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はじまりはじまり。小さな冒険?
325、禁呪に禁忌に龍に竜で、どうしよう。
しおりを挟む「……それでも、その精霊の言う通り、生きて、いるんだろうな。『仮初の命』あたりで」
生きてる!生きてない!の堂々巡りになりつつあったところで、父様がポツリと『他にも方法があるぞ』と独り言のように囁いた。
その言葉を聞いた途端に、ヴィンセント兄様が汚いものでも見てしまったかのように、顔を顰めている。
セグシュ兄様とフィリー姉様はきょとんとして父様を注視していたので、多分、知らないのだろう。
ヴィンセント兄様は、治療院の仕事関係で知っていたのだろうか?
母様に至っては、にこやかな笑顔を崩さずに、しかし小さく一つうなずいていたので、ヴィンセント兄様同様『仮初の命』に関しての知識があるようだった。
「仮初の命、ですか?」
レオンハルト王子が真剣な面持ちで、父様を見つめていた。
シュトレイユ王子を助ける手段の話で出てきているものだから、一つの単語も聞き逃さないようにと、見ていて痛々しくなるほどに真剣に。
「そうだ。これも禁呪で禁忌となっている術式の一つだが……」
「禁忌を使った時点で、生身の身体を捨てているのだから、それはもう、人ではないのですけどね。禁忌の呪法で術者の意識は遺されるから『生きている』と誤認されることになるのよ」
紅茶を片手に、さらりと説明する母様。
禁忌や禁呪と言われている魔法に関しては、その時代ごとに解釈も利用法も変わるからシシリーの知識で通用するか怪しいところだったのだけど。
(でも、基本的に『倫理的にどうなんだ?』と思うことが、禁呪にされているのは、いつの時代も変わらないからさ、つまりはそういう事なんだろうね)
……人の命や人体を材料に使った魔法を禁呪としている。
それは、シシリーの死因のようなことも、シシリー自身には何の利も無いが、それでも魔法であれば禁呪だ。
あの時は、とにかくその場にいたカイルザークや、子供を助けたいと必死で、精霊に『自身を捧げてしまった』というのが実際だから、グレーな感じで禁呪ではなかったのだけど。
(って、父様はさっきからずっと、私の目の前にひたすらお菓子を持ってくるのだけど、さすがに食べきれないからね?!)
それでも、勧められると思わず受け取ってしまうので…カジカジと小さく端を齧りながら説明を待ってみる。
「……まぁ、簡単に言えば、そうだなぁ……うーん…うん」
「ヴィンセント兄様、説明しようとして失敗しないでくださる?」
「小さい子に説明するのって、思ったより難しいんだよ!」
ジト目になりつつフィリー姉様がため息を吐くと、手にはめられている指輪を子供たちに見えるように腕をあげると、口を開く。
「そうねぇ…ここに指輪があるわね?禁忌の呪法で私の魂を…この指輪に封じ込めるの。そうすると、私の身体が死んでしまっても、この指輪として、私の意識は生き続けるわ……でもそれって、人なのかしら?そういう感じの禁呪よ」
あぁ……と、思わず唸りそうになった。
これは『隷属の首輪』の魔法も併用すると、ある意味、不老不死になれるものが作れる。
装着した者の意識を操ったり、乗っ取ったりするのが『隷属の首輪』だ。
その司令塔が主人となる人ではなくて、首輪本体の中に主人となる人格が存在する。
シシリーが、そんな魔道具を見たことがある。
俗にいう『呪われたアイテム』とか言われたりするわけですが。
今世も稀に、古代の魔道具として、出土することがあるのだそうだ。
確かにそれなら、ゾンビあたりが『仮初の命』を装着していたら……死んでるけど、生きてる状況になるのかな?
「と、なると……早急に『監獄』への再入場が必要になるんだが」
父様や兄様たちが、ちらりとシュトレイユ王子の眠っているベッドへと視線をやる。
ひたすら眠り続けているシュトレイユ王子。そばには心配そうに見つめ続けるソフィア王妃。
普通の呪い部分の効力を何とか抑えてあの状況だから、戦力が足りないから後日、と先延ばしにして良いような状況ではないのは明白だった。
ただ、問題もあって……。
「魔物化していたのが、高ランク変異してるんだろう?それは私たちで倒せるのかい?」
そう、どう考えても倒せそうにない魔物に見えた。
(できれば闇の妖精たちが『宝』と呼んで、縁のあった者たちから今も大切にされている存在を、本来眠る場所へと返してあげたいのに、出来そうにない)
早く早く!そういう気持ちは強くあるのに。
あの時のメンバーは子供だけだった。
それを理由にしたとしても、ここにいる大人たちを総動員したところで、無理なものは無理だと思う。
そう確信できてしまうのが辛い。
今は一部、先に返すことができた宝たちを、妖精たちが大事にそれぞれの場所へと移動させている所だからと、こちらの手伝いに来てくれているヘルハウンド…今は黒い子犬の姿だけど。彼にもこのまま放置になってしまうようでは、申し訳ない。
「あれは…無理かな。ルナが簡単にのみ込まれそうになってたくらいだから。あ、ライトは特に無理だからね」
『~~~~っ!!』
肩を竦めながら、カイルザークにさらりと否定されたライトは、地団駄でも踏むように悔しそうにソファーで足を強くパタパタと振っていた。
「父様……大型の地の竜のような形態をしていました。室内なので逃げ場もないし、人間では、厳しいと思います」
「……竜か、竜ね…。こっちにも龍、いるだろ。頼んでみるか」
そういやメアリローサには、守護龍がいるんだもの、頼める…のかな?
シシリーの守護龍も……まぁ、メアリローサの守護龍ではなくて、かつての中央公国の守護龍だけど。
大掛かりな魔物討伐の際には、必ず同行していたと聞いたことがあった。
ただ、交戦的ではない龍だったようで、率先して戦うということはなかったらしいけど。
それでも国を護るために同行してくれていたんだ。
「怪獣大決戦…!」
「セシー……怪獣じゃ無いからね。ふふっ」
おっと…思っていたことが口から出ていたようだ。
龍と竜の戦いだもの。激しいんだろうなと、思わず口から出てしまった言葉。
父様にしっかり聞かれて、笑われてしまった。
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