方法としては『毎日少しずつ治していく』が基本なのだけど、初期の呪いに関しては『身体に作用しようとする呪い以上の、強い治癒をかけて吹き飛ばしてしまえ!』という方法がしばしば使われていた。

でも、呪いを受けて長期間経ってしまった者や、呪いが馴染んでしまったものは別だ。
そもそもである、それ以上の強い治癒魔法というものが用意できない…はずだけど。


「ん?特別なのよ。条件が整ってるから、できるの」


にこにこと笑みを浮かべつつ、どういうことか説明を始める。

方法としては、思った通り、力尽くで呪いを吹き飛ばす気のようだった。
それができる理由として、光の属性持ちが多いこと、解呪に関して得意な者が集まっていること。

そして……。


「カイ、あなた光の精霊を連れてるわよね?」

「あ…はい。ただ、精霊になりたての子だから……役には立ちませんよ?」


確かに光だけれど……部屋を明るくするくらいしか、力を持たない子だったからなぁ。
『役に立つ』という意味では、むしろ守ってあげないと心配な感じの子なんだけど。


「そうは見えなかったのだけど……呼んでみてくれるかしら?」

「はい……」


母様は属性検査の結果を見たのかしら?
何かを確信したような感じで、じっとカイルザークを見つめていた。


「ライト!」


カイルザークがソファーに座ったまま、右手を前に差し出して精霊の名前を呼んだ。
いつもなら、その手のひらに光の綿毛のような丸いものライトが現れるんだ。
ぽよぽよしてて可愛いんだよ。

ただ、1000年ぶりひさしぶりの召喚だと、少し時間がかかるのか、すぐには姿を現さないみたいで、手の周辺に小さな光がふわりふわりと集まり出してきていた。
そして、急にその数が増え始めるとカイルザークの目の前に、光の粒が収縮していき、小さな子供の形になっていく。

次の瞬間には、肩まで伸ばした金の髪の可愛らしい女の子が、カイルザークの顔を至近距離で覗き込んでいた。


「えぇぇ…っと。君……だれ?」

「何それ、呼んでおいて酷くないですか?」

「えっ……」


丈の眺めのシフォンのような透ける、袖の長い羽織りものに、中はカボチャパンツのようなふんわりとした短パンをはいている、可愛らしい女の子だった。


「やだ、マスター!ちょっと見ないうちに、随分可愛らしくっ!」

「もしかして…」

「もしかも何も、ライトちゃんですよ~?忘れちゃいましたか?」

「うわぁ…」

「うわって何ですかっ!ずっと呼んでくれるのを待ってたのに!」


けたたましいというか何というか……。
とても活発な感じの精霊?精霊だよね?!
昔のライトは、本当に手のひらサイズのぷよぷよした毛玉だったんだけどなぁ。
今のライトは、ジャストでカイルザークの苦手とするタイプの女の子だった。


「……あんまり煩いと、もう、呼ばない」

「ああっ!待って待って!いっぱい勉強してきたんだから!ちゃんとお手伝いをさせてくださいっ」


完全に呆れたような遠い目になって、向かいの席に座る母様を見あげる。


「えっと……なんか育ってたみたいです」

「ふふっ。可愛らしい精霊さんね?」

『わーっ。褒められちゃった!可愛いって!可愛いっ!ねぇ、可愛い?!』


本当に嬉しいみたいで、カイルザークの隣に腰掛けると、足をパタパタと揺らし始めた。
御行儀!と思ったのだけど、精霊だからなぁ。放置でいいのかな?

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