私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

324、犯人は私、なわけがない。

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「で、ライト?……何で、犯人を探しに行って、ルークにまとわりついてるのさ…」


カイルザークにしがみついて泣いていたライトが、少し落ち着きを取り戻してきたところで、カイルザークからの質問が始まる。


『だって……臭いが確かにあるのに、ぜんっぜん追えなくて、うっすらとわかったのがルーク様で……しかも、ここのお部屋!出たら戻って来れなくなっちゃって~!!』


その時の心細さを思い出してしまったのか、再び瞳からぽろぽろと涙がこぼれ始める。


「あ…そうか、入室権限……」

『そういうことは、先に言ってくださいよ~っ!』

「いや、ちゃんと聞いてくださいよ?」


何も聞かずにいなくなっちゃったでしょ?と、ライトの背をぽんぽんと叩きながらなだめるように話している。
その姿がどうにも、フィリー姉様が言ったように、妹の癇癪を落ち着かせようとしているお兄ちゃんにしか見えなくて、和んでしまった。


『ん?あれ?……うーん、でもおかしいんですよね。マスターとセシリア様から…あの子と同じ呪いが『一番強く』臭ってるんですけど!』

「そうなの?セシリアは呪われてるらしいから…その臭いじゃないの?」

『違います~!セシリア様のは薬草臭いんだもんっ!ほとんど消えかかってるし!…そうじゃない臭いが、泥はねみたいにペタペタと、お二人にこびり付いてるんですよ~!』


必死に伝えるように、顔を真っ赤にして訴えるライト。
若い精霊にしては、かなり表情豊かで可愛らしい。
そんなライトと背格好の近いカイルザークが、腕を組みながらムムッ!とか唸ってる様が、どうにも一丁前なやりとり過ぎて、可愛らしくてしょうがない。

そう思ってしまったのは私だけではなかったようで、母様もフィリー姉様も、心なしか和かにカイルザークを見守っているような雰囲気になっていた。


「臭いっていうと、ルークの部屋か『監獄』しか思い当たらないんだけど…って、ルークの部屋の方が強烈だったような」

『……どっちが瘴気ありましたか?その臭さですよ?』


ルークの部屋。と、言っただけで顔を顰めるカイルザークに思わず同情しかけたけど…いや、本当に臭かったから!それを人族よりも遥かに高性能な嗅覚で嗅いでしまった日には……ね。

ただ、ライトの言う『臭い』ではなかったようで、ジト目で見つめられていた。


「それなら『監獄』だけど……あそこには、生きてる人間はいなかったよ?」

『って事は……えぇぇ…どういうこと~?!ライトちゃんに捜索させておいて、まさかのマスターとセシリア様が犯人だったりしちゃうんですかぁ?!』


突然の犯人扱いにびっくりしていると、視界が軽く揺れた。
見上げると、手で口を隠すようにして、ふるふると肩を震わせながら笑ってる父様……だけじゃなくて、みんな笑っているように見える。

笑いを我慢しきれなくなったのか、レオンハルト王子がぶふぉ!と大きく吹き出したところで、カイルザークは大きなため息を吐くと、一気にライトに畳み掛ける。


「しません!……あのねぇ、あの子レイは王子様なの!滅多に会えない相手で、政治的に!とか、大人の都合で!とかで呪うならわかるけど、こうやって寝てる姿を見れる距離にいるのに、僕が呪う必要ある?」

『だって~!一番臭いが強いってことは、一番の関係者って事じゃないですかぁ~』


間違ってないはず!と、言い張りながら顔を赤くして、ライトはまた涙ぐみ始めてしまったところで、フレアに抱え上げられると、カイルザークの隣に座らされる。
そういえば立ったままだったね。
目の前に、焼き菓子の小皿を置かれると、涙を溜めたままの瞳がキラキラと輝きだす。

その隣で眉間を指で押してグリグリとしているカイルザークがいるわけだけど、切り替えたのか全く気にせずに、満面の笑みを浮かべると、お菓子を食べ始めてしまった。


「関係者、ね……」

「この臭いが犯人の臭いなら、つまりは……犯人が『監獄』にいるってことかな」


父様の問いに、クッキーを頬張りながら、こくこくと頷くライト。
頬張りすぎててハムスターみたいになってる。


「それってまずいんじゃない?」


だって、あそこには死者しかいなかったもの。
魔物化した死者しかいなかった。
生きている人間の反応がなかったって……。


「ねぇライト、犯人が死んでても『ごめんなさい』ってできる?」

『できません!』

「ええっ…じゃあ」

『そうじゃないの、犯人が死んでたら、呪いは消えてるの!』


もしかして、解呪不可能?!と言いかけて、ライトから訂正をもらった。
逆に言えば呪いが有効なのは、犯人が生きているから。


「でも、『監獄あそこ』には、生きてる人間はいなかったよ?」

『でもでもでもっ!……あの子、呪われたままじゃないですか~っ!何で呪いが解けてないんですか~?』


ライト自身が説明してるのにうまく伝わっていないむず痒さを感じて、また泣きそうになっているのだけど、どうにも『犯人が生きている』と言う説は信じ難くて何度も聞いてしまった。


「ねぇ、何で犯人が死んだら、呪いが解けるの?」


今まで黙りこくっていたエルネストが不思議そうに聞いてきた。
その隣ではレオンハルト王子もうんうんうと、なずく仕草をしている。


『それはですねぇ。呪いに使う魂たちに「お前を苦しめたのはあいつだ!」って呪う相手を魔法で騙して教え込むんですよ。だから、恨み辛みで呪われるんです。なので呪われた相手が死ぬか、そうでもないなら術者が死ぬまでは、魂たちは恨みを発しながら彷徨い続けるの。術者が死ねば、騙していた魔法が解けるから、本来恨む相手のところに行くでしょう?』

「本来の相手とは……つまり術者か」

『そうです~。なので生贄部分の呪いは解けちゃうんです。でも、あの子の呪いは健在だから~。術者は生きてますよ?』

「生きてるって……何度も言うけど、あの『監獄』に生きてる反応は無かったよ……?」


これは……堂々巡りになるなぁ。と、でも、実際に生きている反応はなかったみたいだし、それでも臭いの発生源が『監獄』であるのなら、生きている人がいたのかもしれない。
どっちなんだろう?

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