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はじまりはじまり。小さな冒険?
323、お父さんは大変なんです。
しおりを挟む「いえ…視点が変わると、父様ってどうしようもない親バカだったのだわ。と、いう事に、今更ですが気づきまして」
呆れた様な、ジト目の様な表情になっているフィリー姉様に、父様は少し笑って、軽く首を横に振る。
少し寂しそうな笑みを浮かべると、私を撫でながら、ソファーへ腰掛けると、隣に座っていたエルネストの頭を撫でながら、喋り始めた。
「そうかい?…父親って大変なんだよ?私にとって、フィーもセシーも子供達はみんな同じくらい大切だし大好きだけど。今、セシーにするのと同じようにフィーに抱きついたらどうなるかな?」
「変態ですわ」
ふん。と、フィリー姉様が呆れた様に返す。
「だろう?同じようにヴィンセントに抱きついたら……あ、いや、うん、考えたくもないな。むさ苦しい!」
「例えに出しておいて、否定しないでください。……確かに嫌ですけど」
ヴィンセント兄様は思いっきり苦笑いになっていた。
親子であっても、子が成人してれば……まぁ喜んだ拍子でも、勢い余って抱きつく!というよりは、肩を叩き合ったりという感じになるだろうしなぁ。
「ほらね?……抱きつかれるなら、母さんのほうが良いよね?セグー?」
「ええっ?でも…まぁ、父さんよりは……はい。…って、何で僕に振るんですかっ?!」
いきなり話を振られて、何のきなしに返事をしてしまい、直後にハッとなって慌てる様に頬を赤くして怒るセグシュ兄様。
その視線の先には、すごく楽しそうに微笑むフィリー姉様……。
「まぁ……セグシュは甘えん坊ですもの。母様なら大歓迎よね」
「姉さん……」
……気づいたのだけど、セグシュ兄様ってセシリアには、良いお兄ちゃんとして頑張って接してくれているけど、なかなかに迂闊なんだよね。
素直というか……。
どうも、そういうところが可愛い反面、頼りなく映ってしまっているみたいで、フィリー姉様に弄られている感じがある。
「あら?見る立場で言うなら、あなたとセグシュ、ヴィンセントとでも、全然良いと思うわ!……貴方達なら絵になるし。うふふ」
「見てるだけなら、私も賛成しておくわ。友人たちが諸手を挙げて喜びそうな案件だし」
「「母さん……」」
母様の反応には、父様を含めた男性陣が、見事に遠い目になっていた。
まぁ『絵になる』という意味では、それぞれに見栄えはいいからねぇ。
鑑賞するには……って、やっぱそういう考えがさらりと出てくるあたり、ユージアとルーク親子の感動すべき再会シーンの暴挙に関しても、全く止める気は無かったんだろうなぁ……。
眼福。とか、目の保養だわ。とか…思ってたに違いない。
ユージア、こんな母様で、ごめんよ……。
楽しそうに笑っている母様へ視線をやりながら、父様は小さく息を吐く。
「クロウディア…話がまとまらなくなっちゃうよ。まぁいいや。とりあえずさ、こうやって思いっきり可愛がれるのも今だけだし、この子達がこうやって…ちっちゃいのだって今だけだからね!全力で可愛がる事にしてるんだ!」
そう言いながら、今度はライトに泣き付かれているカイルザークの頭をポンポンと撫でていた。
撫でる父様の大きな手を避ける様に、ぴこぴこと動くケモ耳。
カイルザークも、実際の中身…精神年齢的には成人しているわけだけど、どうなのかな?と密かに思ったわけだけど、撫でられる事が嬉しかったみたいで、うっすらと目を細めているのが見えた。
******
そうそう『様子を見にきた!』と言っていた父様は、確か反乱軍の残党……実際には自分の所属していた騎士団や、教会の暗部への囮となって城下町で鬼ごっこをしていた!とヴィンセント兄様が言っていたのだけど、服装に戦闘による衣服の乱れはなく、本当に囮なんてしてたの?というくらいに疲れている感じもなかった。
優秀だからこその魔術師団の団長なのだろうけど、それでも心配で自分の見える範囲で、怪我を隠してたりしていないかと、探してしまう。
「ん?セシー……どうした?」
「お怪我は…ないでしゅか?」
おぅ…このタイミングでまた噛んだ。
ヴィンセント兄様の解呪のおかげで、かなりはっきりと喋れる様になっていて、噛みも少なくなっているんだけどね……稀にこうやって噛んでしまう。
解呪される前よりは全然喋り易くはなったのだし、この際だから完全に噛みをなくしてしまいたいところだ。
「セシーの父様は強いからね。これくらいじゃ怪我なんかしないよ」
私の頭を撫でながら、口角をはっきりと上げるように爽快に笑う。
そんな様子に思わず見惚れそうになって……なんとか踏みとどまる。
(自分の父親に毎度見惚れてたら、心が落ち着く暇がないじゃない……)
父様は、兄様たちと違って相当鍛えてるのだろうね、一見するとスリムなのだけど、兄様たちと並ぶと明らかに筋肉の量が違う。
逞ましい!というほどでもないのだけど、部分部分で身体のパーツが綺麗に引き締まっている。
あれですよ、胸板の厚さ!正面から見たら他とそんなに変わらないけど、横から見たら全然違うってやつ!
兄様たちは年齢的なものもあって、どちらかというと線の細いタイプに見えるから余計だね。
「……無理はしないでください」
「セシーがくれた鈴のお守りのおかげでね、今まで以上に動き易くなってるから、大丈夫だよ。ありがとう」
「だから、まだまだいっぱい頑張れる」
そう言って、満足そうに笑う父様。
……本当は、魔物から身を守るために渡したんだ。
無事でいて欲しいから。
対人のためじゃ無い。
朝までは大切な同僚や仲間だった人たちと争わせるためではなかったのに。
どちらにしろ、父様の身を守ってくれてるのはありがたい事だし、作ったシシリーとしても作者冥利に尽きる話ではあるのだけど、少し悲しくなった。
「……大丈夫だよ。もう終わったから。実動部隊の仕事は終わったんだ。あとは事務方が頑張ってくれている。……で、ハンスのところへ報告に行ったら、あの精霊を押し付けられたんだよ」
あの精霊。と、言いながらライトを見つめる。
カイルザークにしがみついて号泣していた、小さな女の子の姿をした光の精霊。
少しは落ち着いてきたのか、激しい泣き声はおさまってきているようだった。
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